北欧語書籍翻訳者の会

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北欧語書籍翻訳者の会のブログです。 *サイト:https://hokuougohonyakusya.wordpress.com/ *Twitter: https://twitter.com/NTranslators

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最近の記事

児童文学のなかのお母さん

************************************** 今回の執筆者 中村冬美 専門言語   スウェーデン語 居住地    日本 ************************************** 5月12日は「母の日」だった。老若男女問わず、多くの人が母親のことを想い、実家を離れて久しい大人の皆さんも母親のもとを訪ねたり、電話をかけたりしたのではないだろうか。私自身は先日娘に「お母さん、なにかほしいものある?」と聞かれたので、 文藝

    • 「ああいう、交遊、EU文学」発足記念イベント講演・補遺 

       昨年(2023年)11月の、EU文芸フェスティバル期間中に東京・青山で開かれた『変容することばたち』(11月23日)に、参加者のひとりとして登壇しました。 この日、参加したいろいろな言語の翻訳者は20名超。それぞれが翻訳する原語の未邦訳作品や未紹介作家をピッチスタイルで紹介するというステージでした。フィンランドの文学作品は、日本ではまだ翻訳されているものが多くないので、フィンランド国内での人気や、他言語への翻訳の有無を参考に、ぜひ知っていただきたいと思う作品がある作家を11

      • アイスランド映画『ゴッドランド/GODLAND』と字幕ルール〈山括弧〉の話

        先月末に劇場公開されたアイスランド映画『ゴッドランド/GODLAND』を鑑賞してきました。 フリーヌル・パルマソン監督の作品は、トーキョーノーザーライツフェスティバルで観た過去作『ホワイト、ホワイト・デイ』でも同様でしたが、風景や静物の映し方が非常に独特で、アイスランドという土地をより一層印象的に見せているように感じます。 さて、ここで少しだけ本編映像をご覧いただきたいのですが、本作ではデンマーク語とアイスランド語、2つの言語が話されます。予告編では区別されていませんでし

        • フィンランド大統領選と『エジプト人シヌヘ』

           北の果てのこの地では、目に見えて日が長くなり、朝は小鳥のさえずりが冴え冴えと響き、心浮き立つ季節の兆しが感じられるようになりました。 大統領選が終わった…  前回、私はヘルシンキ・ブックフェアに関した投稿をしましたが、今日は徒然に話を進めてみたいと思います。果たして着地点は見つかるか...。 ではまずフィンランドで六年に一度の大統領選が戦われたお話から始めますね。  昨年秋から翌年一月の国民投票に向け、選挙戦がスタートし、各候補者は実に様々なイベントに登壇し、全国を縦断

        児童文学のなかのお母さん

        マガジン

        • 未邦訳書で描く北欧社会~ダイバーシティ(多様性)
          13本
        • 北欧文学サロン
          1本

        記事

          女性形がある言葉のむずかしさ

           スウェーデン語に初めてふれたとき、名詞に「両性」と「中性」があると読み、「なんのこっちゃ、どういうこと?」と、頭の中がはてなでいっぱいになりました。どれが両性で、どれが中性か、は覚えるしかないのですが、両性名詞(「共性名詞」とも)は、もともと、男性名詞と女性名詞とに分けられていたものを「共性」としていっしょにしたものであると、あとになって知りました。  この「両性(共性)」「中性」という区分とはまったく別ですが、職業などを指す名詞には、女性形が存在するものがあります。日本

          女性形がある言葉のむずかしさ

          北欧の文学団体が現在募集している出版社向けフェローシップ・プログラム

          北欧の文学団体が現在募集している出版社向けフェローシップ・プログラムを紹介させてください。 ノルウェー 応募締め切り:2024年2月25日 中央ヨーロッパ時間12時(日本時間20時) 開催日:2024年6月4~7日 開催地:ノルウェー、オスロ 主催者、スポンサー:NORLA(ノルウェー文学普及団体)、外務省 応募資格:大人向けフィクションの出版社/編集者/スカウト プログラム内容:ノルウェーの出版社訪問、ノルウェー作家によるプレゼンテーション、エージェントとのミーティン

          北欧の文学団体が現在募集している出版社向けフェローシップ・プログラム

          サウナにはいくつもの顔がある--『至福の北欧サウナ』

           1月10日、グラフィック社から『至福の北欧サウナ』が発売されました。  上の写真の右側がスウェーデン語原著です。Bastu というのはスウェーデン語でサウナのこと。もともとは badstuga で、これは bad と stuga の合成語、「風呂小屋」という意味でした。  「スウェーデン発のサウナ本? サウナと言えばフィンランドでしょ」とお感じになったそこのあなた。私も同感です! 私の周りのスウェーデン人数人にサウナについて聞いてみたところ、「あんなの熱いだけだから嫌」

