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プロダクトマネージャーが「つくらない」判断をするとき

こんにちは、プロダクトマネージャーのたけまさです。
プロダクトマネージャー Advent Calendar 2022の18日目の記事です!
プロダクトは中長期で大きな価値をユーザーに届けることを目指します。

開発の現場では「つくる」判断以上に、無数の「つくらない」判断と向き合うことになります。今回は日常的に発生する「つくらない」判断を通して、なぜプロダクトをつくるのか?を考えます。

1.つくる以前の状態のとき

PM「いまプロダクトをつくるのはダメです。なぜなら…」|
そもそも事業の段階がプロダクトをつくる以前の状態です。ユースケース、事業戦略、競合との違いなどの不在が論点です。

プロダクトをつくる = 事業が伸びるではない

・誰の何の課題をどのように解決するのか?
・いまウチがやる理由と勝てる理由はなにか?
・それは顧客に現在と比較して、いくら分の効果をもたらすのか?
・そのもたらす効果によって、顧客からいくらの対価をもらえるのか?
・そのために提供コストは、いくらかかるのか? など

商売の仕組みを説明できない場合、プロダクトを作るには早い状態です。プロダクトさえあれば事業が立ち上がる、というワンチャンはありません。

この段階で大事なのはプロダクトがあることではなく、スケールするための顧客、課題、解決法を見つけることです。

すでに作ってしまっている場合の対策

中途入社した1人目PMあるあるです。「作りたい」「作らないとわからない」と考える経営者やメンバーと目線を揃える必要があります。フラットに現状、あるべき、カネの話ができる関係性が必要です。

PM業務にこだわらず、PMFと時間を稼ぐために何でもやるしかない
・不確実な開発投資は控え、バーンレートを抑えて時間を稼ぐ。
・成長を実現するユースケース、グロースドライバーを特定する。
・採用や業務委託でPMFを実現可能なレベルの人を集める。など

作る前に出来ることはたくさんある

何よりも成長を実現するユースケース、グロースドライバーを特定が先決です。PMFに向けて実行可能なことは、完全動作するプロダクトを作らなくても紙芝居やモック、オモテだけ整えたプロダクト風人力オペレーションなどたくさんあります。

プロダクトとは事業の上手なやり方を型化して、スケールさせるためのものです。プロダクトあれば事業が立ち上がるは順番が逆です。


2.つくる意味がブレるとき

PM「ウチが本当にやるべきことですか?なぜなら…」|
コンセプトとアクションの一貫性の話です。顧客にこれまで積み重ねてきた体験、事業の構造上の強み、それらのギャップが論点です。

唐突ですが先日いただいたお土産のドーナツがおいしかったので、ドーナツで例えてみたいと思います(笑)。

これまでのコンセプト
・お店のドーナツは1種類だけ。1つ200円で販売。
・A県産のこだわりの大豆と豆乳とおからが原料である。
・味は「懐かしさ」をテーマに、現代にとっての素朴な味を追求している。

顧客からの要望
・もっといろんな味のバリエーションのドーナツを食べたい
・流行りの味付けにしてはどうか
・コーヒーも一緒に販売してほしい

要望はどれも間違っていません。お客様はそのお店が好きだから、もっと楽しみ方が広がると嬉しいな。という要望です。

コンセプトと施策の整合性

コンセプトのブレには顧客体験の一貫性だけでなく、生産性にも大きく負をもたらすケースがあります。上記の要望を叶えたときに起こる負を考えてみたいと思います。

コンセプトのブレがもたらす負
・懐かしいあの味がたべたい、という第一想起の消失
・商品数の増加による、製造や提供に関わる社員教育コストの増加
・製造オペレーションの多様化、複雑化による生産性低下
・原材料の種類が増えスケールメリット低下によるコスト増加
・コスト増加と生産性低下で利益率が低下
・結果ドーナツの販売価格を上げる or 品質を下げる選択を迫られる など

