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これからの日本の働き方 雇用形態を想う

 今週の日経は、若手の仕事観を深掘りするオンパレードだった。その名も「会社と社員 変わる力学」、上中下の3回シリーズ。これはもう「日本経済新聞社という会社も、実は困ってるんじゃないか?」と思うくらいの切実な伝えようである(笑)。
 せっかくここまで取り上げてくれたんだから、私もまじめに向き合ってみようかな、そんな想いで深読みしたのが、今回の内容です。


会社と社員 変わる力学(上) 若手、新興への転職18倍(12/5)

  • 転職をスキルの習得できない職場からの「脱出」と位置付け、成長にもタイムパフォーマンス(時間効率)を追求する。

  • タイパの象徴が大企業から新興企業への転職だ(5年前の18倍)。

 知り合いの社長が言ってたなぁ。「スキル習得の機会=部署異動をどういうタイミングですべきか悩ましい」って。2,3年で営業スキルを身に着けた新入社員に、いよいよ本格的に稼いでもらおうってタイミングで部署異動させるって、それは会社にとってはあんまりメリットないんだよね...
 でも、「今の新人は2年も待たない」って、某金融機関の支店長も言ってた。会社が考えあぐねている間に、若手は辞めていくのか...

  • 企業は職場環境の改善で引き留めようとするが響かない

  • 職場のホワイト化と成長への期待が反比例している

 これに加えて、やれパワハラだ、モラハラだ、360度評価だ、毎週アンケートだ... どこの上司も針のムシロで、かつてのような指導(≒シゴキ)も難しい。

  • KDDIは20年から仕事の内容で待遇を決める「ジョブ型雇用」を導入した。

  • 入社から管理職になるまでの時間を最短8年から2年に縮めた。

  • 努力が評価に反映されるまでの時間が短くなって成長への意欲が高まった。

 ここで登場したジョブ型。記事はこう締めくくる。
多様な働き⼿に向き合った上で処遇や育成の横並びから脱し、社員の成⻑を⽀援できない企業は存続すらおぼつかなくなる。

変わる力学(上)を読んでの、私の感想

 ああそうか。あえて試行錯誤なニュアンスを伝えてきたのは、ジョブ型雇用に「切り替えた」のではなくて「導入した」ことに着目して欲しいのか。
これを読んでの私の感想は、変わる力学(上)は「アメリカ型=ジョブ型に完全に切り替えることがよいことなのか?」の日経新聞なりの問題提起なんじゃないかなってことだ。

会社と社員  変わる力学(中) 設備も人にも投資(12/6)

  • 人材を資産と見なし、投資をしてリターンを生み出す。

  • だが、日本は投資に及び腰だった。日本の投資額は10年代にGDP比0.34%と欧米の3分の1

 記事には人的投資対GDP比のグラフも。確かに、イギリス、フランス、ドイツ、そしてアメリカに比べても日本の人的投資は低くみえる。ただ、このグラフでは、OJTに掛かる時間や費用は比較できないはず。なぜなら、(聞いた話では)例えばアメリカでは、OJTなんかしないらしいから。なぜならそれは、ジョブ型だから。その仕事に見合った能力がある人を雇うわけだから、OJTなんかいらない理屈だ。
 OJTのコストを人的投資と考えれば、もっと日本の順位は上がってもいいと思う(日本の労働生産性が低いってのは社内でOJTするからなんじゃなかろうか)。

  • 装置を導入しても使いこなす人材がいなければ意味がない。人への投資が設備投資を補完する。

記事にはこうあるけれど、これってまるっきりOJTのことじゃなかろうか。射出成型機でプラスチックのプツプツが出ないように成型するには、机上の空論ではなく現場での勘所が必要なように。
記事はこう結ぶ。

  • 投資家も人への投資の巧拙が、経営の成否を握ると見ている。

  • 問われているのは、「日本の会社組織のありようそのもの」だ。

変わる力学(中)を読んでの、私の感想

確かに、上場企業には人的資本情報の開示が義務化され、改めて人的投資が注目されている。ただ、ここでの私の感想を一言で表せば「じゃあ、人的投資ってところでなんなの?」だ。それって研修とか、今風に言えばリスキリングとかなの?私たちがずっと実践してきた職場での学び=OJTって、大事なんじゃないの?ってことだ。

会社と社員 変わる力学(下)若手育成、指導役は元社員(12/7)

  • 嫌で辞めたわけではない。古巣の若手と付き合うのは刺激になる。指導した若手といつか協業したい。

「退職者に若手の指導を依頼するのは珍しい」とは言うものの、「退職した元社員との交流組織を立ち上げる企業は増えた」とも。社内のことも理解していて、社外の経験もある。セカンドオピニオンも踏まえた指導は、納得感があるのかもしれない。

  • これからの社員に『就社』意識はない。自立する社員を応援し、退職後も関わり続ける環境づくりが自社の利益になる。

  • 「社員」の範囲が急速に広がっている。優秀な社員を育てて自社だけで囲い込むやり方から、他社との「人材シェア」への転換だ。

ここで着目したいのは「社内で人材を育てることに、異議を唱えてはいない」ことだと思う。ジョブ型だ、キャリア自律だと言って、キャリアの全てを個人が負うアメリカ型のジョブ型ではない、そんな匂いを感じさせる。
他社との「人材シェア」って、どこまでお人よしなの?とも思うが、シェアの精神が広がれば、自社の利益にも繋がる。

  • キリンホールディングスや三菱ケミカルグループ、日本郵政、小田急電鉄など12社は23年、副業人材を相互に受け入れた。

  • 自社内で不足する専門知識などを補い合う。

変わる力学(下)を読んでの、私の結論

記事はこう締めくくる。

  • 日本は少子高齢化による人手不足と並行し、会社と社員の力学も変化する大変革期を迎えた。

  • 社員が旧来の組織のくびきを脱しつつある。

このとおりだと思う。会社側が、数多いる人の中から、社風に合った人材を選べる贅沢な時代はもう来ないと思う。人が、共感できる会社を選ぶ。ただ、結びの一言も大事にしたい。

  • あらゆる働き手がスキルを磨いてプロ人材を目指す社会になる。

  • 多様な人材に活躍の場を提供し続けられる企業だけが生き残れる。

「あらゆる働き手がスキルを磨いてプロ人材を目指す」とは、あらゆる人がフリーランスマインド(≒自分のキャリアは自分で考える)を持つ、ということと理解する。一方で、「多様な人材に活躍の場を提供し続けられる企業」とは、場合によっては(兼業・副業という手段で)他社とシェアし社員を大事に育て合う、そういうことだと理解する。
 今回の3回シリーズを通じて、従来のメンバーシップ型でも、完全なジョブ型でもない、日本らしい働き方、雇用形態が、なんとなく見えてきた気がする。そんなことを想って、スマホを閉じました(おしまい)。

#日経COMEMO #NIKKEI

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