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ホスピタリティは「おたがいさま」 【週刊新陽 #88】

今号のテーマはホスピタリティです。でもその前に・・・

先週の『週刊新陽』で『未来へ投資しよう〜12月は寄付月間』という記事を書きました。実は、それを読んだ卒業生がすぐに寄付のアクションを起こしてくれました。

大学生になったばかりの彼が寄付してくれた3000円の重みを感じながら御礼のメッセージを送ると、こんな返事が届きました。

自分を成長させていただいた新陽に何か感謝の気持ちを形にできないかと思っていた中で、先生のnoteを読んで、今回の行動になりました。
今できる精一杯の金額でした。学校法人に寄付ということで、様々な書類を発行しなければならないというのを何かしらで知っていたので、この金額では迷惑にならないかすごく悩みましたが、3000円以上の寄付で優遇措置が広がるという文を読み寄付しようと決意しました。
これからの新陽の生徒がより豊かな、人物多様性な環境で本気で挑戦できるように、陰ながら応援しています。

(ご本人の了解を得て一部抜粋し掲載しています)


ホスピタリティ・マインドとは「相手の力になりたいと思う思考パターン」のこと。この卒業生の寄付こそ、「力になりたい」というホスピタリティ・マインドを行動に移してくれたものです。

このホスピタリティを受け取って嬉しかったのと同時に、「人物多様性な環境で本気で挑戦できる母校」の校長としてホスピタリティを発揮したいと感じました。

ホスピタリティとは

「ホスピタリティという言葉を知っていますか?」という問いかけに手を挙げた生徒はほんの数名。12月8日(木)に、ゲストティーチャーの友田奏子さんを迎えて行った授業はこんな風に始まりました。

友田さんは、京都大学-コーネル大学国際連携コース(※)でホスピタリティを研究している学生です。(※京都大学-コーネル大学国際連携コースは、京都大学経営管理大学院と米国コーネル大学 School of Hotel Administration, Cornell SC Johnson College of Businessが連携して行う2年間の専門職修士課程)

国際教養大学を卒業後、ヒルトン(ホテルズ&リゾーツ)で幹部候補生として様々な経験を積んでいましたが、退職し大学院で学ぶという選択をしました。

「思いやり」とも訳されるホスピタリティは、ホテルやレストランなどの業界でプロから提供されるものと捉えられていたり、先天的に持っている性質や無意識のうちに育つものと思われがちですが、友田さんの研究分野における考え方は少し違います。ホスピタリティは誰でも学んで習得することができる、というのです。

知識を身につけ練習し、意識的に実践することでホスピタリティ・マインドを高め、それがホスピタリティ・アクションとなって現れる。それを聞いて新陽でもみんなで学びたいと思いました。

そのことを1年次のメンターで総合的な探究の時間を担当してくれている川崎先生に伝えると、「ぜひやりたい。生徒もですが、教員も学びたいです!」と言ってくれたので、今回の授業が実現しました。

川崎先生と友田さん

1年生の約半数を対象とした授業では、まず友田さんの自己紹介の後、ホスピタリティについてお話いただきました。

ホスピタリティ(Hospitality)の語源が、フランス語の歓待(hospitalité)で、さらに遡るとラテン語の敵(hostis)だという説はとても興味深かったです。

敵にも味方にもなりうる存在(人、組織)に対する関係性マネジメント(人間同士の本質的な親和力)

参考:中川伸子「ホスピタリティ」の起源(2011)

ちなみに友田さんの解説によると、ホスピタリティとは、
・相手の立場に立って考え行動する、思いやり
・主従関係ではなく互恵関係をつくるもの
・ホスピタリティ・マインドをもって相手に接すること
などだそうです。

そしてホスピタリティ・マインドは、相手の力になりたいと考える思考パターンで、感情とは別もの。それはAIには最も学習し難い分野の一つと言われています。でも人は、知識やスキルとして学ぶことができるし、意識して自分の行動を変えることができる。そう話してくださいました。

ホスピタリティを実感した経験

初めて聞く言葉や抽象的で難しい概念に戸惑っている生徒も多かったのですが、「ホスピタリティ・マインドは人々の生活を豊かにする!」と信じて伝える友田さんの気持ちに応えようとしたのか、みんな真剣に話を聞いて理解しようとしている様子でした。

後半のグループワークでは、

  • ホスピタリティを実感した経験はありますか?

  • 今日から実践できそうなことはありますか?

について、学校生活やアルバイト先での経験談を話したり、自分でもやれそうなことを考えてみたり、いろいろな意見が出ていました。

話し合いをしているうちに、ホスピタリティを身近なことと結びつけられるようになった生徒もいたようです。

意識することで変わること

今回の授業に合わせて、生徒たちにアンケートを行いました。ホスピタリティの知識や意識に関する問いや、コミュニケーションにおける心がけなど多岐にわたる質問に、講義の事前と事後に答えてもらいました。

1週間後に取ったアンケートで「ホスピタリティの授業に参加した後に意識や行動に変化があったか」という問いに、

「特にない」
「よくわからない」

という答えも多かった一方で、

「やってみようと思うようになった」
「なんとなく意識している気がする」
「これってホスピタリティかなって考えることが増えた」
「挨拶するようになったり、言葉遣いに気をつけたりしてる」
「店員さんのホスピタリティに気づいた」

と変化を感じたり、行動に移している生徒も少なくないことが分かりました。

また、個人的には「まだ気づくことができていない」「1度ではよく分からなかったから、またこういう機会があるといいと思う」という回答があったことも嬉しかったです。

今回を機に、私自身も人からのホスピタリティへの感度を高めたり、自分の思考パターンを意識したりして、ホスピタリティ・マインドを育てていきたいと思っています。

【編集後記】
実は友田さん(いつもは奏子と呼んでいるので改めて書くとなんだか変な感じでした・笑)は、私の数年来の友人です。年齢は一周り近く違うのですが共感する部分も多く、キャリアチェンジして大学院に挑戦した勇気とパッションを尊敬しています。「将来、ホスピタリティ教育にも携わりたい」という想いがある彼女をいつか生徒たちにも会わせたいと考えていました。
今回、ホスピタリティを学んで欲しかったのはもちろんですが、奏子のキャリアや生き方からも何か感じてもらえたら、と来てもらいました。授業のあとに数名の生徒が奏子に質問や相談をしていたようで、この出会いがまた何かにつながるといいな、と思います。

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