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五月の花嫁

もうさすがに戻ってこないよね、冬。

と、クローゼットにかけられたカシミアのコートをすりすりと触りながら思う。

一年中ずっと冬だったらよかったのに。
空気が冴えて、こたつが暖かくて、冬って好きだ。

夜はもう暖かいお布団ではなく薄めの毛布をかけて寝ていて、なんなら窓を開けて寝ているくらい(マンションなので防犯は大丈夫)。歩いているとうっすら汗をかく日もある。
さすがにここまでくると、もう冬とはさよならだ。

なんて言いつつも、わたしは五月に咲く花々をそれはそれは楽しみにもしている。
五月が好き。五月の緑と花が好きだ。

五月は私が結婚した月である。

いまからもう20年前になる。(!)
その日、わたしは大輪の芍薬のブーケを手にしていた。ブーケをどうするかという話になった時に自分で「ぜひ芍薬で」と希望したのであるが、ブーケにするほどの大量の芍薬って重たいんですよ。

デジタルじゃない頃の写真……。

「花って重いんだな」ということを初めて知った日でもありました。

五月の花嫁になったのはまったくのたまたまで、なんとなく結婚することになったのが前年の秋で、半年後くらいが妥当なのではないかと、五月を選んだ。
いま思えばとてもいい季節だったと思う。
その日を思い起こして浮かぶのは、新緑と芍薬、そして白いバラ。
いまは亡き祖母が、祖母のお庭に咲いた白バラの花びらをたくさん摘んできてくれて、フラワーシャワーにしてくれたんだった。とても嬉しそうに花びらをふりまく祖母の顔を思い出す。

ずっと冬がいい、寒いのが好き。でも五月のバラも、芍薬も好き。
そんな矛盾を抱えながら人は生きている。
大げさである。
でもほんとうに、そんなふうに矛盾しててもいいと思うんだ。

・・・

休職にも本格的に飽きてきた。

これはもう、復職してもよいんだろうな。よいんでしょうね。でも期間が定まっているから勝手に早めるわけにもいかない。

仕方なく(仕方なくではないのだが)、ウォーキングを日課に取り入れてみた。

金曜  9929歩
土曜  8636歩
日曜  11713歩
月曜  6410歩
火曜  8709歩

で、今日が8096歩(現段階で)。

なかなか歩いているよね。
歩くときは無心。
音楽を聴いていても、ラジオを聴いていてもなんだか歩くことに集中できないので、無心に歩くことにした。

きっと、歩くことは心にも体にもいいんだろう。
そんな気はする。
ただ、わたしはウォーキングを健康目的で行ってるわけではなくて、ひまをつぶすためにやってる。ひまがつぶせる上に、何となく数字で結果が出るので達成感がある。
暇つぶしの達成感。
ウォーキングに失礼っちゃ失礼か。ん?別に失礼もなにもないか。

歩く、歩く、歩く。
そんな五月でもあった。

・・・

母の日。

わたしは切り花があまり好きではないから、カーネーションはいらないよと娘に言ってある。
いただくのはありがたいし嬉しい気持ちにもなるんだけど、部屋に飾って、しおれていくのが悲しいのである。

なので我が家では、母の日にバラ園のバラを見に行く。これは毎年恒例である。

今年は、ドンピシャだった。
なにがかというと、あの日、京成バラ園のバラが本当に綺麗に満開だったのだ。

バラのアーチ
クリスマスツリーみたい
「ファイアーワーク(花火)」という名

ここには春と秋に必ず来る。
わたしは春バラと、秋バラに会うために生きているから。(それも理由の一つだから)
今年も会えた、そんな気持ちになる。

そして、わたしにとって特別な「グレイス」というバラ。バラ園の奥の奥の方にそっと咲いている。見頃を逃すことが多くて悔しいここ最近だったのだが、今回は、ちゃんと咲いていた。

グレイスさま

なんて美しい!

思わず感涙するほどに、あなたはとても美しい。グレイスよ。と思う。

今年も生きてあなたに会えたことに感謝しよう。

・・・

さて、明日の診察で上品先生に「オッケー」の判断が出たら、いよいよ復職決定だ。

その前に、オーちゃんの家に遊びに行き、また、既読スルーかと思ってたママ友から「ごめん送信ボタン押し忘れてた!!」というLINEが届いて、これまた2年ぶりに会うことに。

仕事に戻ることに対して嫌だとかいう気持ちはまるでないけど、本当に戻れるのかな?とは思う。働いてた感覚が思い出せない。
なんだか不思議な五月だったな。
何者でもない、なにもすることがない、そうであることを命令されているような、そうして、久しぶりの人たちと会って話すことの多い月だった。変な時の流れであったよ。

人生、いろんな時があるね。
最初とてもつらくて、つらくなくなって、ひまで、ひまで、寝て、花が綺麗で、とても歩いた五月。

きっとこれからも色々なことがあるだろうけど、「ま、そういう時もあるわい」とてくてく歩いていくしかないんだろう。
毎年変わらずに咲いな散る花や、色を変える木々や、冴えていったりほかほかしていったりする空気を感じながら、てくてくと。


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