見出し画像

憧れの楽器⑦ ~ひじの角度をほめられる~

5月から勢いで始めてしまったヴァイオリン挑戦記のつづきです。

7月は5回も月曜日があり、そのうち3回がヴァイオリンのレッスン日である。
ちなみにそれ以外の2回は、娘の部活のコンサートと、サントリードリームマッチに行く予定。

サントリードリームマッチ、はりきって(はりきりすぎて)エキサイトシートを取ってしまった。出場選手を見るだけで胸が高鳴る。この日にレッスンが重ならなくて本当に良かった。

さて、前回、20年ぶりにカラオケボックスを訪れてヴァイオリンの個人練をしたわたしでしたが、少なくとも週に1度はまねきねこ練(カラオケまねきねこに行っているのでこう呼ぶ)をしようと心に決めた。

ただ、なにしろ20年ぶりなのでカラオケボックスの昨今の料金体系がよくわからない。
前回はうっかり休日の夕方に行ってしまい、高いのか安いのかよく分からない料金を支払うこととなった。
今後のためにもよくよく料金を調べてみると、午前中が室料50円ととても安いことが分かった。ドリンク一杯350円だから、1時間練習して450円。レッスン室を借りるより随分安いんでない?

というわけで今回は仕事のない平日の午前中にまねきねこ練をしました。

前回のレッスンで、キャプテン(先生)が
「ひじを固定して弾くのに慣れるためにこんなやり方があります」
と実演してくれた練習法があった。
壁にぺたっと右半身をつけて立ち、ひじを壁に固定し、その先だけを動かして弾くのである。
(文章だけで説明できてる気がしない)

今回のまねきねこ練ではこれを実践。
部屋の壁に右半身をつけ、ひじを固定してひたすら基礎練を繰り返す。
はたから見たら、狭いカラオケボックスの壁にべたっと張りついて楽器を弾いている、ちょっと気味の悪い女である。
そういう幽霊話とかありそう。

40分ほど練習して、なんか疲れたな…と休憩。
ウーロン茶を飲んでぼうっとしていると、
「せっかくカラオケに来てるんだから一曲くらいなにか歌ってみては?」
という考えが頭をよぎった。

タブレットを手に取ってしばし考える。

………なにを歌っていいかわからない。

え、カラオケってなにを歌うんだっけ!?

悲しいかな、久しぶりすぎてカラオケの持ち歌もなく、最近の歌も分からず、なんなら昔の歌もよく分からなくなっている。
カラオケボックス内でひとり呆然。

わたしは前川清のものまねを個人的なライフワークにしており、前川清の真似でサザンオールスターズ「TSUNAMI」を歌うことを今年の目標のひとつに掲げているのだが(誰かに聞かせる予定はない)、さすがに20年ぶりのカラオケの一発目にそれを歌うのははばかられる。
万が一外に漏れ聞こえていたら、気まずい。
「壁に向かってヴァイオリンをずっと弾いていたと思ったら、前川清のものまねでTSUNAMIを歌い出した女(のような幽霊)」である。

歌うことはあきらめ、まじめにヴァイオリン練にもどってまねきねこ練を終えた。

・・・

その日の夜、夜ごはん用にドライカレーとフルーツサラダを用意してから夜のレッスンへ。

夜になりいくらか気温は下がったが、湿気がすごい。汗をかきながらレッスン室に入ると、
「暑いですね!」
と今日もディズニーぽい笑顔のキャプテン。

なんだか和風の装いをしておられる。それでもやはり醸し出す雰囲気がディズニーキャストっぽいのが不思議だ。わたしの身の回りにこんなにディズニーっぽい人は他にいない。
いつかご本人に「ディズニーぽいですね」とお伝えできる日が来るだろうか。何を言ってるんだと思われそうだが。

さて、教本の続きを進め、今日でようやくA線の基礎練が終了。次のD線にすすむ。
D線の開放弦はレ。ヴァイオリンの低い方から2番目の弦である。
マンドリンでも同じ音域を弾いていたのだが、わたしはD線の音がいちばん好きだった。だからD線に進めたことが嬉しい。

「D線の次はどの線を練習するんですか?」

とキャプテンに尋ねると、

「Gをやって、最後にいちばん高いE線です。E線の音域はヴァイオリンしか持っていない音域なので、実際のオーケストラなどではE線を弾くことがいちばん多いです」

へぇ~と思う。
G、D、A線の音域はヴィオラとかぶっているのだそうだ。そんなにかぶってるんですね。

「では、ヴァイオリンが弾けるようになると、ヴィオラも弾けるものなのでしょうか」

「そうですね。楽器の大きさが違うのでひじの角度が変わってきますが、基本的には同じです。…あ、ただ譜面の記号がすこし違いますね」

「記号?」

「ヴィオラはハ音記号を使います」

ハ音!?

「ハですか??トでもへでもなく?」

「こんな風な形をしてます。Kみたいな」

キャプテン、教本の隅に小さくハ音記号を書いてくださる。


これです

もしかすると、これ、音楽の授業で習ったのか?
でもまったく記憶にない。
わたしがこれまで経験してきた楽器は、ト音とへ音記号しか使ってこなかった。
世の中、知らないことってまだまだたくさんあるものだなー。しみじみとハ音記号のかたちを見つめる。

・・・

今回のレッスンでキャプテンに、

「ひじが固定できています。角度もいいですね」 

とにっこりと褒められ、嬉しかった。

引き続き「週に一度はまねきねこ練」と、心のふんどしに書き記す。

「なにか一曲くらいカラオケの持ち歌をつくる」とも、小さく記す。