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息吹の風琴│短歌13首

木漏れ日の五月緑の坂道を
少年の自転車風となる


花終わり
みどりの種、藤見上げれば
残り香の風と五月晴れ


クローバーの柔らかで
長く伸びたそよぐ手に包まれ寝転んで


少女らは 
シロツメクサの花束片手に
蝶々になって駆け回る


五月の楓
木洩れ日きらきら
小さき青葉の星空まぶしい


風にとかした長い髪
耳まで切って
きみを待った日の潮騒聞く


青嵐
花水木をさらりとさらって
新緑を揺らしこいのぼり


春の空も衣替え
飛行機雲に乗ってくる
もくもくにわくわく


時間という
一瞬一瞬を膨らませ
ふきこむ息吹内なる声


サイダー缶開け
三秒に上気する薫りごと
喉のおくに一気


一音一音に風おくる
パイプオルガン
踏みしめて歩く琴


大樹
十字に立つ翼
あなたの木陰
ただ耳を澄ましきく時


光るみどりの演奏会
小鳥のさえずり
響き合いに拍手を

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