世界史の極意(佐藤優著)を読んで、ウクライナとアナロジー【書評・感想レビュー】

どうも、ノアです。
佐藤優さんの世界史の極意を読みました。

「世界史をアナロジーによって考える」というのをテーマに書かれた本です。

アナロジーとは、似ている事物を結び付けて考えること。

アナロジー的思考を鍛えることによって、未知の出来事に遭遇したときでも、「この状況は過去に経験したあの状況とそっくりだ」と対象を冷静に分析できるようになります。

本書は歴史をアナロジーによって捉える訓練として様々な事例が出てくるんですが、一番印象に残ったのは、ウクライナ紛争についてです。

『世界史の極意』はウクライナ紛争前の2015年に書かれた本ですが、佐藤優さんの鋭い分析が勉強になります。

ウクライナ情勢を解く鍵は、ウクライナ人が持つ「複合アイデンティティ」にある。ウクライナは西部と東部・南部で歴史や民族意識が大きく異なるのです。

ウクライナは、「ロシアにいじめられてる小さな国」的なイメージをしがちですが、実は結構デカい。面積でいうと日本1.6倍あります。人口も4000万人以上。

なので、ウクライナは西部と東部でかなり民族意識が異なる。

ウクライナ西部は一度もロシアに支配されたことがない土地です。なので、西部に住むウクライナ人は「われわれは断じてロシア人ではなくウクライナ人である」という強烈な民族意識を持っている。

一方、ウクライナ東部は17世紀にはロシア帝国領に組み込まれており、一時独立しましたが、1920年には再びソ連に組み込まれています。なので、東部はロシアと密接な関係を持った地域で、ロシア語を日常的に話す住民も多いです。

したがって、西部の人たちはロシアからの影響を排除して、EUと仲良くしたいと考えている一方で、東部・西部はロシアに親近感を持っており、ウクライナからの分離独立にも肯定的な住民が多数いる。

ウクライナにはこうした根深い対立構造があります。

本書で、佐藤優さんがウクライナのアナロジーとして出した例が20世紀前半のアイルランドです。

アイルランドとイギリスの関係がウクライナとロシアに似ているという事例。

佐藤優さんは「同質性が高いほどナショナリズムは暴発しやすい」と分析します。ウクライナ人もロシア人も同じスラブ人であるがゆえにかえって小さな差異をめぐって争いが起きやすいということです。アイルランドとイングランドの関係や、スコットランド独立運動も同質性の高さが引き起こしたという分析です。

卑近な例だと、SNSで風俗嬢とキャバ嬢が仲悪い理由もこれで説明できますね。同質性が高いゆえに小さな差異が目につく。

佐藤さん分析とは少し別の話になるんですが、隣同士の国が仲が悪い理由として、「仲が悪いからこそ別の国になっている」という考え方があります。要するに、隣同士の国で仲が良かったら合体して一つの大きな国になっているはずだから、別の国で別れているということは仲が悪いはずということです。

世界史に限らず、こうして構造的に物事を考えると、新たな発見があって楽しいし、頭もよくなります。

世界史の極意、脳のトレーニングとして読んでみるのをおすすめします。


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