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開発者のための文化づくり - 地盤調査編-

今現在、自分の働いている会社の文化が自分と合うかどうか、一緒に活動する人との価値観が一致しているかどうかということは我々の働きにとても大きな影響を及ぼします。これを読んでるみなさんの中にも、

  • 「あいつとはいつも意見が合わないから全く議論ができない」

  • 「この会社の開発組織は受託開発っぽくてキョムリ」

  • 「PMが完全に伝書鳩になっている」

などといったお気持ちを感じて転職を決意した方も少なくないと思います。こうした負の感情は文化や価値観の不一致から生じていることも少なくありません。この不一致をできる限りなくすことで開発者が開発を進める上で「開発以外のことに思考や時間を消費し疲弊する」と言った不幸を減らせるのではないでしょうか。この記事では私がHacobu社で行った「より良い文化を作っていくための下調べ」について書いていこうと思います。



開発者には開発に集中できる文化が必要

開発者に限らず我々サラリーマンは業務を遂行することが本分です。Hacobu社に関して言えば「運ぶを最適化する」という会社のミッションに惹かれ運ぶを最適化するために入社した開発者が大半を占めているのですが、運ぶを最適化したくてジョインしてきたのに入ってみたら社風が全然合わず気がついたらそのことばっかり考えていてドメインやユーザーのことが全く考えられていない、みたいな状態は不幸以外のなにものでもないのですよね。このように我々は目的を達成すべく業務を遂行するために仕事をしているわけですが、働いていると業務に直接関係のない事象に時間を取られたり脳みそを割かないといけないシーンに直面することが多々あります。キョムリ。その大部分が「人」にまつわる問題。ヒューマントラブルが増えれば増えるほど我々は自分の業務に集中できなくなる、という経験はこれを読んでる皆さんもしたことがあるのではないでしょうか。「今してるよーっ」て方もいるかもしれません。「3、4回ぐらいしたわぁ〜」と言う方もいらっしゃると思いますね。「それ以上してるわー」って方もry。。。この「人」にまつわる問題を未然に防ぐ上で有効に作用するものが「組織文化」です。なぜ組織文化が鍵となるのか、そもそも組織文化とは何かを知りたい方は社内向けに使ったスライドを貼っておくのでめくってみてください。

めくるのがめんどくさいキョムリモード突入中の方々へ向けて簡単にいうと「同じ価値観を持っている人が集まった方がみんな幸せになれる」ということを言っています。宗教の話みたいですが宗教の話ではありません。宗教の話みたいですが宗教の話ではありません。大事なことなので2回いいました😡。言うなれば節約思考の人は節約思考の人一緒になった方が幸せになれるし、浪費家の人は浪費家の人と一緒にいた方が幸せになれるみたいな話です。

企業文化を明文化する方法は数あれど「明文化されているだけ」で実態が伴っていない場合も往々にしてあります。実態が伴っていないと「想像していたのと全然違う」とか「明文化されていることとやってることが違う」と言った負のお気持ちを生み出し、組織や人間関係における亀裂の原因になっていきます。一度亀裂が入ってしまえば当事者は疎かマネージャーも巻き込まれ、その様子を見聞きした周りのメンバーもいらぬ気を回さないといけなくなり結果として全員の時間が無駄に消費され組織全体が死んでいきあれよあれよとメンバーが離脱していく、という事態になりがちです。逆に言えば会社が掲げている企業文化にしっかりと実態を伴わせることでこれから入ってくる開発者のミスマッチを減らし、今いるメンバーはより快適に業務へコミットすることができます。情報の開示度・意思決定の仕方・権限移譲度・とりあえずやってみる文化なのか石橋を叩く文化なのか等々、仕事をする上で仕事をする環境が自分に合っているかどうかはマジで重要。

開発者は今の組織をどう感じているのか

ひとえに「文化を作っていこう!」と言えど今いるメンバーが今の会社をどう感じているのか、どういう文化が既に出来上がっているのか、現在地を把握しないことには今後打っていく施策が決められません。そこで今いる開発者がどう感じているのか組織の現状について丁寧にリサーチをかけていきます。

まず全体感をざっくり把握するためにgoogleフォームを使ってアンケートを実施しました。設問はこんな感じ↓↓

設問は必要最低限にする

「リファラルできるかどうか」という設問はそのまま「知り合いを入れてもいいと思えるほどに組織のことを信用しているか」という信用度合いを測ることができます。良い点と悪い点は言わずもがな。入ってみたい会社については今いるメンバーが理想としている組織像を推察するために設定しました。

