見出し画像

「正直、ナンバーナインの経営に興味はない」サイバーコネクトツーが漢気で4億円の出資を決めた本当の理由

こんにちは。ナンバーナイン取締役CXOのころくです。

先日プレスリリースにて発表した通り、私たちは11月14日付けでINCLUSIVE株式会社の保有する弊社株式の一部を譲渡いただき、新たに株式会社サイバーコネクトツーさまやエンジェル投資家の方々を迎え入れる資本政策の見直しを行いました。

そこで、このリリースにあわせて同社代表の松山さんと弊社代表・小林による対談を実施。このnoteは、その対談の後編です。(前編は以下URLよりご覧いただけます)

後編では、今回の資本業務提携が何を意味するのかについて突っ込んでお話を伺っています。

インタビュー中も、松山さん、そしてサイバーコネクトツーという会社が見せる漢気に胸が熱くなりましたが、このnoteを通してその熱情の一端をおすそ分けできたら嬉しいです。


* * *


顧問弁護士にも言われた「あり得ない選択」

松山
少年サンデーで『よふかしのうた』を連載しているコトヤマ先生が、前作『だがしかし』の連載後に描かれた読切漫画『いとおかし』(※『だがしなど 〜未収録作品&イラスト集〜』に収録)の中にすごく印象的なセリフがあったんです。

主人公の漫画編集者がものすごくおもしろい漫画を描く漫画家志望の女の子に出会う話で、その編集者が彼女に言ったセリフだったんですけど、「『私にはこれ(漫画家)しかないんです』と言って漫画家を目指しているなら、君は漫画家を目指すのを辞めた方がいい」というようなことを言われたんです。

「これしかない」と思い込んでいるうちは選んだことにはならないよ、と。「選ぶ」というのは、たくさんの選択肢があるなかで「それでもこれがいい」と決めることだから。君が無限にある選択肢の中からそれでも尚、「これ(漫画家)しかない」じゃなく「これがいい」と思えたならもう一回おいでっていう、素敵なエピソードがあるんですよ。

ナンバーナインにもそれをしてほしかった。自分たちにももうこれしかないという選び方をしてほしくなかったので、今回の出資に関する条件の提示もしなかったんです。たくさんの選択肢の中から最終的にこの選択を選ぶんだったら、全面的に協力するよという話をしました。

ーー「条件提示しなかった」というのは書いても大丈夫ですか?

松山
いいですよ。多分みんな度肝を抜かれると思うけど。

正直、顧問弁護士からは「はっきり言うけどあり得ない選択をしてます。一般の常識では測れないことをやっているというのを理解されてますか?」と言われました。

なんですけど、うちの副社長の宮崎は「松山が決めたことなんで」の一言で突っぱねてました。

小林
今回の取り組みにおける裏のMVPは宮崎さんだと思っています。松山さんの大胆な決断を守りつつ、会社として守るべきところを裏側でしっかり調整と交渉をしてくださいました。

「条件提示はしない」からといって何でもOKではなく、ちゃんと「こうしたいです」と言ってくれたのがよくて。僕たちも大前提として揉めたくないし恩義を感じているので、できるだけ要望に応えますとお伝えしていたのですが、その時に出していただいた要望も優しかったです。

「正直ナンバーナインの会社経営に興味ない」の真意

ーー 聞けば聞くほど再現性が見いだせなくなってきました。ここからは「これから」についてお伺いしたいのですが、僕たちが目指す「IP創出」に向けて、松山さんからのアドバイスをいただけますか?

松山
まずはじめに、世の中の方に対して誤解を恐れずに言うと、正直ナンバーナインという会社の経営に興味がないんですよ。

今回、資本業務提携という形を取らせていただいていますが、あくまで私は応援する側であって、ナンバーナインをコントロールしようと思ったことは一度もないし、これからもそのつもりはありません。かといって放置するつもりもない。

じゃあ何のために?と思われるかもしれないけど、ナンバーナインという会社は今いる役員とスタッフ含めて、みんなが同じ方向を向いているベンチャー企業だと思っているので、このまま大暴れしてほしい。悪い意味での枷を作りたくないし、このまま突き進んでほしいんです。そのために相談に乗れる部分があるならもちろん乗りたいと思っています。

これも誤解を恐れずに、という前置きはありますが……、ものすごく端的に言ってしまうと、漫画一個じゃ世の中変わらないんですよ。

ーー あぁ、それはちょっと分かります。

漫画一つじゃ世の中は変わらない

松山
漫画、アニメ、ゲーム、映画など、世の中のエンタメは色々ありますけど、世の中の人はゲームが好きだからゲームをやったり、漫画が好きだから漫画を読むのではなく、結局惚れるのはIPなんですよ。そのIPの入り口は多ければ多いほどいいんです。

漫画一個じゃ世の中が変わらないと言いましたが、IPが世の中を変えていくんですよ。ナンバーナインにとって、そのIPの入り口は自社の漫画やWEBTOONだと思うんですけど、それをより多くの人に届けるためにアニメ化するべきなんですよ。それで漫画がより売れた先に、IPとして儲けるのは絶対にゲームなんです。その際に実写化、ドラマ化、映画化などさまざまな選択肢がでてくると思うんですけど、全メディアを網羅するところまではワンセットです。これは我々ゲーム業界も同じように考えています。

