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スタートアップのためのシステム・ダイナミクス

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記事一覧

第6回 PDCAのシステム・ダイナミクス

前回の記事では、スピード勝負な側面の大きいスタートアップは、認識(観測)→判断/意思決定→行動/実行の遅れを可能な限り減らすことが重要であることを確認しました。今回は「行動/実行」に関連して、PDCAに向き合うときの考え方について整理したいと思います。 スタートアップのPDCAプロダクト開発、セールス、オンボーディング、コーポレート、ファイナンスなど様々な領域において、スタートアップは基本的には「正解がない」取り組みを行っているので、試行錯誤が常です。 たとえば、どれだけ

第5回 経営会議のシステム・ダイナミクス

経営会議の存在意義スタートアップに限らず、経営においては迅速かつ柔軟な意思決定が求められ、その中で、経営会議は非常に重要な位置付けにあります。スタートアップにとっての経営会議の存在意義としては、次の3つの観点があります。 (1) 問い=アジェンダを立てる すべての企業にいえることですが、特にスタートアップは未知への挑戦をする事業体であるため、日々の業務の中でさまざまな問題に直面します。これらの問題のうち、重要なものをアジェンダとして特定し、それを解決するための方針を決定し

第4回 停滞と再成長のシステム・ダイナミクス

スタートアップに訪れる「停滞」創業から何の滞りもなく「強化型フィードバックループ」を回転させて指数関数的な成長を遂げるスタートアップは珍しく、多かれ少なかれ、どこかで打ち手を間違えることで停滞に直面し、それをうまく克服して成長していく企業が大多数なのではないでしょうか。 第4回では、停滞を生み出してしまうメカニズムと、それを予防・克服する手段はあるのかについて考えて行きたいと思います。 グロースを阻むメカニズム(5パターン)① 環境容量 一般的には「成功の限界」と呼ばれ

第3回 グロースのシステム・ダイナミクス②

「強化型フィードバックループ」10選(後編)以下では、スタートアップに指数関数的成長をもたらし、最初の小さな差を増幅させる「強化型フィードバックループ」ご紹介します。本稿は前回の続きの後編として、残りの5個をご紹介します。 6) ソリューション開発への再投資 スタートアップが初期の収益をソリューションや製品の開発に再投資することで、製品の品質や機能を向上させることができます。具体的には、「製品の特性、機能性、デザイン、品質、信頼性や、顧客の隠れたニーズへの適合性を強化する

第2回 グロースのシステム・ダイナミクス①

前回は、スタートアップ・システム・ダイナミクスの意義や位置付けについて説明させていただきました。今回から具体的な本題に入っていきます。 スタートアップに求められる「指数関数的成長」スタートアップは、一般的なビジネスとは異なり、短期間での指数関数的・加速度的な成長を目指す宿命を負っています。このような成長を実現するためには、強化型フィードバックループが必要です。 強化型フィードバックループとは、ある要因がシステム内でのポジティブな影響を増幅させる構造を指します。例えば、多く

第1回 スタートアップ・システム・ダイナミクスとは

「スタートアップ・システム・ダイナミクス」の提案システム・ダイナミクスという言葉自体は知らなくても、「Amazonのループ図」は知っているという方は多いのではないでしょうか。ループ図を用いて事業成長の構造を設計するのは、システム・ダイナミクスのアプローチそのものです。 「スタートアップ・システム・ダイナミクス」というのは私の造語ですが、本稿は要するに、「スタートアップ経営に、システム・ダイナミクスの考え方を導入してはどうか」という提案をするものです。Amazonが創業期よ