見出し画像

プロ野球によく起こる怪我について解説〜肩関節唇損傷〜

 今シーズンの試合の無い日などに更新する「プロ野球によく起こる怪我について解説」シリーズ。
 様々な怪我の名前の指す部位や完治までの期間を調べ、選手の怪我についての記事が出た時に名前だけですぐ分かるような記事作りが出来ればと思っています。

 第四回は、斎藤佑樹選手なども経験した、投手にある大怪我である肩関節唇損傷について解説します。

肩関節唇とは?

 そもそも肩関節とは肩甲骨と上腕骨で構成される関節であり、肩関節唇はその肩甲骨と上腕骨のつなぎ目に存在する軟骨状の組織です。肩関節唇があることで肩関節が安定して動くようになっており、上腕骨の先端が肩甲骨に収納されるように働いています。

 形を見てみると受け皿のような見た目になっており、実際上腕骨を受け止めるような構造になっています。

 また、肩関節唇の中でも部位が分かれており、前上方、後上方、前下方、後下方に区別されます。その中でも上方部は上腕二頭筋の腱と関節上腕靱帯という靱帯がつながっており、別名をSLAP(Superior Labrum from Anterior to Posterior)といい、肩関節唇損傷のことを別名SLAP損傷とも呼びます。ちなみに、それぞれの単語の意味は

Superior…より良い
 Labrum…唇
 Anterior…前方
 Posterior…後

 となっています。

なぜ肩関節唇を損傷してしまうのか?

 では、なぜ肩関節唇を損傷してしまうのかという理由について迫ってみましょう。

肩の使いすぎ

 単純ではありますが、これが最も大きな理由になります。
 野球で言えばボールの投げすぎテニスで言えばサーブの出しすぎバレーボールで言えばスパイクの打ちすぎなど枚挙に暇がありませんが、球技では肩を使うことが多いため肩関節唇を損傷することが多いです。
 特に腕を頭の上まで上げることで発症することが多く、無理な投球などはしない方がいいということですね。

肩の打撲・脱臼

 野球に限らず、日常でも稀に肩を打って打撲したり、脱臼するケースはあります。その時に上腕二頭筋などに力が加わると、繋がっている肩関節唇が剥がれてしまうことがあります。肩関節唇の損傷の仕方は主に傷つくことと剥がれることの2通りがあり、場合によっては断裂ということもありますが、剥がれた時は断裂ということがあります。

発症したらどうなる?

主な症状

 ①痛み
 手のひらを地面に向けて腕を伸ばした時に上から肩を押さえたり、腕を高く上げた時に同じ痛み方をします。
 損傷した状態で投球を行っても、当然ですが痛みを伴います。

 ②肩の抜け感
 肩関節唇を損傷した状態で投球を行うと、もともと張り付いていた部分が剥がれているため腕の前後のバランスが取りづらくなり、肩が抜ける感じが残ります。

治療の方法と完治までの期間

 ①保存療法
 手術を試みない場合、まずは痛みを抑えるために炎症を抑える薬を内服しながら様子を見ます。痛みが引いてきたら肩関節の安定化を図るためにインナーマッスルを鍛えることを中心としたリハビリを行い、完治までエクササイズを続けています。

 ②手術療法
 リハビリを行うもなかなか症状が改善しない場合、競技に早く復帰しなければならない場合などはこの手術療法を取ります。一度剥がれてしまった肩関節唇は自然には元に戻らないため、手術をするしかないんですね。
 病院によって取る手術の方法は少しずつ異なりますが、大抵は共通して鏡視下手術という、小さなカメラを関節の中に入れて覗きながら手術医が縫合など処置をする方法をとっています。

 その中でも、バンカート法という手術法では肩関節唇と肩甲骨の間に留め具を差し、強制的に肩関節の脱臼を治します。

 手術療法を行うと、術後約4週間は患部に気をつけながら生活を送り、可動域を広げる訓練をしながら様子を見ます。
 そこから1ヶ月は筋力トレーニングや全身運動を行うようになり、投球練習に復帰することができるのは術後4〜6ヶ月後。実戦復帰までには1シーズンをほぼ棒に振ることになります。

まとめ

 今回は、肩関節唇損傷について解説してきました。肩甲骨と上腕骨をつなぐ肩関節唇が、投球のし過ぎなどによって剥がれたりしてしまうと、肩関節唇損傷につながります。一度剥がれてしまった肩関節唇は自然には戻らないため、競技に復帰する際はほぼ100%手術への道を迫られてしまいます。
 また、一度手術で固定しても再び脱臼する可能性も高いため、まずはここを怪我しないことが大切になってきますね。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

出典・画像引用元

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?