のまつマノ

日常の中で出会うコトバをつい転がしてしまう回文脳人間。石川県在住。金曜の宵に投稿しがち。

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【回文〆日記】 #12 あの凧

あっ!あの凧、出とる! 街灯がなくて墓地がある、夜はこわくて通らない近道。その道沿いにそう広くない田んぼがあるのだが、毎年実りの季節になるとそこに、防鳥用の凧が出される。 凧のある田んぼの風景に出くわしたときはいつも、妙にわくわくする。鳥を模した凧の珍しさと、黄金色に染まりかけた穂波の美しさと、おいしい新米への期待、それらがあいまって変にテンションが上がる。 それにしてもあの鳥の凧、かっこいいなあ。ほしいなあ。あの凧が世間で活躍し始めて以来、見かけるたびにそ

    • 【回文〆日記】 #39 焼きそば2種の立ち位置

      「ペヨング」? ドラッグストアで買い物をしていたら ふと目に入ったカップ焼きそば。 普段はほぼ 即席麺を食べないので そのジャンルに疎い私だが 有名な「ペヤング」くらいは 知っている。 遠い昔に 食べたことがあるような気もする。 「ペヨング」って。 「ペヤング」のバッタもん? 値段は約50円安い。 その2種類のカップ焼きそばは 隣どうしに陳列されていたので 両方の商品の表示を見てみたところ 同じ製造者だった。 じゃあ バッタもんとは違うのか。 ネットで調べると

      • 【回文〆日記】 #38 春の夜の愉しみ

        5月の 晴れた日の 日没後の空気は なんて いいにおい なのだろう。 毎年 この時期 夜 洗濯物を干しに ベランダに出ると かなりの新鮮さで そう思う。 すっきり青く すずやかで ほのあまい あのにおい。 昼間はなぜか あのにおいを 感じない。 夜ならではの なにか なのかもしれないし 実は 昼も漂っているけれど 嗅覚より視覚聴覚が 優位になっていて 気づかないだけ かもしれない。 梅雨入り前の 乾いた日は 年間を通して 湿気の多い 北陸に住んでいると と

        • 【回文〆日記】 #37 ひさびさの写生

          ものの特徴をとらえた絵を さらさらっと 描くことができる人を 心から尊敬する。 絵を描くことが好きだった 時期もあったが 結局 描き続けてはこなかった。 ごくたまに 親しい人への メッセージカードに 絵を添えたくなって 描いてみることがあるが 自分の画力のなさを 再認識して がっかりすることが多い。 エノキの絵 → えのきのえ ← という回文を思いついた。 長年 冷蔵庫に 切らさないようにしている えのきは まちがいなく 私の人生に 最多出場している きのこ

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          【回文〆日記】 #36 並走のふたり

          日没後の帰路で ときどき出会う ふたり組がいる。 決まって並んで ランニングしている。 シルエットや気配で 前にも会った あの人たちだと わかる。 私のめざす方向からやってくるので いつもすれ違う形になる。 あちらは走っていて こちらは自転車をこいでいるので 近づくのは ほんの一瞬だ。 すれ違いざま まばらな街灯の かすかな光のもと 目をこらす。 ふたりとも短髪で 男性のよう。 うす明かりに照らされて 闇に一瞬 浮かび上がるふたりの表情は 必ず 口角が上がっ

          【回文〆日記】 #36 並走のふたり

          【回文〆日記】 #35 弾丸トークの散歩

          朝 東京在住の幼なじみMから ライン。 Mの実家は 私の家の近所なのだが 帰省しているという。 思いがけず 急遽 一緒に散歩することに。 連絡は ときどき 取り合っているが 会うのはおそらく 数年ぶりだ。 コロナ禍が過ぎ去り ようやく機会を得た。 我が家の 玄関前で落ち合い さっそく 川をめざして 歩き始める。 青空 春の花々 田植えの光景 涼しい風 とてもすがすがしい。 幼稚園で知り合い 小中高が同じで 共通の記憶が多いうえ とても久しぶりなので いくらで

          【回文〆日記】 #35 弾丸トークの散歩

          【回文〆日記】 #34 チームワークへの欲求

          数年前から 年に一度 請け負っている 仕事がある。 今年も 引き受けることに決め 作業場所へ 赴く。 その仕事は 毎年 担当者が変わる。 初対面の 主担当さんと 副担当さんに ご挨拶する。 普通に 話しやすそうな方々で 安心する。 例年 仕事を始めるまえに 3人で 情報共有する 流れなのだが 今年は それがなく こちらからやんわり 簡単な打合せを 提案したものの なんとなく うやむやに。 その2人は 見たところ どうやら あまり コミュニケーションを 取らな

          【回文〆日記】 #34 チームワークへの欲求

          【回文〆日記】 #33 青草のときめき

          冬の間は 根っこを切っていない 泥つきの長ネギを 常備するようにしている。 旬なので おいしく 常温で 保存がきくため 便利だ。 加熱したときの 甘さが好きだし なんとなく 冷え性の身体が 温まる 気がする。 スーパーには 1年を通して 長ネギが 売っているけど 春になると 自然と 買わなくなる。 冬じゅう食べて 満足している上 冬ほどには 身体が 長ネギの成分を 求めていない感じがして。 ただ 春でも 料理の風味づけに 少量の長ネギを 欲する ことはある