漫画業界は、古くは漫画が一次版権となって、アニメ化してゲーム化して商品化して……というビジネスが多かったと思うんですけど、今はこれらを同時に仕込まなければいけません。漫画を単体で売るというのは、打率が低いんですよ。

少なくともうちはずっとゲーム業界・アニメ業界・出版漫画業界・映画業界と接点を持ってビジネスをやっているので、そこの経験値と繋がりでナンバーナインにとってもプラスに転じることができるものは提供できるとは思います。

ただ、これも「こうじゃないといけない」という決め打ちはしたくないので、まずは自分たちで苦労して、自分たちで考えて、次の一手を数ある選択肢の中から選んでほしいですね。

ーー ありがとうございます。ちなみに、松山さんから見てナンバーナインに足りないところはどこだと思いますか?

松山
一言で言うと、漫画以外の知識と知見がなさすぎるんですよ。

小林
それはそうですね。

松山
現場のメンバーたちはそれでいいけど、琢磨をはじめ小禄やアラケンといった経営陣だけは視点を変えて、IPを広げていくことを意識的にやらないといけない。

小林
それはおっしゃるとおりなので、これから一年は松山さんに同行させていただくくらいの気持ちでいます。僕らは漫画の売り方は詳しいけど、それ以外はポンコツなので。それは僕たちも分かっているので、メディアミックスを加速させていくためにも勉強させていただきたいと思っています。

松山
うん、全部紹介するよ。

お金以外でナンバーナインができる最大の恩返し

ーー 最後の質問なんですけど、お互いが今回の提携で期待したいシナジーを教えていただいてもいいですか?

小林
小林琢磨という経営者として、松山洋という経営者に勝負をしたいんです。負けてないし、負けるつもりもない。だからこそ、僕自身の成長はすごく重要だと思っています。

それと、サイバーコネクトツーさんが持つメディアミックスとオリジナルIPの制作ですね。コンテンツにかける情熱は本当にすごくて、そこは素直に負けていると思うので学びたいです。

サイバーコネクトツーさんのすごいところは、メディアミックスの凄さ。CGやグラフィックがすごい会社と言われることも多いんですけど、実はめちゃくちゃメディアミックスやってる会社としての凄さがあるんですよね。

最終的には、サイバーコネクトツーさんが「ナンバーナインのIPをゲームにしたい」と言ってもらえるような作品を作りたいんです。同社は自分たちが好きなゲームしか作らない会社なので、そこに選ばれたいなと。

ーーゲーム開発に関しては、漢気でやるような会社ではないですもんね。

小林
そう。ものづくりに関してだけは漢気じゃ動かないんですよ。僕たちが困っていて出資してほしいというお願いに関しては「いいよ」と言ってくださったけど、松山さんは「このゲーム作ってほしい」でいいよとは絶対に言わない男なんです。それが分かっているからこそ僕らからは営業しませんし、松山さんの口から「ナンバーナインの作品でゲームを作らせてほしい」言わせるようなものを作りたいですね。

これが、僕ができるサイバーコネクトツーさんへの恩返しだと思っています。

松山
琢磨がいま言ったことは一字一句その通りです。今日からどれくらいで実現できるかは分からないけど、そこは個人的な約束や目標でもかまいません。

いままで、少年ジャンプの作品含めてうちがゲーム化するIPは全部自分たちで決めてるんですよ。数ある選択肢の中から「この作品をゲーム化させてください」と、すべて自分たちで決めて提案して獲得してきました。

ナンバーナインに出資していようがいまいが、これからもゲーム開発は同じ観点で選びます。だから、私もその日(ナンバーナインのIPをゲーム化したいと思う日)を夢見て頑張っていきたいです。

最後に、これは再三伝えたいんですけど、弊社はナンバーナインを支配するつもりは一ミリもありません。選択肢は与えるし助け舟も出すし、相談にも乗ります。

それでも、最後はナンバーナインが苦労して自分で選んで勝ち取ってほしい。横槍を入れるつもりは一切ありません。なので、ナンバーナインの皆さんには、これからもナンバーナインが独立した会社であるというのを自覚してほしいです。

ーー 奮い立つようなメッセージ、ありがとうございました。

これで、松山さんと小林の対談はおしまいです。いつ話を聞いても変わらぬ熱量で向き合ってくださる松山さん、そしてサイバーコネクトツーさんというエンタメ業界の大先輩との資本業務提携の裏側を、余すところなくお伝えしたつもりでいますが、もしよろしければ感想などお聞かせいただけると嬉しいです。

また、ナンバーナインではLINEマンガで連載中の大ヒットWEBTOON『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ〜』やX(旧Twitter)連載で人気の漫画『おかえり、初恋。』など、今後は縦も横も含めて漫画づくりに力を入れていきます。

今後もおもしろい取り組みをたくさん仕掛けていきますので、ご一緒できるパートナーさんを募集中です。既存作品のアニメ化やドラマ化に興味をお持ちいただける方も、新規IP制作に興味がある方も、ナンバーナインで働きたいという方も、お気軽にお声がけください。

それでは、これからもナンバーナインをよろしくお願いいたします。


編集・構成: ころく@ナンバーナインCXO

この記事が参加している募集

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?