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「もったいない離職」を防ぐ方法

ベテラン社員が強引に古いやり方を押し付けた。そしたら、失望した若手社員が次々に辞めていった。
 先日、とある会社に聞いた話です。ただこの会社、その後すぐにデジタル技術を導入して仕事のやり方が変わったのと、業績もいいんです。もしかしたらこういうのを、「もったいない離職」っていうのかな。


「新人・若手の早期離職に関する実態調査」結果(2023/11/8)

 2023年11月8日、リクルートマネジメントソリューションズ「新人・若手の早期離職に関する実態調査」結果が発表されました。要約すると、こんな感じ。

  • 過去3年以内に自己都合で退職した割合、17.5%

  • 退職理由は「労働環境・条件がよくない」、25%で最多

  • 辞めてないけど辞めたいと思ったことがある、60%

  • その理由は「やりがいを感じない」、27%で最多

続けての質問では...

  • 1年目の壁は「仕事に正解がない」、27%で最多

  • 大事なのは「なぜ大事なのか分かるように伝えてくれる人」、40%で最多

早期離職問題の根本原因は?

 調査結果では、早期離職は「特定の条件を整えれば改善するような問題ではなく、社会の大きな変化やその中で醸成された、個人の仕事観や人生観と密接に関係してくる問題」だとしています。これはこれで納得できる分析ですが、私なりに少し分解してみました。

  • 若手)昔と違い、いまは縮む経済。「とりあえずやってみろ!」と言われ、がむしゃらに働けば結果がついてくる時代じゃなくなった(仕事に正解がない)この仕事をする意味を知りたい。なぜ?に納得したい。

  • おじ・おば)OK、わかったよ。この仕事の意味はね...とようやくハッと気付く。そんなに相手に響かない(なぜ大事なのか分かるように伝えられない)ことに。だって私たちが「こういうもんだ」と思って仕事してきたんだから。

  • 若手)今の会社が未来永劫あるとは限らない。明日なくなることだってあり得る(仕事に正解がない)。会社が守ってくれないなら、早く一人前になりたい。仕事以外のことも大事にしたい。

  • おじ・おば)OK、気持ちは分かる。ただ、プライベートを犠牲にしろとは言わないが、仕事の勉強だって必要だし、下積みだって大事だ。その意味はね...とようやくハッと気づく。そんなに相手に響かない(なぜ大事なのか分かるように伝えられない)ことに。

案外、このループなのではないかなと思ったりする。最悪、相手に響かないことに気づいていなかったりもするわけで...
 つまり、仕事に正解がないのに、この仕事、なぜ?に応えてくれる人がいないってことなんじゃないかなと。少し飛躍するけど、それが間接的に労働環境・条件にも関わってくるし、直接的には、やりがいにも関わってくる。

もったいない離職とは?

 でも、必要な仕事なら、どんな仕事にも理由はあるはずで。もし理由を説明しづらいなら、不要な仕事だったり、改善できたり。若手の意見が参考になったりすることも、あるのかもしれないな。
 こうしたことから、調査では、今の職場にいる意味が見つかる可能性があるにもかかわらず、早期に見切りをつけた離職「もったいない離職」と呼んでいます。

もったいない離職を防ぐ方法

 調査では、もったいない離職を防ぐ方法として、2点挙げています。本人に向けては、こうあります。

  • ものの見方が広がる経験と成長・貢献実感が得られる経験を促し、やりたいこと(WILL)とできること(CAN)を生むサイクルを回す後押しをすること。

私なりに分解すると、なぜ?で悩んでいる部下・後輩がいるとしたら、まずMUST(自分が人生でなすべきこと)を、改めて考えてもらう。仕事のなぜ?に応える前に、ところであなたのなぜ?を聴く。
 そうすれば、WILL(やりたいこと)とCAN(できること)はきっと自分で考えられる。WILL・CAN・MUST(譲れないもの、キャリア・アンカー)が定まれば、もし仮に辞めていくとしても、それがお互いに「もったいない」のかどうか、分かる。

企業に向けては、こうあります。

  • 組織目的とメンバーの意思を接続していくような「職場でのコミュニケーション」、組織ぐるみの育成や手あげ式の異動制度のような「制度・仕組み」など、多様な価値観に対応していける柔軟な施策を複合的に。

これも私なりに分解すると、3年目までの方々が、会社の理念やビジョン、将来性を正しく判断できている可能性は低い。つまり、失望するとしたら、先輩・上司に対して、その仕事のやり方に対して、だと思うんです。ただね。その失望は、会社の根本に関わっている可能性もある。若者の勘もきっと捨てたもんじゃない。
 もしそうだとしたら、まず先輩や上司に、組織目的を自分なりに咀嚼してもらう(組織目的とメンバーの意思を接続する)。例えば、企業理念の意味、理解できてますか?新入社員に分かるように、自分の言葉で説明できますか?(つまり、あなたが腹落ちしてますか?)。まずはそこから。
そのうえで、制度や仕組みは透明性・公平性・納得性があるようなものにしていく(組織ぐるみや手あげ式)。

まとめ

調査では、若手が大事だと思ってる1位は「なぜ大事なのか分かるように伝えてくれる人」(40%)。大事だと思ってるって書いたけど、正しくは「どんな人だと、耳が痛い指摘やフィードバックを受け止められるか?」の答えなんです(意訳し過ぎか笑)。
 その2位は「言うことを本人が実践し、説得力がある人」(34%)先輩、いいことばっか言うけど、やってること違うじゃん。この「先輩」は、課長に、部長に、社長に置き換えられる。
 そういう事がない組織。言ってることとやってることが違わない、先輩・上司、そして会社。言ってることの中身に、やってることの一貫性に共感する人たちが残っていく、集まってくる会社。稲盛和夫さんとかが目指した会社ってそういう会社なんじゃないかな。
そんなことを想って、スマホを閉じました(おしまい)。


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