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「清潔感」の要請に「柄シャツ」という解答を -クリスタセヤの総柄シャツ-


巷には年齢に合わせたファッションについてのマニュアルが溢れる一方、そういうあり方を否定しファッションによる自己表現を是とする言説もまた多い。ファッションに関心を持つ者として、服にいかなる価値を見出すかという魂の過程に重きを置く価値観には強く賛同する一方で、身体的にも社会的にも変化し続けている自己の有り様と社会的要請(TPO)をいかに意識的に調整していくか、というのもファッションの醍醐味であると思っている。

加齢した男性のファッションマニュアルサイトを一通り巡回してみると、シルエット、サイズ感についてはそれぞれがそれぞれに想定する顧客層に向けて好き放題言い散らかして全く収拾がついていない。そんな中でも共通して述べられているのが「おっさんには清潔感が必要」という論点である。

ちなみに、方々で言及されている通り「清潔感」とは「洋服の手入れがされている、汚れがない」「クリーンな素材や鮮やかな色味」「悪目立ちしないシンプルさ、ミニマルさ」等の複合概念である。

では、春夏物において清潔感がある服とは何か。

上質な生地、無地かシンプルなストライプ柄、ハッキリした発色、ベーシックな形、適切なサイズ。
そう、コムデギャルソンシャツフォーエバー
ですね。

ここの無地のブロードシャツを着ていて清潔感が無いと評価されることはまず無いと言える、揺るぎなきファッション真理の1つである。(自己比)

おっさんが着るべき服はアイロンを掛けたコムデギャルソンフォーエバーのブロードシャツ、以上!
と言いたいところだが少し待って欲しい。

確かに「シンプル、ミニマル」というイデオロギーに則る限りは正解であるが、「シンプル、ミニマル」は清潔感を構成する一つの要素に過ぎない。

そもそも、なぜおっさんに清潔感が求められるか。それはおっさんはどう足掻いても身体から清潔感がなくなっていくから、である。
「身体から失われた清潔感を服装によってカバーして社会に不快感を与えないようにしようね」という社会的要請こそ清潔感の本質であり、ファッションにおいてそれは「悪目立ち」を避けるという形で示される。「自身を若く見せること」を求めているわけでない。

となると、「本人に似合っていないけれど清潔感はある」という事態は成立し得ないということになる。服が似合っていない状態はどうしても目立ってしまうのだから。

似合うというのが容姿やキャラクターと服装が違和感なく調和している状態に対して与えられる評価であるとするならば、身体から清潔感の無くなりつつあるおっさんに、シンプル・ミニマルな服装はそもそも似合いにくいのだ。くたびれたおっさんにはフォーエバーのナロークラシックより、グレッグローレンのネルシャツの方が似合うに決まってる。 

明るめの発色やハリのある素材、装飾を排したミニマルなデザインは、着ている当人の顔立ちや容姿をカムフラージュするような遊びがなく、取り入れられる小物の制約も多い。そして世間の多くはある程度くすんだ色の服を着ているため、往々にしてそういう服は目立つ。すると、おっさん顔とのトーンのギャップが際立つため、却って老けて見えてしまうのである。(一般的なスーツを着たおっさんと、アイロンの効いた真っ白な無地Tシャツ、それにネイビーかブラックのポリエステル系のテーラードジャケットを羽織ったおっさんを比べた際、着用者がより老けて見えやすいのが後者であるということは、想像いただけるかと思う)

その辺の感覚は、ファッション感度に関わらず誰しも持ち合わせているもので、おっさんが次第に素材や色味がボヤけた服を選ぶようになる理由もおそらくここにある。そして、ボヤけた服にありがちな手入れの軽視を許容する懐の深さも重なって、名実共に清潔感の無いおっさんが誕生するのである。

まとめよう。
おっさんに清潔感のあるファッションが求められるのは、放っておくと自然に顔も服装も清潔感が無くなっていくからである。その社会的要請に応える意思がある限り、おっさんは清潔感ある服を意識的に選ぶ必要がある。
清潔感は、選択した服装と加齢した本人の顔や雰囲気とのギャップが大きすぎると却って損なわれる。清潔感≠ミニマルファッション。

この前提を踏まえて、解答を考えていこう。

1.高彩度の色味と荒めの素材
明るい発色を荒めの素材感で中和する方法。サックスブルーやペールカラーのオックスフォードシャツや、ラコステやジョンスメのポロ。この手の素材は洗濯するほど着古し感が強まるので、清潔感の寿命は案外短い。清潔感に何より大事なのは、ボロさを見せないことだ。兆候が見えたらすぐ買い換えとなるため、ランニングコストは高い。ユニクロならワンシーズンで総入れ替え。去年の服は持ち越すな。

2.スポーツ、アウトドア系等のウェア
スポーツアウトドアのイメージは年齢を選ばず、明るい色のウェアを取り入れるハードルも低い。しかし、良くも悪くも「スポーツをする人」以上の完成度にはならない。また、天然素材以上に値段による見た目のツラに差があるため、間違ってもスポーツ量販店のシャカシャカジャケットなどを選んではならない。あくまでファッションの領域に落とし込むには、それなりのブランドの品を選ぶ必要がある。

3 渋めの色合いの高級素材
ベージュ、グレー、墨黒等ボヤけたカラーも、高級生地特有の発色や光沢まぁ総合的な雰囲気で清潔感は十分お釣りがくる。マーティやアプレッセオーラリーあたりの今勢いのあるハイエンド系ドメブラの服は大体このアプローチで攻めている。
しかし、この手の服はやたら金がかかる。そしてまさしく私自身がそれに当てはまるのだが、この手の服は意外と飽きるのである。

4 高級素材に柄を乗せる
ギャルソンシャツフォーエバーに代表されるような光沢のあるブロード地と高彩度色によってもたらされる緊張感をうまくいなす手段として、「総柄シャツ」の可能性を見た。

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