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『会員制の粉雪』(毎週ショートショートnote)

久しぶりの家族旅行でスキー場に来ている。
ウインタースポーツが共通の趣味であり
旅行自体に異存はなかったが、
若い頃には友人たちと何度も来ているこの地を
私はずっと遠ざけてきた。
「パウダースノーを舞い上げて滑ってみたいんだよね」
何も知らない妻は子供たちの味方をした。
彼らがこのスキー場を選んだのは運命だろうか。

ゴンドラの終着駅まではあっという間だった。
ここからは吹きっさらしのリフトでさらに上を目指す。
胸ポケットに忍ばせたスキットルに手を伸ばす。
寒さ対策のウィスキーが体中を熱く駆け巡った。

リフトを降りると斜面を一気に滑走する。
舞い上がる粉雪。体が宙に浮くような浮遊感。
しかし、私の心は晴れなかった。

途中、あの案内板が立っていた。
『究極の粉雪へはこちらのリフトで(会員制)』
粉雪に埋もれていた友人の顔を思い出しながら
リフトへと続く脇道に入っていく。
ポケットの中で友人のものだった会員証の名前が
いつの間にか私の名前に変わっていた。

(410文字)

<あとがき>
映画『私をスキーに連れてって』世代の私は
当時、冬のボーナスをすべてつぎ込んで
スキー三昧を送っておりました。
北海道の雪は別格とのことで、
一度はパウダースノーを滑ってみたいと思ったものです。

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