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読むまちづくり

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まちづくり絡みの話をまとめています。随時更新。
まちづくり絡みの記事をまとめたマガジン「読むまちづくり」。 月額課金ではなく、買い切りです。なので…
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記事一覧

「ふれあい」とは「同地同時に多数の人を集めることで、普通にしていると生じない人同士の意図せぬ交流を生み出す」こと説~あるいは方便プロセスデザインによるイノベーション促進施策の応用例として

まちづくりの分野では、しばしば「ふれあい」という言葉が好まれる。 あまり多くの人は知らないと思うし、知らなくてもいいことだが、この独自の概念、実はWikipediaの記事があったりする言葉なのだ。 これによると「ふれあい」とは「年代層や職業などが異なる人間が情緒的につながった関係を形成することを指す」という。 「袖振り合うも多生の縁」ということわざがある。道を行くとき、見知らぬ人と袖が触れ合う程度のことも前世からの因縁によるという意味から、どんな小さな事、ちょっとした人と

マルチセクター組織のレシピ

まちづくりは参加と協働が大事だと言われて久しい。ここでいう参加と協働というのは、公共サービスを自治体が独占して担うのではなく、企業やNPO、学校や病院など、様々な異なるセクターで相互協力しあいながら担うことを意味している。そこで作られる組織体をマルチセクター組織と言ったりする。 マルチセクター組織の設立は確かに望ましいことであるが、一方でセクター間では当然、組織の事情や背景が異なる。それゆえ、マルチセクター組織の形成や維持は簡単ではない。 では、ワーカブルなマルチセクター

まちづくりにおける「見えない関係」と「あの人」の役割の話。

まちづくり活動は、うまくいくケースとうまくいかないケースがあり、その違いは、メンバーの関係性にありそうだ、ということは常々言われている。 いろんな調査を見ていても、人が会社を辞める理由のトップも人間関係だという。とりわけ、賃金の発生する労働と違い、ボランティアは気持ちが重要であるから、その傾向はより強くなりそうである。グーグルも成果を上げるチームは別に学歴が高いとか定期的な会議で合意形成をしているとかいうことはあまり関係なく、心理的に安全な関係が作れている、ということを調査

新著『まちづくりにおける「対話型市民参加」政策の見た夢と到達点 京都市2010年代の「カフェ型事業」の経験から』予約開始のお知らせ

この度、東信堂さんから本を出していただけることになりましたよ、というお知らせです。

まちづくりプラットフォーマーと「データ労働」の話

YouTubeにしろ、子ども食堂にしろ、町内会にしろ、プラットフォーマーは共通して、利用者の「情報」を欲する傾向がある。というか、ユーザーの情報をどれだけ細やかに集められているかがサービスの質に直結し、サービスの質で人々が利用するプラットフォームが選ばれてしまう以上、集められる情報の質と量の競争になるのは自然だ。 ところで、無料ないしそれに近い金額で利用できるサービスに見せかけて、我々は情報の生産と納品という「労働」をしているという見方がある。これを「data as lab

橘玲「テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想」読みました

橘玲「テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想」読みました。面白かったです。

まちづくりと、オーラの泉が普及させた「語りのスタイル」との関係について

こないだお友達と、まちづくりにおいて、スピリチュアル系の動機を語る人というのは、いつごろから現れるようになったのか、というような話をしていた。お友達は直感として、東日本震災あたりに契機を見たようだ。 調べると、面白い論文があった。中村晋介『「スピリチュアル・ブーム」をどうとらえるか―福岡県内の大学生を対象とした意識調査より―』(2011)である。 要旨によれば、現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がって

名張市地域づくり協議会制度について勉強した

コミュニティ政策学会で、名張市のコミュニティ政策について教えてもらったので、忘れないようにメモしておく。 名張は大阪のベッドタウンとして発達した。ベッドタウンの発達は団塊世代の大量転入によって成立する。同世代が一気に転入することで、急速に宅地化と人口増が見込めるが、その先に待っているのは高齢化と住民税の極端な減少であった。 こういった状況で地域組織によるまちづくり活動を維持するために名張市が選択したのが、自治協議会制度の導入であった。具体的には、各種団体の補助金カットと、

まちづくり活動の動機は「楽しさ」か「面白さ」か「義務感」か〜あるいはカント的道徳観の問題について

先日、コミュニティ政策学会の大会に参加した。 思えば私はこの会に20年近く参加しているのだが、こうして長く継続的にかかわっていると、やはりこういう業界でも、ファッションとかと似てトレンドみたいなものがあるのだなと思う。そういう変化の中で最先端にいないといけないとは思わないが、どういう議論が流行っているのか、ということは知っておけると面白いなと思う。 ところで、そんなトレンドに関して、大会で面白い議論があった。 一昔前に比べれば、「人々に地域活動に参加してもらうためには、

学校運営協議会における司会者の役割の重要性について

諏訪 英広、藤井 瞳、田中 真秀『学校運営協議会の会議運営に関する一考察 ―「意思形成」過程に焦点を当てて―』を読んだ。参考になった。 地域でまちづくりに関わっていると必ず目に入るのが、学校運営協議会という名前である。 学校運営協議会は、保護者や地域住民による学校運営への参画を促進するために、2004年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正(第47条の5)によって規定された制度で、次の三つの権限を持つ。 第一に、校長が作成する学校運営の基本方針の承認をすること。

Perplexityに自治体の債務負担行為について教えてもらった

知らない言葉が出てきたので、Perplexityに教えてもらった。 ・・・ 私:自治体の債務負担行為とは? 債務負担行為とは、地方自治体が将来にわたって債務を負担することを約束する行為のことです[1][2][3]。具体的には以下のような特徴があります: 1. 予算の一部として議会の議決が必要です[1][2]。 2. 翌年度以降の支出を伴う契約や債務を設定する際に用いられます[1][3]。 3. 一般家庭のローンに例えられることがあります[3]。 4. 歳出予算に

気縁コミュニティが発達してもらっては困る人の話

まちづくりを成り立たせるコミュニティというものは、以前から、物理的な近所に住んでいることで生じる縁「地縁」、志やテーマを共有することで生じる縁「志縁」があると言われてきた。私はそこに、気質や価値観が合うことで生じる縁「気縁」という視点を付け加えることを提案してきた。 地縁や志縁があっても、気が合わないためにまちづくり活動が停滞するとか空中分解するなんていうことは日常的によく聞く話だ。実際には、うまく活動を継続できている地縁組織や志縁組織は、運よく、たまたま地縁や志縁のなかに

休日だったので、chatgptに、町内会の未来を占うパネルディスカッションを開催してもらった

これからパネルディスカッションを開始します。 現在町内会は加入率の低下や高齢化で存続が危ぶまれている。ただ、では将来的にどのような姿になるのかということはあまり議論されていない。 あなたはこれから、このテーマに詳しい3人の科学者を演じる。 科学者1は、町内会が消滅するシナリオを想定する。 2は町内会が発展するシナリオを想定する。 3は町内会の機能が異なる組織に置き換えられるシナリオを想定する。 三者のディベートを記してください。 ChatGPT ディベート:町内会の将

「PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う」を読みました

「PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う」読みました。今まさに読みたい内容でした。面白かったです。 常々、「こんだけ豊かになった社会では、これからは、まちづくりではなく、まちつかいの方が必要だ」といってきたけど、それをパブリックハックという概念で説明されている。 ただ、この観念をわざわざ言わないといけない状況に私たちの社会はあって、本書はそのことに対する問題提起でもある。 例えば、法的には何の問題もない行為でも、それに対する不安を抱えた人々からの通報があれば警