          【回文〆日記】 #33 青草のときめき

          【回文〆日記】 #32 春の見世物

          前回の日記も 桜のことを 書いたのだけど 時節がら また桜のこと。 4月の 2週目である 今週は 生活圏内の そこここで ソメイヨシノが 爆発するように 咲きくるっている。 たしかに みごとで きれいだけど あまりにも 体積がでかく 茫漠としていて 毎春 直視したいのか したくないのか よくわからない 気持ちになる。 せっかく 咲いているのだからと思って 意識的に見ようとすると 焦点が合わないような へんな感じになる。 この感覚は 子どものころから ずっと

          【回文〆日記】 #32 春の見世物

          【回文〆ショートショート】 #8 うぬぼれの一族

          美しい姿になる素因も 美を見抜く才能も 美を愛さずにはいられない習性も 最初から 僕の中にあるんだから 僕が 己の美しさに酔うのは 当然のことなんだ ナルシストが 嘲笑の的になるのは 知ってるけど DNAレベルのことなんだから 僕個人の力で 自己愛を 封じようとしたって 不毛な努力だと 知ってるんだ ギリシャだかローマだかの 昔話に出てくる ナルキッソスは もともとは 人間みたいな姿をしてたらしい あるとき 池に映る自分の姿に見とれて 見つめすぎて 正気を失い 池

          【回文〆ショートショート】 #8 うぬぼれの一族

          【回文〆日記】 #31 川べりの発光体

          3月下旬のある午後。 用事をすませて 普段はあまり通らない 川ぞいの道を 自転車で走っていた。 日暮れより だいぶ手前の時刻だったが 空はどんよりうす暗く 小雨が全身をしめらせた。 うらさみしい気持ちで ペダルをこいでいたところ ある地点にさしかかったときに 突然 視界がぱっと明るくなり はっとした。 色の濃い 早咲きの桜が 1本だけ ぽつんと。 ソメイヨシノには まだ早いこの時期に その木はもう 葉桜になりかけていた。 とはいえ 花にはまだ ボリュームがあり

          【回文〆日記】 #31 川べりの発光体

          【回文〆日記】 #30 くりさがりの暗算

          10年近く前のことだが 原付バイクで事故を起こした。 幸い誰も巻き込まず 自分が電柱にぶつかっただけだった。 通りがかりの人が通報してくれて 救急車で病院に運ばれた。 らしい。 頭を打って意識を失っていたので 後から聞いた話だ。 骨折などの大きなケガもなく 数日の入院で済んだのだが 家に帰ってきてから あることに気づいた。 買いものに行ってお金の計算をするときに 足し算はできるのだが 引き算ができないのだ。 正確に言うと 「繰り下がりのある引き算」の「暗算」 が

          【回文〆日記】 #30 くりさがりの暗算

          【回文〆日記】 #29 カニカマの復活

          おかえり! 待ってたよ! 久々に スーパーの売り場に現れた スギヨの 「ロイヤルカリブ」 石川県では 定番のカニカマだ。 年始の地震で 能登の工場が被害を受け 生産がストップしていたのだけど 3月に入り ようやく 復活を遂げたのだ。 カリブっ!いつ振りか? → かりぶついつぶりか ← そう 昨年末に買って 年始に食べて以来だから 2か月以上ぶりだ。 供給が途切れるまでは 冷蔵庫に常備していた なじみのカニカマ。 また会えたことが とてもうれしい。 カリブ不

          【回文〆日記】 #29 カニカマの復活

          【回文〆日記】 #28 回文修業の1年間

          年始に目標を立てることが 苦手だ。 長い期間 必ず続けると決めた途端 やる気がしぼみ 気がめいるタイプなのだ。 そんなわけで よっぽどの必要性に 駆られない限り 長期的な目標設定は しないようにしてきた。 しかし 2019年の正月に ふと 「1年間、1日1回文を作る」 という 目標が浮かんだ。 なにか目的があったわけでも 誰かと約束したわけでもなく ほんとうに なんとなくだ。 続かなかったときに 罪悪感を抱かないで 済むよう いつやめてもいい という前提で や

          【回文〆日記】 #28 回文修業の1年間

          【回文〆日記】 #27 お肉の祭典

          朝 折り込みチラシを見ていたら 目に飛び込んできた 「お肉の祭典」 という文句。 スーパーのチラシ界では 同じジャンルの商品を特集して 売り出す際 いちご「まつり」 鮮魚「大市」 などの表現を よく使っている印象だけど 「祭典」は あまり見たことが なかった。 その言葉の 重厚感・特別感は うるう年の2月末に ふさわしい気がした。 いつもは行かない スーパーだけど 「祭典」が気になり 行ってみることにした。 - - - - - - - - - - - - - -

          【回文〆日記】 #27 お肉の祭典

          【回文〆日記】 #26 奄美からの小包

          奄美大島在住の 友人夫婦からの 小包を開ける。 中身は 地元産の たんかん。 「今年は裏年で  顔がわるい子しか入手できず…」 お便りには そう書いてあったけど 私の生活圏では あまり見かけない 果物 見た目はどうあれ とてもうれしい。 鼻を近づけると 柑橘ならではの さわやかな香り。 さっそく いただく。 とにかく甘い。 でも ちゃんと酸っぱさもある。 すんごいジューシー。 薄皮ごと食べられる。 行ったことのない 奄美の 春のエネルギーが 心身に満ちる。

          【回文〆日記】 #26 奄美からの小包