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心地よいところ

お気に入りのマグカップが割れてしまった。寒い朝にコーヒーを飲もうとして、熱いお湯を注いだ瞬間にパキパキと亀裂が入った。


ボッテリしていて、私の手になじんだマグ。以前、北米に滞在していたときに買った思い出深いマグ。割れたマグから溢れてくるコーヒーをしばらくボーっと眺めていた。


それから新しいマグを探してみたけれど、なかなかしっくりくるものが見つからない。あのマグは余ほど心地よかったのだ。

気づけば、マグだけではなくて、身の回りのものも心地よいもので満たそうとしている。心地よい服、心地よい道具、心地よい仕事、心地よい関係、心地よい時間……。


以前はもっと、見た目の良さだとか、いい条件だとか、メリットだとか、効率だとか、機能性だとか……なにかしらわかりやすい判断基準があったような気がする。


それが、最近は「心地よいかどうか?」という曖昧なものになってきた。目には見えないもの、触ってみなければわからないもの。感触や直感を重視するようになってきた。変わってきた。


あの不格好で厚ぼったいマグカップにまた出会えるだろうか?

それとも、その「心地よい」という感覚すらも変わってしまって、また別のなにかを見つけるのだろうか?


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