見出し画像

額縁買うぜ

 先日部屋の模様替えに凝っているというようなことを書いたが、ありがたいことにその熱は微熱を保って今も続いている。流行というものは世間ではなく自身で完結すべきものであって、いま私のなかでは模様替えと小説が流行っている。私のなかの高校生は部屋のテーブルを移動させてその上にのせた原稿用紙に向かって何かを書いている動画をTikTokにあげて30kいいねを貰って、いいねを貰ったからそれがなんなんだと思いながらうつむく程ではない水色の諦観と闘っている(彼は純文学作家なのだ)。

 私の話に戻すと、博物画を購入した。博物画というのは大まかに言うと図鑑に載ってるような絵で、アートやデザインというよりは資料としての意味合いが強い。部屋にはすでにAmazing storiesの表紙や挿絵をコピーしたものをコーナンで買った賞状とか入れるための額縁に入れて飾ってはいる。しかしながらふとした時にこれって内装の練習だなと思うことがあり、では本番とはなにかといえばそれは自分にリスクを課すこと、ある程度のダメージを包括することではないか、生きるってそうじゃないか。そう思いリスクの代名詞でもあるお金を結構ちゃんと使って額縁を買おうと思った。しかし競馬と神社しかないような、何光年も遠くにある星を目指す宇宙船のように浅ましいこの府中という街に文化の象徴こと絵画、さらにはそれを飾るための額縁という、ディフェンシブハーフでキャプテンといった感じで渋くて格好いいものを売ってる店なんてあるのかと思い検索したら家の近くにあった。

 小さな店の店頭には、形や大きさの違う古くてほこりをかぶった額縁が何枚(額縁って枚?)も重なって壁から伸びた棒に掛けられており、商品て絶対乱雑に置いてあるほうが格好いいよなと思う。店内に入ろうとすると鍵がかかっており中の人がそれに気付き開けてくれる。完全に営業時間内の筈だがそれでもなんとなく鍵を掛けたくなることは私も個人事業主なのでよくわかる。額縁のことなど1ミリもわからないので初心者ですという感じの声色で店主と話すと色々と教えてくれる。額縁はやはり絵に合わせて色や風合い、素材を決めるのが楽しいらしい(『そうしたほうが楽しい』と説明されたのがとても嬉しい)。飾りたい絵はその場に持っていかなかったのだが、これこれこういう感じの絵ですと私が適当な説明をして、それを聞いてどうにか思い描いてそれならこういう素材が格好いいかもですねと老齢の店主が言う。なるほどですねとか言っていると額のサンプルを100本(額って本?)ぐらい見せてくれて私もこの額が合うかなとか想像が膨らむ。値段を聞いて少し引いたがサイズ的に、いや良さ的に考えれば特注で作るわけだからそれもいいだろう。明日改めて実物の絵を持って伺って発注するのが楽しみだ。ちなみに額縁の完成には大体3週間かかるらしい。最高だと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?