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メンタルヘルスの薬と、薬以外の治療について私が医師として思う事

ニュージーランドで医者をしています。
メンタルヘルスに興味があり、プロのライフコーチやカウンセリングの仕事もしています。

私は総合診療科の医師なので、私のところには、様々な問題を抱えた患者さんが来ます。
その中でも、自分の興味があるメンタルヘルス関係の問題になると力が入ります。

うつ病、不安症、ストレスで悩む患者さんは、ここでも多いですね。

患者さん中には
最初から「薬が欲しい」と言って受診する人もいるし、
「薬はできるだけ避けたい」と言う人もいます。
「どうしたらいいかわからないから来た」と言う人もいます。

「薬が欲しい」と言っても来た人にも、私は常に「薬以外のマネージメントの話しをしてもいいか」と訊きます。

患者さんの中には「他の事には興味がない」とか「カウンセリングはした事あるけど効かなかった」と言って、薬以外の話しを拒否する人がいます。

その様な場合は、もちろん患者さんの意思を尊重して、薬の話に重点を置く事になります。
(嫌がるものを押し付けても、効果は期待できないので)


もちろん、薬が重要だと思うケースもあります。

例えば、自殺企図があるとか、気分がすごく落ち込んでいてベッドから出る事も難しい。
そういう場合だと、セルフケアとしての運動、健康的な食事や友達と会ったりしてサポートやコネクションを感じるという事を始めるのが難しい。

そんな事ができるレベルまで、早く精神状態を改善するには、薬が役に立つことは良くあります。

ただ薬は、根本的に状態を治癒するわけではありません。
抗生物質で感染を治療するのと、抗うつ剤、抗不安剤や睡眠剤が症状を緩和するのは根本的に違いますよね。

例えば、あなたが、ちょっとおかしな歩き方をしていて、
そのせいで足腰が毎日痛いとします。

この痛みをなんとかしたい時、
あなたなら、どうしますか。

もしも痛みが日常生活に影響を与えていたら、薬を飲んで痛みをコントロールする意味はあると思います。

ただ、その他のマネジメントを考慮しないで、痛み止めを飲み続けるのは
どう思いますか。

この場合、歩き方を変えなければ、多分痛みは続くでしょう。
もしも今の歩き方を省みて、足腰に負担の少ない歩き方に変えれば、痛みは無くなる可能性があります。
これにはプロフェッショナルの助けがいるかもしれません。
痛みが無くなれば、痛み止めを飲む必要もなくなります。

それでも、ただ痛み止めを飲み続ける人も沢山います。
効果がすぐ自覚できるし、薬を飲むだけで簡単だから。

歩き方を矯正するのは時間がかかります。
プロに診て貰ったり、新しい靴を買うのに、お金もかかるかもしれない。
しばらくは、自分の歩き方に意識を向けないといけないので
エネルギーも使います。

あなたなら、どうしますか。

私はメンタルヘルスも、これと同じだと思っています。

もしも、今まで自分が培って来た考え方や行動の仕方が、自分の精神状態に影響を与えていたら、それを省みない限り、自分のメンタルヘルスは根本的には改善しないかもしれない。
そのため、メンタルヘルスの薬を飲み続けることになる。

でも自分の考え方や行動など、現在の自分のメンタルの部分を省みて
それを変えていく努力を続けたら
いつか、薬を飲まずにマネージできる様になるかもしれません。

「仕事が休めないから、とにかく夜眠れるための薬が欲しい」とか
「気分の変化が激しくて、家族関係が悪くなっているから、気分が落ち着く薬が欲しい」とか。

その気持ちはよくわかります。

忙しい現代社会。
時間もお金もあまり余裕がないから、一番早く「良くなった」と感じられる治療をしたいですよね。

でもいつまで経っても「薬に頼っている」感は拭いきれない。
時々「一度薬をやめてみたのだけれど、またイライラしてきて薬を再開しました」という患者さんがいます。

もちろん、イライラとか落ち込みとか不安とか起こった時に、自分自身が何をできるか、それがわかっておらず、そのスキルが無ければ、
(やっぱり、薬が無ければやっていけないなあ)という気持ちが、何度も強化されていく。
自信が更に無くなる。
そして、また薬を飲み始める事になる。

このため、一度薬を飲み始めると、そのまま薬を飲み続ける人は多いです。

歩き方がおかしい人が、同じ歩き方をして足腰の痛みを感じ続ける様に、

考え方のパターンや行動が上手く機能的に働いてなくて、気持ちや感情に変化があった時に、自分でなんとか出来るスキルに欠けていると、
いつまでも、メンタルが上手くいかないというケースは多いです。

もちろん、全ての人が薬に頼らずにやっていける訳ではないかも知れません。
でも、多くの人はそれができる可能性があります。

自分一人では難しいかも知れません。
時間とエネルギーがかかります。
(お金もかかるかも知れません)

でも、自分で自分をコントロールできるという自信が出来たら
何にも変え難いです。

何があなたに正解であるかは、ご自身が決める事です。
ただ「どうしたら自分で自分をコントロールできるという自信ができるかな」と興味が出てきたら、それが変化への第一歩です。

かかりつけの医師に相談してみて下さい。
色々な本やビデオも簡単に入手できる時代なので、自分で模索を始めるのも良いと思います。
もちろん、プロのカウンセリングを受けるという手もあります。

私もオンラインでコーチングをしています。

目を向ければ、色々とサポートがある世の中です。

再度繰り返しますが、全ての人が薬なしでマネージ出来るわけではないかも知れません。
また、薬を止めないといけないわけでもありません。

でもあなたが「自分で自分をマネージする能力を高めたい」と思えば、それは可能なんです。
その可能性を探るのも探らないのも、あなた次第です。

(注: 現在医師を受診している方は、ご自分の責任で、医師などのプロフェッショナルに相談して下さいね。)














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