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「経営陣にとってもっと楽な選択肢もあった」ナンバーナインはなぜサイバーコネクトツーと資本業務提携したのか

こんにちは。ナンバーナイン取締役CXOのころくです。

先日プレスリリースにて発表した通り、私たちは11月14日付けでINCLUSIVE株式会社の保有する弊社株式の一部を譲渡いただき、新たに株式会社サイバーコネクトツーさまやエンジェル投資家の方々を迎え入れるかたちで資本政策の見直しを行いました。

本取り組みは、創業8年目を迎えたナンバーナインがいよいよアレを目指して本腰を入れていこうというための大きな一手となります。

弊社にとってのアレというのはセ・リーグ優勝ではなく(日本一おめでとうございます)、IP(※)創出へのコミットです。
(※)…Intellectual Property=知的財産。ここではゼロイチの漫画やWEBTOON作品づくりと捉えてください

今回の資本政策を締結させるまで、約10ヶ月ほどかかりました。その舞台裏には様々なドラマが巻き起こりましたが、中でもサイバーコネクトツーさまとの資本業務提携はとても劇的。このドラマを皆さんにお伝えしたいと思い、急遽同社代表の松山洋さんをお招きし、弊社代表の小林との対談を実施することにいたしました。

実は出会って8年以上の付き合いで仲もいい小林と松山さん。対談では、二人の出会いから今回の資本業務提携に込めた想いまで、あますところなくお話しいただいています。
※松山さんが小林さんを普段通り「琢磨」と呼んでいたり、フランクな言葉遣いになったりしますが、二人の関係性がより伝わるためにもそのままにしています

本件における再現性はあまりありません。ナンバーナインにとっては必然としか言いようのないドラマを、ぜひお楽しみください。
※後編はこちら

二人をつないだ、二つの漫画。

ーー お二人とも、どうぞよろしくお願いします。これからナンバーナインとサイバーコネクトツーさまの資本業務提携についてお話を伺っていこうと思うのですが、その前にまずは小林さんと松山さんが出会ったきっかけからお伺いしてもよいでしょうか。

小林 琢磨氏(以下、小林)
2015年に渋谷に誕生した、マンガサロン『トリガー』がきっかけです。

「ブレイブ フロンティア」などで有名なゲーム会社・エイリムさんが『トリガー』のお店立ち上げに企業協賛してくださったので、毎月エイリムさんと店舗でイベントを企画していたんです。そこで2016年3月16日に開催した「『東京トイボックス』ナイト」というトークイベントに、松山さんに出演していただいた時にはじめてお会いしました。

松山 洋氏(以下、松山)
じつは、それまでもサイバーコネクトツーはゲーム会社として琢磨が以前代表をやっていたサーチフィールドにイラストの発注をしていたので、お互いのことを認識はしていました。ただ、あくまで数多く発注している会社の一社ということでしたし、直接お会いしたこともなかったんですよね。

ーー イベントでお会いした時の小林さんの印象は覚えていますか?

松山
第一印象は、「ギラギラしてんなぁ」と。でも、その印象は今も変わらないですね。

でもトイボナイトがきっかけで、当時琢磨がレビュアーとして参加していた漫画のレビューサイト「マンガHONZ」にも参加するようになって仲が深まっていった感じです。

ーー 当時はいまこんなかたちでご一緒するなんて思っていなかったですよね。

松山
もちろん思ってなかったよ。

小林
いや、正直僕は当時からちょっと考えていました。

松山
何やねんそれ。でも、結果論かもしれないけど、あの時出会って感じた「ギラギラ」の直感は、やがてこうなることはある意味予定調和というか、予測できたことなのかなと思います。

小林
僕はトイボナイトでお会いした当初から「魂は合ってるな」と思ってましたよ。それが確信に変わったのが、福岡に行った時に萌魂(もえたま)というアニソンバーに行った時のことです。

店長と松山さんが一番おもしろい漫画について語っていて、急に僕に話題を振られた時に「『左ききのエレン』ですか?」と言ったら、どんぴしゃだったんですよ。

松山
『左ききのエレン』がまだ少年ジャンププラスでリメイクされていない、いまほどヒットしていなかった時代に、あれを読んでないヤツは漫画好きを名乗るなという気持ちにさせられるくらい当時盛り上がってて。それをちょうど琢磨に「何の作品だと思う?」と聞いたら、「エレン」って答えたんだよね。

ーー その「魂」というのは、一体何ですか?

小林
情熱?真っ直ぐさ?言語化するのが難しいから魂としか言いようがないですね。松山さんとは年齢が一周り以上違うけど、本当に心の底から親友だと思っています。

松山
性別も世代も出身も家庭環境も違うけど、「好きなものに対して魂が震える」ということはそうした要因とはまったく関係なくて。

「好きが一致する」ことの喜びというか、いま一番自分の中で熱いものというものを、何の照らし合わせもしないままに同じカードを出せるなんてこんなに素敵なことはないじゃないですか。

小林
分かりやすく言うと、『呪術廻戦』の東堂の脳内に溢れ出した虎杖との「存在しない記憶」みたいな感じですね。

松山
そうそう。

ナンバーナインに訪れたターニングポイント

ーー 改めて聞くと、出会いからドラマチックな展開があったんですね。そこからかなり時を超えますが、今回の提携のきっかけを教えていただけますか?

