予測されることと、価値観を混同しないこと
日本の人口に関する議論がいつも噛み合わないのは、予測事項と価値観が混同するからだ。本書で提起される通り、日本の人口は確実に減る。戦後直後のベビーブームが異常なだけで、医療水準が違うにせよ、戦前は1億人を下回っていた人口数へ回帰していくのは当然。
では、人口が減っていいのか、という議論が次に来るが、これは価値観が入る。個人的には一人当たりGDPが世界二位に戻れば良しなので人口数には興味がないのだが、人口が減ると相対的に存在感がなくなるというのも事実だし、何より、戦争を前提とすれば兵隊が減る。
というように、話がいつも逸れていくのが人口議論で本書もその通りで著者は少子化対策は失敗したというが、そもそも少子化対策は三十年くらいのスパンをかけてみないと効果が分からず、中国、韓国、台湾と比較すると、日本の方が合計出生率は高いという事実はどう評価すればいいのか分からない。そう、議論は逸れるのに、国際間比較をしないというのも人口議論によくあることである。
事実として提示される部分で特に新鮮なのは、関西圏は首都圏へ人口供給地域になってしまい、不足分は外国人で補っているという事実。元々朝鮮系の人は多かったので、土壌が整っているのかどうかは知らんが、人口統計を見ると確かにそうなっている。
目新しいのはそんなところで、人口減少対策はしつつ、減少幅を考えて社会インフラを整えましょうというのも当たり前のこと。
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