誰の課題を解決するためのプロダクトか。その要望を自分たちがやる意味と合理性は何か。コンセプトのブレは顧客体験の文脈だけでなく、カネの流れにも影響がないか注意が必要です。


3.つくる価値が低いとき

PM「やる価値がないです。なぜなら…」
これは投資対効果の話です。プロダクトの開発と運用にかかるコスト、リターンとして得られる利益や効果が論点です。

「利益」と一言でいっても、何で最適を考えるかという話もあります。継続的に利用いただくためのバグ修正や、開発効率を高めるためのリファクタリング、金銭的な利益には繋がらないけど共感を生むような仕組みなど、利益は目先だけでなく全体最適で考えることも必要です。

営利活動では利益をもたらさない課題や要望に対して、貴重な資金やメンバーの時間を使う理由がありません。

・顧客から新たに対価をいただける課題解決ではない
・多少不便でも代替手段が他にある
・損益分岐を超える見通しがない

このあたりの条件を満たすものは、典型的なつくる価値の低いものです。
「つくらない」判断をか、価値を高める再プランニングが必要です。

つくる価値を高める2つの方法

投資対効果を高める方法はシンプルにこの2つです。

投資対効果を高める方法
・コストそのまま、リターン(効果)を大きくする
・リターンをそのまま、コスト(工数)を小さくする

大事なのは1つの解決手段に固執しないことです。達成したいゴールには基本的に「程度のグラデーション」があります。松竹梅プランを用意して、複数のROIを検討するのがおすすめです。その機能が寄与する時間軸のなかで適切なプランを選びましょう。以下は例です。

開発プロセス効率化でコストを抑える方法は、過去の記事をご覧ください。


4.つくる順番があるとき

PM「つくるけど今ではないです。なぜなら…」
これはシンプルに順番の話です。優先度と開発順序の2つが論点です。

優先度の話

事業計画やプロダクト開発計画に基づいて、「何からつくるべきか?」を複合的に考え、優先度の判断が必要があります。

・事業計画と紐づいた課題の重要度や緊急度
・プロダクト開発による投資対効果
・プロダクト品質の現状とあるべき(狩野モデル)など

優先度については、12/5のアドベントカレンダーでTakuya Asakoさんの記事で詳しく事例が公開されています。

開発順序の話

ある機能の実現には、それを支える複数の仕組み、依存関係の強弱、効率のよい順序があります。開発は「空を自由にとびたいな、はいタケコプター!」とはいきません。

開発順序の整理例
・空を自由に飛ぶ、てどういう状態でしたっけ?
・その状態の実現には、どんな仕組みが必要でしたっけ?
・その仕組みは、どんな機能の組み合わせてで成り立つのでしたっけ?
・それぞれの機能は、どんな技術で実現するのでしたっけ?
・その開発の中で重要な支配的な要因てどれでしたっけ?
・それらの機能の依存関係てどうなりますっけ?
・それふまえて、どんな開発の順番が適切でしたっけ?

開発順序の見える化
これらを見える化した図などを作ると便利です。私のいた環境では、Civilizationというゲームの文明開発の技術ツリー、Final Fantasyで魔法を覚えるためのスフィア版、カレーの作り方などに例えてマップを作成しました。

これはPMやエンジニアが開発するときの状況整理にも使えるのですが、社内のステークホルダーにも「なぜ今ではないのか?開発に順番があるのか?」を丁寧に説明することができます。


まとめ

誰かに対して「NO」を表明することは、それなりにストレスがかかります。その役割を担うPMてちょっと損な役回りですよね(笑)。

プロダクトマネージャーの過不足ない判断が、最速でお客様の課題を解決する。事業の成長に貢献し、結果ステークホルダーみんなの幸福につながる。そんな矜持をもって「つくらない」判断と向き合っていきましょう!

今年のAdvent Calendarも素敵な記事がたくさんあります。
ぜひご覧ください!


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