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美しい命たち

海は凪いでいた。
僕たちは、砂浜の裏手にある雑木林のあたりに
トンビがたくさんいる事を知っていた。

浜に降りる階段に腰をおろすと、すでに数羽が頭上を旋回している。
ポップコーンを手提げ袋から取り出すと、
数を増したトンビ達は わずかな海風を巧みに受け、
ゆったりと近づいてくる。
目と目が合う、近さだ…。

ポップコーンを勢いよく空に放り上げる。

翼を大きく広げ ゆるやかに舞うその姿は命にあふれ、
力強く神々しい魂たちの美しさに、僕は 口を開け見とれる。
突然その口に、ポップコーンが放り込まれた。
我に返りふり向くと、そこには悪戯っぽい笑みが…。

海は凪いでいた。
僕たちもまた、凪いでいた。


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