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「ナディアが群れを離れる理由」から読み解くスタートアップ企業のリアル

こんにちは。
HR Tech企業でカスタマーサクセスをしている、のん です。
このnoteは、人事のことを理解したい私が、100冊の人事関連書籍の読破を目指し、書籍から得た学びを発信するためのnoteとなっています。

人事に興味を持たれている方、人事になったばかりの方など、
ぜひ一緒に理解を深めていきたいです!

今回読んだ本は、ジョン・P・コッター/ホルガー・ラスゲバー著「ナディアが群れを離れる理由」です。

「現代組織が直面している問題と解決の糸口」が語られるたった140ページの寓話

「現状維持は衰退である」という言葉がありますが、組織が生き残り成長し続けるために変革が必要であることは、誰もが知るところかと思います。

著者であるジョン・P・コッター氏は、「リーダーシップ」や「組織変革」の分野で研究に基づいた新しい理論を提唱するなど、上記テーマにおける第一人者として世界的に知られている人物です。

1995年に、100社以上の変革事例を分析され、「企業変革の8つの落とし穴」に対応する変革実現のための8段階プロセスを生み出しています。

変革の8段階のプロセス(1996年版)

1.  危機意識を高める
2. 変革推進チームを結成する
3. ビジョンの策定
4. ビジョンの伝達
5. 社員のビジョン実現へのサポート
6. 短期的成果を上げるための計画策定・実行
7. 改善成果の定着と更なる変革の実現
8. 新しいアプローチを根付かせる

https://globis.jp/article/2239

しかし、現代の変化が激しい社会の中では、「8段階プロセスでは対応できない」とコッター氏は理論の見直しを図ります。
そうして、2014年に「2つの組織の必要性」と「8つのアクセラレーター」を説きました。

8つのアクセラレーター

1.  危機感を生み出す
2. 変革主導チームを築く
3. 戦略ビジョンと変革施策を策定する
4. ボランティアの数を増やす
5. 障害を取り除き行動を可能にする
6. 短期的な成功を生み出す
7. 加速を維持する
8. 変化を組織内に定着化させる

https://change-management-japan.org/2022/03/17/kotter-new-8-step-model/


本書の原作である「That's Not How We Do It Here!」は、2016年に出版されています。すなわち、上記の「2つの組織の必要性」と「8つのアクセラレーター」という大量の調査・分析の末にたどり着いた考えを、ぎゅっと140ページで、ミーアキャットの寓話に収めたのが本書なのです。

コッター氏が「寓話」という形式をとった想いについて、本書から読み取れる部分がありました。

「なぜこの形式にしたかというと、寓話は大きな問題を扱いながら、多くの人の役に立つことが可能なアプローチだからです。」

ナディアが群れを離れる理由 p.8

「この物語が伝えようとしている考え方や気づきは、何十年もの研究の積み重ねの成果を基にしています。でもここでそういう話を始めると、簡潔で示唆に富み、楽しくて有益、という本書の目的が台無しになってしまいます。」

ナディアが群れを離れる理由 p.10

論文や調査レポートのように、「学術的で、ボリュームのある文章を通して一部の人に届けるのではなく、より手軽に楽しく、多くの人に伝えたい。」それほど、今の時代に必要であり、現代を生きる人に考えてほしいテーマなのだというメッセージを感じます。

組織維持には不可欠な「リーダーシップ」と「マネジメント」の共存

本書を通して語られるのは、組織における「リーダーシップ」と「マネジメント」の本質です。

本書に出てくる組織は大きく2つ。
成長を続け、今や150匹とすっかり大きな組織となったナディアの群れと
創設されてからまだ4ヶ月、たった12匹のレーナの群れです。

順調に発展してきたナディアの群れでは、各ミーアキャットの役割が明確であり、それぞれの業務の効率化がなされています。綺麗にルールが整えられたその組織は安定しているように見える一方で、新生物による攻撃や災害など、新たな変化に対応できない状態が続き、組織が回らなくなっていました。

そんな時、ナディアはレーナの群れに出会い、感銘を受けます。
新しいことが起これば、誰かが主体的に手をあげ、新しいアイデアを出し、「まずはやってみよう」と行動に起こすのです。
「これが理想の組織だ!」とレーナの群れでその組織運営を学ぶナディアでした。しかし、レーナの群れも徐々に大きくなっていった時、ルーティン的に必要不可欠な仕事が行われていないがために、組織が回らなくなっていくのです。