          サウナにはいくつもの顔がある--『至福の北欧サウナ』

          Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点

          昨年11月に東京都現代美術館で開かれたTOKYO ART BOOK FAIR(TABF)。前回の投稿でよこのさんが詳しくレポートしてくれたとおり、北欧がゲストカントリーでした。私も会場でスウェーデン児童文学プロモーションのプログラムに参加し、各出版社の絵本の原書をたくさん拝見させていただきました。 会場では「Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点」という特別展示も行われており、今日はそのレポートをしたいと思います。 訳書『メッセージ トーベ・ヤンソン

          Tove’s Perspective トーベ・ヤンソンの視点

          スウェーデン児童文学プロモーションチームが来日しました

           新しい年が始まりました。  各地で続く内戦や戦争、攻撃などは、よい見通しがまったくないままに年が明けてしまった、と思っていたら、元日には非常に大きな地震が能登半島で起こりました。今も大きな余震が続いているようで、本当に心配です。一刻も早く状況が落ち着き、救助活動などが進むことを祈るばかりです。  少しでもよい年になりますようにと願いつつ、よい年にするべく、何ができるのかを考え続けねばと思います。 TOKYO ART BOOK FAIRにて  もう2ヶ月近く前のことになっ

          スウェーデン児童文学プロモーションチームが来日しました

          2023年北欧語書籍翻訳者の会的まとめ 

          本年、みなさまはどのような本読み時間を楽しまれましたか。 私たち「北欧語書籍翻訳者の会」メンバーが手がけた翻訳書も手に取っていただけていれば幸いです。今年も会のメンバーは、興味深い本を日本語読者のみなさま向けに出しました。 今回は、フィンランド語翻訳のうえやまみほこが担当です。 本年最後のNOTE記事は、2023年総括とうたい2023年に発行となったメンバーの手がけた翻訳書籍を発行月別にご案内します。 書籍名に出版社WEBサイトへリンクをはりましたので、書籍内容の詳細は、

          2023年北欧語書籍翻訳者の会的まとめ 

          書店員さんに賞を――デンマークの事例

          ブリクセン賞とは? https://blixenprisen.dk/prismodtagere/prismodtagere-2023/  デンマークにはブリクセン賞という文学賞がある。ブリクセンとは、お察しの通り、『アフリカの日々』や『バベットの晩餐会』などで知られるデンマークを代表する作家、カレン・ブリクセン(イサク・ディーネセン)が由来となっており、デンマーク文学に寄与する人、団体、機関等の功績をたたえるため、2015年から、デンマーク作家協会、デンマーク文学協会、デ

          書店員さんに賞を――デンマークの事例

          「やっと会えたね」ある10月の午後、書籍見本市にて

           さて、勿体ぶったのはタイトルだけ、余韻も0.5秒で消えたでしょうか、今回はフィンランドからお届けします。  毎年、各国でブックフェア(書籍見本市)が開催され、フィンランドで最大規模を誇るのはその名もヘルシンキ・ブックフェア(Helsingin Kirjamessut)、実は初回は2001年ですので、500年以上の歴史を誇る世界最大規模のフランクフルト等とは比べるべくもありませんが、フィンランドの書籍や文学に関心を持つ人にとっては大切なイベントです。 公式サイト H

          「やっと会えたね」ある10月の午後、書籍見本市にて

          『サウナをつくる スウェーデン式の小屋づくりのすべて』出版されました!

          この11月9日にリーサ・イェルホルム・ルハンコ作『サウナをつくる スウェーデン式小屋づくりのすべて』という本がグラフィック社より出版されました。  中村冬美と安達七佳が翻訳を担当し、太田由佳里さんというスウェーデンで家具職人をしている方が監修を致しました。また柚井ウルリカさんが、中村と安達のスウェーデン語表現に関する相談に載ってくれました。この本の編集はFermentbooks社の和田義彦さんとグラフィック社の南條 涼子さんがご担当くださいました。皆様に心からの感謝を申し

          『サウナをつくる スウェーデン式の小屋づくりのすべて』出版されました!

          「私たちのエコロジー」展

          六本木ヒルズ内にある森美術館で開催中の「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」より、2人のアーティストと作品を紹介したいと思います。 1人目はリトアニア、ヴィリニュス出身のエミリヤ・シュカルヌリーテ(Emilija Škarnulytė)。ヴィリニュスとノルウェーのトロムソを拠点として活動しています。 今年のEUフィルムデーズで初の長編作品『埋葬(原題 Kapinynas / 英題 Burial)』を鑑賞したのですが、こんなにすぐに別の場所で名前を目にすることに

          「私たちのエコロジー」展

          氷河の裾を歩いてきました

          今回は画像だけです。 撮影者:朱位昌併

          氷河の裾を歩いてきました

          「手に負えない者たち」のこと

           少し前、女性史について発信するインスタグラムアカウントで、スウェーデンで近々公開されるという映画が紹介されていた。映画はデンマークのものだったが、同じようなことがスウェーデンでも起きていた、と書かれている。なんのことだろう、と思ったら、女子収容所と強制不妊手術のことだった。  デンマークでは、女子収容所が1923年から1961年まで存在し、500人以上の女性が、低能である、あるいは、性的に奔放であるとして収容された。スウェーデンの配給元サイトにある資料には、そう書かれてい

          「手に負えない者たち」のこと