小林
今回の資本政策の見直しについては、じつは今年のはじめからずっと動いていて、いくつかの選択肢を模索していました。ただ、模索する中で自社のオリジナルWEBTOON『神血の救世主~0.00000001%を引き当て最強へ~』がヒットし始めたり、デジタル配信サービスが安定的に成長したりと、徐々に会社がうまく軌道に乗ってきたんですよね。

その時に、人生で何回賭けに出られるのかを考えた時に、僕の中ではナンバーナインが「いまベットしないでいつするのか」というフェーズになったなと思ったんです。そこで、資本政策再検討の可能性を模索し始めました。

しかし、僕らとしてはベットしたいけど、自分たちだけでは足りない金額的なハードルがありました。具体的には、親会社から経営的に独立して、自分たちで経営の主導権を再び握っていくために7億円近く必要だったのです。

それを解決するための選択肢の中には、銀行から借り入れを行ったりVCから資金調達したりとかあったんですが、お金だけ出してもらうのだと意味がないなと。なぜなら、ナンバーナインとしてもものすごく大きいターニングポイントになりうると感じていたし、険しい道のりになるとも感じていたから。

それならば、「この人と一緒にやりたい」という思いがあって。人生を賭けるからこそ応援してほしいし、この人が応援してくれるからこそ最後までカッコつけたい、踏み込みたい。僕にそうしたプレッシャーをかけられるような存在が必要だと思った時に、松山さんしかいないなという結論に至りました。

ーー 私もこのアイデアが出た時は震えました。

小林
そうと決まったら、「明日の朝空いてます?」とすぐ連絡しました。

松山
その時点で付き合いも長いし、琢磨は直情型なのでLINEでメッセージがあっても裏側が透けて見える。「夜は忙しいと思うんで、明日の朝がいいんですけど」という連絡をもらったその日は北海道にいたんですよ。

これは多分ナンバーナインの社内で役員メンバーと会議している時に連絡しているな、というのが見えてきて。そうなったら、最短で会ったほうがいいんだろうなと思ったので、その日の夜に東京に戻って、翌朝自分の会社に出社する前に会いました。

琢磨とサシだと思って待ち合わせ場所に行ったら役員3人とも揃っていて、完全にやられました。で、その時に選択肢の一つとして今回の資本業務提携について相談された形ですね。

「本当の意味で横に並んだ」と思えた琢磨の一言

ーーそもそも、松山さんはナンバーナインに対してどんな印象を持っていたんですか?

松山
デジタルコミックエージェンシーを名乗って創業した当時から見ているし、琢磨が自ら作ったサーチフィールドを卒業してナンバーナインに専念することを決めたのも見てきている。その裏側で琢磨自身が何を考えてそれに踏み切ったのかも聞いてました。

創業から見てきて、始まった時のナンバーナインは文字通りデジタルコミックエージェンシー、つまり配信業者だった。だけど、私自身は琢磨に「コンテンツを作れ」とずっと言っていた。結局最後はIPだと。自分たちでIPを持つことが、やがてそれが資産になって最強になるから、自分たちでやりなさいと言ってきたんです。

小林
これは『東京トイボックス』シリーズのうめさんにも言われてきました。でも、当時は優先順位があって頑なに「やらないっす」と言ってましたね。

松山
なので、今回の相談に来た時の気持ちも分かる。「IPの創出に力を入れる」というのを聞いて、「あぁ、琢磨始まったんだな」と思いました。

ものをゼロからつくるプレーヤーと、業界でビジネスを回すプレーヤーとでは意味合いがまったく違う。漫画が好きだから漫画がつくれるわけじゃないのとイコールなので。でも、好きじゃないと作れないものもある。個人的には、琢磨も他の経営陣も、何ならどんなメンバーがジョインしてきたのかもリアルタイムで見てきています。

そんな中で、大きく転換期を迎えたと思ったのは、自分たちで「WEBTOONにフルコミットする」と言った時。「自分たちで作品を10本つくります」と言った瞬間に、「ナンバーナインは、オレ自身にとってもこれから一緒にこの業界をおもしろくできるパートナーの一社になったな」と思った。

デジタルコミックエージェンシーのナンバーナインに関しては、『チェイサーゲーム』も『戦場のフーガ 鋼鉄のメロディ』も『しごにんの侍』もビジネスとしてパートナーシップを結んで一緒にやってきたけど、ようやく横に並べる会社になったなと。うちもゲーム業界とはいえ、自分たちでIPを生み出して世界で勝負したいと思っているわけで。仲間であり、同時にライバルになるわけですから、本当の意味で横に並んだと思えました。

これは琢磨の好きなところなんですけど、サイバーコネクトツーという会社は30年近くやってきていて、社歴も規模もナンバーナインと比べると大きいんですよ。それでも琢磨は負けてない、負けるつもりもないと言い張るんですよ。これが好きなんですよね。ここだけは絶対に譲らない琢磨が好きだし、そんな琢磨を慕っているナンバーナインのメンバー全員が好きなんですよ。

そんなナンバーナインがこれから第三幕を始めるのであれば、だったらその最初の協力者はオレやと。色々選択肢を持って検討してくれていいけど、いざという時に困ったら最初に手を差し伸べるよ、という話をしました。

小林
それがあったから楽になれたというか、強い意志を持てるようになったところはありますね。強気になれたし、他のプランに対して断れるオプションが生まれたから、会社としてベストな選択肢を選べたと思っています。

ーー ありがとうございます。

ここで前編は終了です。後編では、本気でおもしろいゲームをつくることに魂を注いできた松山さんが思うIP創出カンパニーとしての心構えと、これからのナンバーナインに期待することについてお話しいただいています。こちらもぜひお楽しみにしていて下さい。

編集・構成: ころく@ナンバーナインCXO

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