百人一首復習ノート:現代語訳、英訳、解釈とその感想(八三、八四)
普段、現代語で短歌を詠んでいるのであって、文語に親しみたいわけでも、文語で短歌を詠みたいわけでもない。けど、永く日本人の体に染みついたリズムで、教養ある人が一度は親しんだ(無理やり覚えさせられた)歌に接することには、意味があることかもしれない。
教養としてではなく、自分の作歌の養分と作歌のテクニックという実利を期待して、いまさらながら百人一首を復習してみようと思う。情報は、手元にあった百人一首の本三冊から(『百人一首がよくわかる(橋本治)』『英語で読む百人一首(ピーター・J・マクミラン)』『百人一首 (平凡社カラー新書)(馬場 あき子)』)。
だいたい週一回、まとめている。一つのnoteには、2首ずつ取り上げる。2首ずつ取り上げる理由は、百人一首が、二人ずつのペアが50組あるという作りだから。どうせなら意味のあるペアの形でインプットしたい。歌をまとめて取り上げる作業は、連作を作るアイデアにもなるかもしれない。
八三.皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶとしなり)
世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
(よのなかよ みちこそなけれ おもいいる
やまのおくにも しかぞなくなる)
現代語訳
英訳
plain・tive /pléɪnṭɪv(米国英語), ˈpleɪntɪv(英国英語)/悲しげな、哀れな、泣き言を言う
stag / stˈæg(米国英語)/雄鹿、(特に)5 歳以上のアカシカの雄、(パーティーなどで)女性同伴でない男、利ざや稼ぎを目的に新株に応募する人
解釈
感想
世の中 "よ" 、鹿ぞ鳴く "なる" のところが今の言葉の意味合いだと変わっていて、おもしろい。 "よ" は詠歎なんだろうけど、呼びかけのように見える。文法的に間違った使い方を進んでやるわけではないけれど、詩を読んでいると、響きや字の形を優先した表現も多い。詩作したいと思う時に、短歌でそうした遊び方をしてみるのもおもしろいかもしれない。
八四.藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん)
ながらへば またこのごろや 偲ばれむ
憂しと見し世ぞ 今は恋しき
(ながらえば またこのごろや しのばれん
うしとみしよぞ いまはこいしき)
現代語訳
英訳
fónd・ly / ˈfɑndli(米国英語), ˈfɑ:ndli:(英国英語)/優しく、かわいがって、甘く、盲信的に
look back / lóok báck / 振り返って見る、(…を)回顧する、追憶する、しりごみする、うまくいかなくなる、後退する
harsh / hάɚʃ(米国英語), hάːʃ(英国英語)/耳障りな、不快な、どぎつい、ざらざらした、荒い、厳しい、苛酷(かこく)な、残酷な、無情な、とげとげしい
解釈
感想
老境の歌のように感じるけれど、実際には、三十代に詠まれたものかもしれないという歌。現代でも、ミッドライフクライシスのように、出世競争も終わり、会社員生活も下り坂に入った時、虚しさが訪れることがある。老境の歌を、今、私の年齢(48歳)くらいで詠んでみてもいいのかもしれない。
※引用図書の紹介
『百人一首がよくわかる』
国語の教科書にあるような、文法的に正しい訳ではなく、短歌の長さ程度の軽妙な日本語訳と、短い解説書。
『英語で読む百人一首』
百人一首の英訳。古語や現代語訳より、歌の情景が浮かぶものも多い。
『百人一首 (平凡社カラー新書)』
馬場あき子先生の著作。ただし、教養としての解説であって、歌の解釈は短め。
いい歌を詠むため、歌の肥やしにいたします。 「スキ」「フォロー」「サポート」時のお礼メッセージでも一部、歌を詠んでいます。