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とてつもないお釣りが返ってくる映画 【書くンジャーズが勧めるオススメ映画】

この原稿を書いている最中に祖母の訃報が入った。
享年92歳の大往生だ。
このオススメ映画の中にも、大往生の老人を看取る場面が出てくる。
祖母の思い出を頭の中でぐるぐる回しながら、この原稿をまとめる。

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僕はかつて映像関係の仕事をしていた。そして映像系のオタクだ。それを知った人からよく「オススメの映画はありますか?」と聞かれる。
その人に映画にどんなことを求めているか聞いてみる。ほとんどの人の場合、映画を見る目的がはっきりしていない。
それでもこの映画がオススメです、と言ってみる。しかし、ほとんど観てくれたためしはない。
聞いておいて観なかった人を責めるつもりはない。
なぜなら映画を観るのはとてもハードルが高いから。僕も人に勧められた映画を観ることはまれだから。

現代人は忙しい。忙しい人生の中の2時間を削って映画を観る時間にかけるのは凄いギャンブルなのだ。
映画を観るのにいくばくかのお金を払う。お金に関しては映画を観る金額はネット配信の発達でどんどん下がっている。
それはいい。でもその上で2時間という時間まで支払わなくてはならない。お金よりも2時間のほうが貴重なのだ。
その貴重な2時間の支払いに見合った映画をどう選ぶか、悩ましいところ。
だから人は、映画に詳しそうな人に「オススメ映画」を聞くのだろう。

2時間のハードルが高いと書いておきながら、僕がこれから勧める映画は3時間の大作だ。
少し前にサントリー黒烏龍茶がこの映画のパロディーCMをやっていた。あのCMの再現度はすごかった!
その映画とは黒澤明の『赤ひげ』。
この映画はレンタル代と3時間の時間を支払っても、とてつもなく豊かなお釣りが返ってくる。

・赤ひげは人間関係の基本を教えてくれる。
・赤ひげは現代が過去よりも進化していることを教えてくれる。
・赤ひげは映像に酔わせてくれる。
・赤ひげはスカッとさせてくれる。
・赤ひげは人を成長させてくれる。

赤ひげには様々な人間関係が描かれている。師弟、同僚、友達、恋愛、婚約、夫婦、親子…
映画の中盤、児童虐待を受けている少女が出てくる。現代の社会問題の一つである児童虐待。
心身にひどい傷を負ったその子に、どのように関わるか。この映画ではそれに対して明快な回答の一つが描かれている。

赤ひげ診療所には貧困層が駆け込む。
病気や怪我で働けなくなった人が生きられるのは、この世界では赤ひげ診療所しかないからだ。
そこに描かれる底辺の人々の環境は本当にひどい。
現代はあまり良くない時代とよく言われるけれど、それを真に受けているとガーンと頭を殴られた感じがする。
現代は赤ひげの時代に比べればはるかに進化して、人々の暮らしははるかに良くなっているのだ。

赤ひげは黒澤明の映画だ。映像にこだわり抜く黒澤明監督。全てのカットが計算し尽くされた美しいカットだ。
至高の映像に酔える黒澤映画。
映画を見ているはずなのに、美術館に並んだ巨匠の絵画を順番に見続けているような感覚にもなってくる。

赤ひげはエンターテイメントだ。
この映画の中で一箇所だけ、アクションシーンがある。暴力と暴力のぶつかり合い。
これが心の底からスカッとする。
なぜなら、アクションシーンいたるまでの主人公の行動を見ているから。
暴力に頼らずに弱き人を救おうとする志を知っているから。
そんな志を持つ人が、唯一暴力に対して暴力で立ち向かい、そして勝つ場面だから。

赤ひげを見終わると、自分が一回り大きくなっている。
たくさんの人の悩み苦しみ喜びに共感し、それを救おうとする主人公たちの志と行動に憧れた自分。
まるではるか遠くまで旅をして戻ってきた来たような感覚。
人生を何周もしたような感覚。
それが黒澤明の『赤ひげ』3時間の旅だ。

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さあ、赤ひげ、amazonプライムなら400円、youtubeムービーなら300円。GEOにレンタルに行けばたったの100円だ。
3時間の支払いに対するお釣りはあまりあることを保証する。

サントリー黒烏龍茶CM
赤ひげ予告編


「書くンジャーズ』

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