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卸売業の強み。それは信頼と仕組み(日経MJを読んで想うこと)

なるほど家電でメーカーの印象が強いアイリスオーヤマ。彼らは、作り手が卸売業者を中抜きして小売店に売るメーカーベンダーで成長してきた。いまはホームセンター・ダイシンなど小売店舗を持ち、お客様のニーズを把握してなるほど家電を創り、そして売る。そこに卸売業は必要ない。

Amazon、楽天、メルカリに自社サイト。生産者が消費者と直接つながり、消費者と消費者がつながる時代。そこには卸売という概念すらない。
それじゃあ、卸売業は座して死を待つしかないのかと言えば、いやいやまだまだ戦える、むしろ成長できる。今日は、そんな記事。

DIY通販の大都、PBつくらず「最適」価格(2024/2/2日経MJ)

  • DIY用品のネット通販の大都(大阪市)はPB(プライベートブランド)商品をつくらない。(以下、箇条書きは原文ママです)

普通はPBで利益を出していくのに、あえての逆張り。そこを深掘りすると...

  • 僕らはメーカーの在庫を使わせてもらってビジネスをしている

  • むしろNB(ナショナルブランド)をちゃんと売った方が手厚く取引してくれる

そこにあるのは信頼。着目すべきは、PBをつくらないことじゃない、自社の強みであるメーカーとの信頼を大事にすることだった。

信頼を生かすとは。

じゃあ、その信頼をどう生かすのか。それは...

  • 企業間取引向けの「トラノテ」は会員制

  • メーカーと仮想在庫をつくることでコストを下げる

  • 在庫を持たないので物流センターも不要

  • 競合よりも安く売れますし納期も早い。

これだ。トラノテには1万5千社の登録があると言う。創業1937年、90年の金物屋さんの歴史は伊達じゃない。1万5千社の取引先なんて、想像を絶する。専門用語を使えば、この商売は経路依存性がある(歴史的な積み重ねがあって模倣できない)と言える。

それじゃあ、仕組みって?

  • 大事なのは効率的な仕組みです。

  • この業界、メーカーは消費者との接点はかなり限られています。

  • 自社商品がいつどこで何が売れているのか、情報を提供しています。

  • 「トラノテ」のユーザーレビューはメーカーが知りたい、商品を使った感想を書いてもらい、フィードバックしています

「襖(ふすま)紙は地域により張り替える時期が違う」「トタン屋根用の塗料が売れる時期も同様」。こういうお客様の情報が、大手はデータとして蓄積できているかもしれないが、中小は社長の頭の中にしかない。それが、確かなデータとして提供される。
メーカー⇒卸⇒小売店⇒消費者の流れの中で、使い手の情報が欲しいメーカー、目の前のお客様対応に忙殺される小売店、その間をつなぐ卸に求められるのは全体を俯瞰したトータルコーディネートにある。

信頼と仕組みの先にあるもの。

  • 2013年度の売上高は20億円で社員数は25人でしたが、23年度は75億円で27人です

...一言で言えば、エグい。10年で売上は3倍以上、にも関わらず従業員数は変わらない。従業員の給料を3倍にしたって、十分お釣りがくる。信頼を基礎にして仕組みを作ってしまえば、こうなる。
一方で...

  • 店がないのは今は強みですが、今後は弱みになるかもしれません。

  • クリスマス前のヨドバシカメラの受取カウンターはすごい行列です。この日に確実に手に入れたいという需要はあります。

  • 顧客に取りに来てもらう「クリック&コレクト」とし、倉庫に来れば安くするとか。

OMO(Online Merges with Offline)。AmazonのレジなしコンビニAmazon Goに象徴されるように、OnlineとOfflineの融合が進む。OMOって言われてもなんのこっちゃだけど、こう(↑)整理すればイメージが湧く。

長年培った「信頼」をベースにした「仕組み」を創ることができれば、卸売業はまだまだ成長できる。なんのこっちゃのOMOも、ちゃんと考えれば中小企業のビジネスチャンスになる。そう想って、スマホを閉じました。おしまい。


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