マガジンのカバー画像

侠客鬼瓦興業

94
一条吉宗くん、18歳、ごく普通に育った彼の就職先はなんと関東でもなのあるテキ屋、鬼瓦興業だった…。ちょっとこわいけど楽しい人たちと吉宗くんとの笑いあり、感動あり、涙あり、ちょっと… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

侠客鬼瓦興業 1話「侠客吉宗くん誕正」

侠客鬼瓦興業「あらすじ」超がつくほど真面目で真っ直ぐで、いまどきめずらしい天然記念物のような青年の一条吉宗くん、彼が求人広告で就職した先は関東でも有名なテキ屋一家の鬼瓦興業だった。その業界の怖いけど楽しい人たちと謎の美少女めぐみちゃん、そして彼女の恐怖の父親、数々の苦難をその天然キャラで乗り越え成長していく吉宗くんと、おもろい面々の笑いあり、恋愛あり、感動あり、それにちょっとエッチもありの物語。 侠客鬼瓦興業第一話「侠客吉宗くん誕生!」侠客、強気をくじき弱気を助ける義侠の

侠客鬼瓦興業 84話「消えためぐみちゃん」

「めぐみちゃーん、めぐみちゃーん!」 銀二さんの超恥ずかしい仁義現場、いや野トイレ現場から離れた僕は、再びめぐみちゃんを探しながら国道沿いにある小さな薄暗いガードにたどりついた。 「あれ?こんな所に・・・」 中を覗き込んだ僕は (なんだろう、このいやーな感じ?) 直感的にその先で、めぐみちゃんが何かの危機にさらされている、そんな気配を感じ取った。 「めぐみちゃんが!?この先にいるのか?」 それはまさしく彼女に対する愛のテレパシーだった。僕は夢中でガードをぬけ国道の反対にある

侠客鬼瓦興業 83話「めぐみちゃんが危ない!」

「おう三波、わりゃー調子のええこと抜かしおって、さっきから川崎の町くるくるまわっとるだけやないか!」 保育園バスの後部座席にどっかと腰を下ろした西条竜一は、不機嫌な顔で、イケメン三波に声をかけた。 「あの・・・、もう少しで何とかしますから」 「何とかって、われ、めぼしい女のところ電話しても全部断られとるやないかい」 「いやあの、たまたまみんな用事があったみたいでして、ははは」 「何がたまたまやアホ、えらそうにイケメンとか抜かして我は顔だけで中身は空っぽなのがバレバレなんや」

侠客鬼瓦興業 82話「真理恵さんとめぐみちゃん」

(めぐみちゃんが・・・、めぐみちゃんが・・・) 僕は涙をポロポロと流しながら、遠ざかる彼女の後姿を見つめていた。 やがて信号が赤から青へ、それでも呆然とたたずんでいる僕にお慶さんが 「何をやってるの、早く追いかけなさい!」 「で、でも、僕は彼女を裏切ってお風呂屋さんへ」 「それでも何でも、早く追いかけて、めぐみちゃんを引き止めるのよ、どんな言い訳でもいいから、とにかく話をするの!」 「あっ、は、はい!」 お慶さんの言葉で、僕は慌てて交差点を渡っていった。  そんな様子を見てい

侠客鬼瓦興業 81話「吉宗くん・・・最低!」

ここがなぜデンジャラスな場所か? それは背後にそびえたつピンクの建物、そう僕が昨日スケート場と間違えて入ってしまった高級ソープランド『ハメリカンナイト』の前だったからなのだった。 (お慶さんと追島さん、そしてユキちゃんがまた家族に戻れる…) その事で頭がいっぱいになっていた僕は、迫りくる不吉な影に気づくことなく、めぐみちゃんと二人手を取りあって喜んでいた。 「それじゃ急いで戻って、このこと追島さんにお話しよう、吉宗君!」 「うん、そうだね急ごう…」 「あらあらヨッチーちゃん

侠客鬼瓦興業 80話「兄貴の武勇伝とお慶さんのチャンス」(2024年5月21日更改)

(や、やめろ鉄、これ以上何を言うつもりなんだー!) 「デへー!実は兄貴なんて、廊下で豪快に滑っちまうんすよー!」 (だーーー!このバカ昨夜のソープランドでの事を、ついに言ってしまったー!)  「ねえ、めぐみさん、すごいっしょー、兄貴マジすごいっしょー!」 (鉄ー、お願いだからもうやめてくれーー!!) 僕は心で叫ぶと、顔面蒼白になりながらめぐみちゃんの様子を伺った。  ところが、めぐみちゃんは訳の分からない顔で 「廊下で滑る?」 「そうっす、兄貴ほどになると、部屋から抜け出して

侠客鬼瓦興業 第3話「謎の面接女性、めぐみちゃん」

『子供たちに夢と希望を与える仕事』 そう書かた求人広告に目を輝かせた僕は、疑うこともなく意気揚々と面接に向かった…。しかしその結果、僕はあやまって武州でも名の通ったテキヤ一家、関東鬼瓦興業へ就職してしまったのだった。 そして面接で出会ったあの可愛い女の子にも会えることなく、僕はダボシャツ姿にパンチパーマという悲しいいでたちで、会社の隣町の縁日で仕事をしていた。 「おらー、吉宗ー、なに泣きっ面でぼーっとしてんだ、砂糖がこげるだろうが…」 銀二さんの声にハッとした僕は、目の前