ナディアの群れが体現するのは「マネジメント」であり、レーナの群れが体現するのは「リーダーシップ」でした。
そして、大手企業や中小・ベンチャー企業関係なく、多くの組織にとってはこのどちらも重要なのです。
なぜなら、それなりの人数がいれば、組織の中の人たちや複雑化していく情報・ルールを整えながら、変化への対応や成長するためのイノベーションを起こすという両軸の共存なしに組織が維持されていく術はないのです。

「リーダーシップ / マネジメント」のマトリクスから読み解くスタートアップ企業のリアル

あらゆる組織で「リーダーシップ」と「マネジメント」の共存が必要な中、本書を読めば、ナディアやレーナの群れを自分が所属する組織に投影してしまう人が多いのではないでしょうか。

私もその一人で、自分の組織に投影して考えるところがありました。
私は70名のスタートアップ企業に勤めています。
ナディアとレーナの群れで起こっている具体事象にはそれぞれに共感するところがありつつ、組織としてどちらの群れにもなりきっているわけでも、両群れの良いところを共存させられている訳でもないなと感じながら読んでいました。
本書には、「リーダーシップ / マネジメント」のマトリクスが整理されています。

ナディアが群れを離れる理由 p.129

初めに見て感じたことは、「弊社には左下のタイプと右下のタイプの人がいるけど、右上の組織になっているわけではないな。」ということでした。
これは個で見た時には、①や④に属するところがあるのですが、組織で見た時には、③に入っているということなのだと思います。
言葉で「崩壊」と書くと少しショックですね。笑
ただ、多くの組織が③にいるように感じるところもあったりします。

この図のポイントとして、①と④を介さずに②にはいけない特徴があります。
すなわち、「リーダーシップ」と「マネジメント」の共存を実現する②へ向かうためには、より今組織に必要な要素を考え、施策を打つ必要があります。

今回、先輩2人にこの図を持って話を聞きにいきました。
これまで自社内でも、①を磨く施策・④を磨く施策が行われてきていました。

ただ施策に取り組んだだけでその組織ができるほど簡単なものではなく、
私の組織に限らず、
「①でやってみよう、あぁこの施策のために④の要素が先に必要なのか」「④でやってみよう、でも整い切らないなぁ」みたいなことを繰り返しながら組織を作っていっているのだと感じます。

これから自社はどのルートを辿るだろうか。。。
そんなことを考えさせられたマトリクスでした。

皆様の組織はいかがでしょうか?
マトリクスではどこに位置していそうか・これまでどこに向かうためにどんな施策を打ってきたか、マトリクスを使いながら整理してみると、今後組織が進むべき方向を探る参考になるかもしれません。

本書の最後には、8つのアクセラレーターの解説もあり、自社で行われてきた施策が8段階のどこまで進んだのか、という視点も面白く、また別の機会にnoteに書ければなぁと思ったりする次第です。
マトリクスで言及した、①を磨く施策・④を磨く施策含め、本書籍の理論で捉える具体施策についてご興味ございましたら、Twitter DMにてご連絡ください!

That's Not How We Do It Here!

「That's Not How We Do It Here!」は、原作タイトルです。
「ここではそのようなことはしません!」が直訳です。
これは「変われない組織」で、イノベータ人材が新しいアイデアの提案や行動を起こした際に返ってくる「a soul-crushing response(イノベーターが閉口してしまう返答)」として表現されています。

物語の中で「モロ」が発していた言葉が印象に残っています。

「新しいアイデアを突っつくのは、たやすいことか?特にそれがこれまでと全く違うアイデアだったら?」
「当然、たやすい!」
「異なる状況では、異なるアイデアが必要になるのではないだろうか。おそらく非常に異なるアイデアが…」

ナディアが群れを離れる理由 p.108

私自身、新しい施策に「こうなったら?」「ああなったら?」と懸念点が多く出てくる場面があるなぁと感じました。
モロの言う通り、まだ誰もやったことのない新しいアイデアに対して、懸念点を上げる(突っつく)のは非常に容易いことです。

懸念点をあげることが問題と言いたいのではなく、
「その懸念点を払拭できるアイデアはあるだろうか?」まで考えることが必要なのではないでしょうか。
その姿勢は、抜け出さなければいけない現状を変えようと生み出されたアイデアに対する寄り添いであり敬意なのだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!
まだまだ拙い文章・内容ではございますが、引き続き発信していきますので、また立ち寄っていただけると嬉しいです^^

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