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彼女と別れた理由が未熟だったので

この胃もたれは、夜ごはんにパフェを食べたからだけではないようだった。金曜の終業後、一緒にパフェを食べた帰り道。そっと明日に向かって彼女に話しかけた。

「今夜、泊まりに行ってもいい?」少し間が空いて、「ごめん、明日の朝は楽器の練習がしたくて...」かすかに聞こえた声は少し奥歯に何か詰まったような、ぎこちなさを含んでいた。少しうつむいた彼女の横顔は髪に隠れて、見えない。

澄み渡った東京タワーの下で、僕は「好きを大切にする彼女」に惚れ、告白をした。周りに流されず、大切にしたものをそっと抱えて、真剣に向きあう姿は凛々しく、そしてかっこよかった。

そして、彼氏になった時は、彼女を取り巻く生活や彼女の好きを大切にしたいと思った。だけれども、一矢報いた思いは届かなかった。好きの気持ちが追いついていないとのことだった。

告白には2つの種類がある。1つは答え合わせ。もう1つは友達フォルダ行きを避ける苦肉の策だ。僕は高嶺の花だった彼女に対して、告白をすることで好意を伝える後者を取った。

その後の2か月間、今まで通りにご飯や水族館に出かけた。ある日、急に電話が掛かってきて待たせてごめんなさい。その言葉をきっかけに僕らは付き合うことになった。粉雪が舞い散る中で僕の気持ちも舞い上がっていた。12月だった。

こうして、ある意味で神格化してしまっていた彼女が所謂”彼女”になった時。嫌われることを恐れる自分がいた。気が付くと意見を殺して、彼女に合わせるようになっていた。

しかし、僕はわがままを理性でコントールできるほど大人じゃなかった。欲が時々顔を出して、泊まりたいなんて言ってしまう。

次にごめんねと電話越しに聞いたとき。悲しみより先に来たのは、そりゃそうだよな。だった。逆にこんな短い期間だけど付き合ってくれてありがとう。ほんとにそれだけだった。

路面に張り付いた桜道を辿りながら東京タワーの下についたとき。まばゆい光の中で告白をした自分を思い出した。

東京の煌びやかな街で、青春を取り戻そうとするばかりで彼女と向き合えていなかった。肩が徐々に濡れてくるのを感じながら、たる濃ゆいオレンジを改めて見つめる。

たぶん、ここに来るたびに未熟さを思い出して悔しくなるのだろうと。

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