これに加え、チームによって組織に対するお気持ちに差があることも考えられるので所属チームの設問も設けました。アンケート結果がこちら↓↓

チームによって差はあれど全体として良い状態とは言いにくい
おおよそ予想通りの回答が出てきていた
情報共有に起因する課題が多く出ていた

次に上記の結果をもってより深いファクトを得るべくメンバーに1on1ヒアリングを実施。

ヒアリング内容抜粋

詳細は割愛しますがヒアリングをしたほぼ全員が「自分のチームは好き」という趣旨のことを言っていたので「どうやら部に対するお気持ちとチームに対するお気持ちに乖離がありそう」という仮説が浮上。この仮説を確信に変えるべくあるチームに「チームにならリファラルかけれるか?」アンケートを実施。

部とチームで抱いているお気持ちに差があるということがわかった

このアンケートにより部に対するお気持ちとチームに対するお気持ちで大きく差があることが判明しました。なるほど、興味深い。以上のリサーチ結果から現在形成されている文化と組織課題を言語化します。

現在形成されている文化をまとめたもの
現在の組織課題をまとめたもの

これらが開発組織全体の共通認識と言えそうかどうかの確信性を高めるため再度アンケートを実施。あんまりアンケートばっかり取ってるとみんなが不愉快になるのでこれで最後にするという強いお気持ちを携えて実施したいお気持ち。最後のアンケートでは会社が設定しているValueから設問を作成し、みなのお気持ちを知るついでに会社が作っていきたい組織像と現状の乖離を明らかにします。その集計結果が↓↓

票が右に寄っているものほど高いレベルの文化となっていて、
ばらけているものほど共有認識が取れていない状態

「助け合う文化」というのは兼ねてよりいろんなメンバーが口にしていたので高得点を取ることを想定していましたが、意外だったのが「やりきる」という項目のポイントが最も高かったこと。メンバーのオーナーシップがつよつよであるという文化を有していることが判明しました。

以上によりテック組織の文化に関してみんなの認識が揃っているものと揃っていないものを可視化することができました。「助け合い」と「完遂する」が高ポイントをマークしていたのに加え「建設的に議論できる」という項目も比較的良好な数値を出していたので今の開発組織が「助け合いの文化」「フラットな文化」「目的思考な文化」を有しているというのは間違いないと言えます。ワイもこの会社にはそういう文化あると思う。


開発者のために今後何ができるか

さて、現状がわかったところでこれから具体的にどういうことをしていくか決めねばなりません。それを決める軸となるのが最近のスタートアップならどこもだいたい設定しているValueです。Valueはその会社における行動指針、意見が割れたときの意思決定の軸になるものなのでValueに掲げている内容が実態として現れていれば現れているほど強い文化として皆の共通の価値観になっていると言えます。そこで先ほど出てきた

このアンケートをそのまま転用し、追うべき指標に据えるとともに施策立案の軸にします。要は票がばらけているものや左に寄っている項目を右に寄せて行こうというもの。とはいえ票を右に寄せていく上で7つあるValueすべてに対し同時に施策を打っていくのはリソースの観点からあんまり現実的ではありません。ですのでどのValueから力を加えていくかを考えます。今のValueは下記↓↓

  • 険しき道も、共に進もう

  • 思い込みを、とっぱらおう 

  • “正・反・合” で、対話しよう

  • 当事者意識に、火をつけよう

  • 速く動き、早く届けよう

  • 敬意をもって、接しよう

  • いつだって、笑顔で

これらをまじまじ眺めること数分、ふとこんなことを思いました。「リスペクトもされてないし建設的な議論もできないのに笑顔で仕事なんかできないよなー」と。つまり「あるValueを高めるには他のValueが高まってないといけない」という具合に他のValueの成立条件になるような関係があることに気づきました。その関係を整理したのがこちら↓↓

 Valueの成立構造と現状

下にあるValueから数値を高めていけばよりスムーズに文化醸成を進められそうということが推測できます。リスペクトのカケラもない上司の下で主体的に仕事しようとは思わないし、主体的に動けない環境下で「とりあえずやってみる」なんてことはできっこありません。そもそもリスペクトは全てに優先する。リスペクト大事。

文化醸成ロードマップ

優先順位をつけた上で今後何をしていくかの話ですが、結論からいうと情報発信が増える施策打っていくことにしました。ここでいう情報発信とは外部発信に限らずチーム外発信やチーム内発信など、リベラル・テキスト問わずすべての情報発信を指します。なぜか。情報発信がないと誰もなにもできないからです。どういうことか。リスペクトを例に考えてみましょう。リスペクトは全てに優先する。想像を膨らませながら下のスライドを見てみてください。

どこの者とも知れない配り手が得たいの知れない白い粉を配っていても受け取ろうと思う人は少ないと思います。ここに某エナジードリンクの会社のロゴが掲げられているだけで配り手に対する印象は大きく変わり、得体の知れない白い粉が得たいの知れる白い粉と認識できるようになります。「あの会社が配ってるならちゃんとしたものなんだろう」と一定の信頼をおくことができるわけですね。

