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4年目の「中つ火を囲む会」〜息は吐かなきゃ吸えない 【週刊新陽 #156】

新学期が始まり、3週間が経とうとしています。

習慣化の法則として「3日・3週間・3ヶ月」などと言われますが、この時期はやっとペースが掴めてくる一方、慣れや疲れも出る時期。連休となる来週までもうひと踏ん張りです。

そんな3週目を迎える直前の4月19日(金)の午後、『中つ火を囲む会(通称:中つ火)』を行いました。


「自分らしさ」とは

多様性を尊重する学校づくりと高校教育の再創造に挑戦している新陽が、教職員のリフレクションと対話を通した学びの場として、2021年4月から行っている中つ火。

主題となるテーマや切り口、対話の型などは毎回変わるのですが、年度の最初に行う中つ火だけは毎回『#(ハッシュタグ)型の相互理解』をテーマに、互いを知る対話を行うのが恒例となっています。

今年も株式会社リクルート HITOLAB(ヒトラボ)の福田竹志さんと21世紀学び研究所の熊平美香さんにご協力いただけることになり、今回は福田さんから事前課題が出されました。

今回は「#(ハッシュタグ)型の相互理解」というテーマで実施します(4回目!)

そこで以下の3点について事前に言語化し、メモなどに書き留めて当日の場に出せるように準備をお願いします。ちなみに#とは、その人やコトを表すタグのようなものです。
例)#犬好き、#放浪癖、#細かいことが気になる、など

1)自分の得意技や特徴にタグ付けすると何でしょうか。3つ以上あげてください(長所/短所・ 仕事/プライベート、どんなことでも)

2)「新陽高校」にタグ付けするとすれば何でしょうか。3つ以上あげてください

3)以前からの変化を表すと何でしょうか。ご自身のことでも、前職や新陽高校に関することでも
例)#◯◯ができるようになった、#◯◯が変わった、 #昨年の自分に言ってあげたい◯◯、など

そして迎えた当日。福田さんにリモートでファシリテーションしていただきながら、新陽の教員はフリーアドレスの職員室に集まって対話しました。

まず、事前に考えておいた自分の得意技や特徴の#(ハッシュタグ)を、エピソードと共に4〜5人のグループでシェア。一人が話している時、他のメンバーはジャッジせずに聴き、感想や質問を返します。

次に、新陽高校の#(ハッシュタグ)も同様にシェアしていきます。自分らしさの#は I(私)の視点、新陽らしさの#は We(私たち)の視点です。

自分らしさは唯一絶対でなくてもよい、また、自分が「自分らしさ」をわかっているとも限らない、と福田さん。

各グループを覗いてみると、自分のこと、生徒や同僚など学校のことを語り合う中で、新しい先生との共通点が見つかったり付き合いの長い先生の新たな一面を発見したり、一つ一つの話の繋がりと深まりが生まれていました。

未来を見つめて変化を振り返る

休憩を挟んで後半は、視点に時間軸(time)が加えられました。

前半と同じグループのメンバーで、「以前と比べて自分自身が変化したことや新陽が変化したこと」を共有すると、仕組みやルールなど目に見える変化をあげる人もいれば、自分の感情や生徒の価値観など内面的な変化に言及する人も。人との関係性の変化や、自分や周りの成長に気付いた、という意見もありました。

最後に、福田さんから投げかけられたのは「1年後、起こっていて欲しいことは?なぜそう願うか?」「逆に1年後、起きてほしくないことは?それを回避するために考え得ることは?」という、未来に向けた問い。

生徒の様子、学校の状況、働き方など、これもまた様々な切り口でたくさん意見が出ました。中つ火では評価・判断せずに聴き合うことを大事にしているので、お互いの多様な価値観が出やすいと感じます。

この「何を言っても大丈夫」な雰囲気が、対話においてはとても大切です。ポジティブな話もネガティブな話もどちらが良い悪いということなく、どちらもあって当たり前。

それをそのまま受け止めて、互いを知ることが、未来をつくる足固めとなっていくのだと思います。

なお、よくワークショップ等で行うチェックインとチェックアウトを、中つ火でもよくやります。

今回もグループに分かれて、まずはチェックイン。「いまの気持ち」を一人1分程度、心の準備ができた人から話してもらいました。すると一斉にあちこちで声が出て、職員室の空気が熱を帯びました。

この日は、通常時間割が始まった最初の週の金曜日。新任の先生方はもちろん新陽歴が長い先生たちも、新しく受け持つ生徒たちとの関係づくりが始まったばかり。また今年度は、ショートホームルームや授業の時間もリニューアルし1日の過ごし方のペースも変わった中で、誰もが緊張度の高い1週間であったことは間違いありません。

福田さんからも「息は吐かないと吸えないですから」と。

チェックインで一気に息を吐き出したことで、そのあと互いの声を聴く余裕やじっくり考える余裕が生まれたようでした。

研究と修養

『学習する組織』に取り組んで4年目。その象徴的な場でもある中つ火について聞かれたり視察を依頼されたりすることも増えました。

視察にいらした方によく説明するのが「中つ火を囲む会は、職員会議でも教員研修でもないんです」ということ。フラットな関係性の中で共感的・共創的に対話する場であることを大切にしているので、既存の会議や研修という枠組みを取っ払って捉えていただきたくて、そのようにお話しています。

なお、参加する時の心構えというか、ルールのようなものが共有されていると、場づくりがしやすいと感じます。この日も福田さんが、以下の3つのマインドを示してくれました。

・違いを味わう
・答え(一つの正解)を出す場ではない
・向き合わず、同じ方向を向いて

ちなみに研修とは研究修養の両面からなるもの、と最近知りました。学校教育法(第9条)には「教員は・・・絶えず研究と修養に励み」とあります。

研究とは、他者(児童生徒)をより良くするためのもの。授業研究に代表されるように、生徒の学力や生きる力を育むにはどうすれば良いか探り、専門的な知識や技能を高めるために行うものです。

一方、修養とは自分自身(教員)が対象。自分を磨き高め、自己研鑽や自己形成に努めるために行うものだそうです。

だとすると、中つ火こそ研修と言えるかもしれません。4年目に入った中つ火の初回は、先生一人ひとりのマインドセットの変化や組織としての対話力の高さなど、3年間の研究と修養の成果を感じた2時間半でした。

【編集後記】
先日、部屋を片付けていたら2021年4月(校長に就任したばかりの頃)のメモが出てきました。「時間はかかるもの、焦らない」とあり、なぜそんなことを書いたのか自分でもよく覚えていませんが、今となってはその通りだなと思います。「時間はかかるもの、でも必ず変化は起きるから大丈夫」、3年前の自分にそう言いたい気分です。

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