侠客鬼瓦興業 2話「鬼瓦興業…?」

アジアチャンピオンのもと、6ミリ4ミリのみごとなパンチパーマ頭に変身させられてしまった僕は、ショックのあまり涙を流すことすら出来ず、ただ呆然と銀二さんの後を歩いていた。 「あっ、あのー銀二さん…、一つだけ聞きたいことが?」 「あん、なんだ?」 銀二さんはタバコに火をつけながら振り返った。 「あ、あのー、僕うっかり面接の時、仕事の内容聞き忘れてしまったんですが、鬼瓦興業の仕事っていったい…」 僕は思い切って銀二さんに聞いてみた。 「うちの仕事?何いてっんのお前……ぶっ!」 「

侠客鬼瓦興業79話「恐怖!ハメリカンナイトのデンジャラスナイト」

まさに連夜のデンジャラスナイト・・・ 昨夜に続いて今夜も、ハメリカンナイトのデンジャラスな夜が、僕に襲い掛かってこようとは 「鉄君って、こういう所来たことあるの?」 「えっ?」 「ねえ、もしかしてあるんじゃな?銀二さんと一緒に来たとかさ」 「あ・・・、あの・・・、その・・・・・・、あ~だははは~」 恐怖の時限爆弾、鉄はめぐみちゃんの質問にほっぺをピンクに染めながら、高級ソープランド、ハメリカンナイトの建物をながめていた。 (うあ!鉄、バカ何て顔を!!それにめぐみちゃんもどう

侠客鬼瓦興業78話「沢村の本性と追島さんはゴリラ以下?」

堀の内、喫茶慶のテーブルでは深刻な表情のお慶さんと、いらいらしながらタバコをふかす沢村研二の姿があった。 「ふー!」 沢村は落ち着かない顔で煙を吐きだすと、お慶さんをぐっと睨みながら、タバコを灰皿に押し付けた。 「どっ、どういうつもりなんだ、婚約を解消して欲しいって?」 「ご、ごめんなさい」 お慶さんは静かに頭をさげると 「あの、ユキのことで・・・」 そう言ったまま、言葉をつまらせた。 「ユキちゃんの?それってどういうこと、ユキちゃんなら僕の子として一緒に暮らすって、そう約

侠客鬼瓦興業77話「イケメン三波vs追島さん」

「ぐわっ、いててて……」 ひばり保育園では、追島さんに腕を締め上げられた、イケメン三波が苦痛の顔を浮かべていた。 「ふざけやがって、母親が病気だぁ?見え透いた嘘つきやがって」 「うあー痛い、痛い痛い痛い……!た、助けて!」 「何が助けてだ、この小僧!」 追島さんは、さらに三波の腕を絞り上げると、その手からお金の入った封筒と取り上げた。 「祭りで見た時、どこかで見た面だと思ったら、てめえ西条の舎弟だった小僧だな」 「!?」 「西条は何処だ?ここにツラ出してた事は、分かってんだ、

侠客鬼瓦興業76話「爆弾!鉄とソープと人生最大のピンチ!!」

「追島さん、どうぞこちらへ・・・」 春菜先生に案内され、追島さんは保育園裏の入り口へたどりついた。 「ユキちゃん、ここから入った奥のお部屋で寝てますので、ちょっと待っててください」 「あ、あの、先生」 「はい?」 「やっぱり、俺みたいな父親会わないほうがいいっす」 「何をおっしゃってるんですか、ユキちゃん本当に追島さんに会いたがってるんですよ」 「で、でも、先生・・・」 「私でしたら心配いりませんから、さあ」 春菜先生は優しく微笑むと裏口の扉を開けた、しかし、追島さんはその

侠客鬼瓦興業74話「ソープランドに行くなんて許せない」

どれくらい泣いたか・・・、僕が我に帰ったとき、奥にいた数名のお客さんの姿はなくなっていた。 「あ!」 思わず飛び出した僕の声にお慶さんが 「あら、やっと泣き止んだのね、えっと吉宗くんだったっけ」 「す、すいません」 「ふふふ、まったく面白い子ね、君って」 「お、おもしろい・・・ですか?」 「面白いじゃない、昨日の縁日でもそうだったけど、何ていうか心が熱いっていうか、ふふふ」 お慶さんはうれしそうに僕を見た後、隣のめぐみちゃんに 「ところで、さっきから気になってたんだけど、めぐ

侠客鬼瓦興業73話「追島ちゃんとお慶ちゃん」

「あなたは、追島さん!」 「あ、すいません・・・、ちょっと野暮用で通りかかったもんで」 春菜先生に見つかってしまった追島さんは、照れくさそうに頭をかいた。 「野暮用ってユキちゃんに会いにいらしたんじゃ無いんですか?」 「ユキに?いや、だってこんな夜分にどうして?」 「どうしてって?ユキちゃんが夜間保育で中にいることをご存じだったんじゃ?」 「夜間保育?」 追島さんはいっしゅん戸惑いの顔をうかべた。 「あ、はい・・・、お母さんお店をオープンしたばかりで忙しくて、ここ数日ユキちゃ