内田由紀子・中央教育審議会委員「計画ポイント解説~ウェルビーイング編~」

ウェルビーイングというのは、たしかにとても大事な考え方です。
ただ、文部科学省からの公的な発信としての限界ということかもしれませんが、ウェルビーイングを考える上で、物理的な学校や地域を前提にしているように思えるところに不全感を覚えました。
いちばん最後に児童生徒が端末をどう活用するかについて言及しているところがありますが、学校や地域が児童生徒の状態をモニターする装置としての活用法に限られていて、彼らが学校や地域を超えて自分たちが生きる「場」を開拓し、選択する相棒としての活用法が想定されていないというところに、それは象徴的に表されています。

社会学者フェルディナント・テンニースによって用いられた「ゲマインシャフト[Gemeinschaft]」と「ゲゼルシャフト[Gesellschaft]」という概念があります。
前者は「共同体」や「親近感を持つコミュニティ」という意味で、後者は「協会」や「形式的・契約的な関係を持つ社会」という意味で使われます。
この動画は、こうした20世紀的な社会学の枠内にとどまっていて、新しい社会的な関係の可能性、そうした場が作り出しうるウェルビーイングについては、念頭にないかのように見えてしまっています。

ゲマインシャフトとゲゼルシャフトはかつて「血縁」「地縁」などとも訳されましたが、それにならえば、「網縁」(ネッツフェアビンドゥング[Netzverbindung] またはオンライン-ゲマインシャフト[Online-Gemeinschaft])のような「場」が、21世紀を生きる子どもたちのウェルビーイングを構成する要素であることを教育関係者はもっと強く意識しなければならないと感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?