オーナーシップについても、どのくらいのスキルがあるのか、得意不得意がなんなのか何も知らない相手にいきなり裁量を渡すことはしません。逆も然りでどこの馬の骨とも知れないぽっと出のおぢさんから指示を受けて主体的に動ける人などいないと思います。つまり自分の情報を開示したり周囲の情報が開示されていなければ我々は何も行動できないのです。

また情報発信をすることで現在発生している組織課題もある程度解決できると言えます。例えばチームに対するお気持ちと部に対するお気持ちに乖離がある問題も他チームのことをよく知らないが故に起こっています。知らない人に自分の友人を紹介できないのと一緒ですね。裏返せば、各チームが情報発信し他チームがその情報を知っていれば部全体を認知することができ結果として部に対する信用度が高まるわけです。知るが仏。

「新メンバーがチームに入って行きにくい問題」はある程度各チームで頑張ってもらうしかないと思いつつ他の組織課題については情報の発信度を増やすことで一定の解決が見込めそうです。とはいえ無理に情報発信を強要してもいい結果にはつながらないのでしばらくは自分が率先してやることで後に続いてくれる人が出るのを期待しようと思います。この記事自体そういう位置付け。

これに加えて情報発信のハードルを鬼下げるべく組織開発室という組織を開発してくれる室の方に掛け合って会社によるコンテンツチェックを不要にしてもらいました。情報発信、とりわけ外部発信するとなるとコンテンツを作るだけでも大変なのにそれを細かいところまでチェックされるとなると修正工数も嵩むしチェックされることそのものが億劫すぎて外部発信しなくなることがあります。なぜなら私がそのタイプだから。

そもそも外部発信が盛んになることによるメリットは組織は当然のことながら発信した個人にも多くあります。外部発信というのは自分の実績や考え方を広く開示する行為そのもの。「何をしているかわからない個人」が会社内で評価されにくいということは我々の想像に難くないと思いますがそれは社会においても同様で、今まで何をしてきたかがわからない個人と明らかになっている個人とでは転職や登壇等、他者とコミュニケーションをとる上での信頼感や説得力が大きく変わります。つまり個人の考え方や実績をオープンにできる会社環境は個人のキャリアを形成する上でとてもプラスに働くということ。役職や肩書きを求めなくなっている時代背景的にも外部発信した自分の考え方や実績は自己の市場価値を高める上で重要な代替要素になり得るわけです。

情報発信することによる個人の正のサイクル

情報発信を継続し個人の活動が認知され始めると上記のような正のサイクルが生まれます。自分がやっていることを発信しているとそのうち多かれ少なかれ共感してくれる人や応援してくれる人、評価してくれる人が現れます。そういう人が出現すると発信者は「自分がやったことは間違ってなかったんだ」という小さな成功体験を積むことができ、より新しい取り組みに積極的になります。新しい取り組みというのは往々にして「こうした方がいい」という良心による改善が起点となるのでそれがまた情報発信のコンテンツになる、という好循環が始まるわけです。この好循環は組織に対してもいい影響を及ぼします。

情報発信が増えることによる組織の正のサイクル

誰かが情報発信をしはじめると次第にその和が組織内で広がり、組織全体の活発性が向上します。活発な組織は新しい取り組みも新しいコンテンツもどんどん外へ漏れ出していくため社外の認知も拡大し、文化や価値観に共感した人の応募が増え採用確度が向上します。名だたる有名なスタートアップ、ベンチャーの多くはこういう状態になっているので我々も認知できているといった具合。個人の情報発信が増え組織が活発になれば自ずと当面のKPIとして設定した4Valueのポイントも上がってくるだろうという算段です。よさそう。


まとめ

情報発信を促す施策は数ある手段のうちのひとつでしかないですが、こうした活動を通して会社が掲げているValueに実態が伴ってくればヒューマントラブルが減りそこで働く開発者にとってとても開発しやすい文化ができあがっていくと思います。私は普段デザイナーをしており自分では動くモノを作れないので「エンジニアって偉大だな」と常日頃から感じているのですが会社によってはエンジニアをただの作業者ぐらいにみなしていてそれが原因でエンジニアが不満を抱えてしまったり、エンジニア同士の正義が衝突し合っていたりで本来のポテンシャルが発揮できず萎れていたりするシーンをよく見かけてきました。無から価値を生み出せるエンジニアが疲弊したり潰れたりするのって社会的損失以外のなにものでもないなと心底思うので、今後も開発者が価値を生み出すことに集中できる文化や環境づくりにコミットしていきたい所存。




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