2023年の映画業界を振り返る

毎年恒例のキネマ旬報の映画業界総決算号。かれこれ、これだけは必ず買ってしまうのだけど、気がついたらキネマ旬報も月刊化と電子書籍併売化になっていたのも驚きだし、誌面デザインが変わっていつくかのページで字が大きくなった。そもそも、想定読者層がかなりの高齢者のはずで、遅すぎるといえば遅すぎる。

2022年からの流れに変化はあったか?

邦画はアニメの躍進で2022年の時点で2019年を上回り、さらに2023年は前期からも公開本数と興行収入が増加し、1481億円(前期比1.1%増)となった。
他方、洋画もマリオの100億円超えのメガヒットもあり、公開本数も回復しつつあることから、興行収入は733億円(前期比10.2%増)であったが、2019年の1189億円まではまだまだ遠い。洋画が回復しきらないことから、興行収入合計は2214億円で2019年の2611億円とは400億円ほどのギャップがある。

100億円超えのメガヒット作はどれくらいあったか?

便宜的に100億円超えの作品をメガヒット作とする。これは興行収入と日本の人口を割るとだいたい1%となるので、現在社会では珍しい国民的な関心を引くものとなるものであるからである。
2023年はTHE FIRST SLUM DUNK、名探偵コナン 黒鉄の魚影、ザ・スーパーマリオ。ブラザーズの3本。2022年は4本あったのだけど、呪術廻戦0は2021年末のものだったので少し微妙。また、2022年はトップガン・マーベリックが135億円と洋画で唯一かつ実写かつ続編といいつつリブートの新作と言っていいほどの出来栄えだったのに対して、2023年の作品も同じような形。
ちなみに、上記のメガヒット作は台湾でも当然のように観ることができた。

国内大手各社の状況

まずは大手三社の状況をみると、東宝、東映は手堅い作品を出して横綱相撲そのもの。東映は興行収入が295億円と2022年日で1割近く落ちているが、これはONE PEACE REDという200億近い作品があったことによるもので、2019年の興行収入が179億円だったのでかなりの高い水準を維持している。東映はなんと言ってもジャンプ系IPと特撮ものも安定的に作れるという環境が強い。東宝はコナンが100億円超えで、さらに30億円から50億円くらいの実写ヒット作が三作から五作へ増えたというのも明るい話である。
他方、松竹はアニメの公開数が減少したせいもあり、2023年の興行収入は151億円と前期比10%減。ただ、2023年末のあの花なんたらと年明けのガンダムSEEDの映画がヒット作となり、2024年はよっぽどオオコケし続けない限り、2023年を超える見込み。

洋画系映画会社の興行収入はもう戻らないかも

洋画という切り口で見ると、興行収入の上位はアバター、ミッション:インポッシブル、ワイスピにインディアナ・ジョーンズと続編だらけとなっている。ディズニーもアイガーCEO復帰で多少は作品の質向上と劇場公開に対する態度を改めたのか、20億円とか30億円くらいのヒット作は作れるようになっている。もっとも、マーベルの諸作品が軒並み前作を下回るという状況なので、まだまだ道半ばというところか。
いや、マーベル作品以外の作品も全て縮小再生産が多く、イコライザー(ソニー)やDCユニバースの作品群もだいたい前作を下回る結果に。逆にジョン・ウィック(ポニーキャニオン)は作品を追うごとに興行収入が伸びるということになり、ミッション:インポッシブルのような動きをなぞるような形となっている。
あと、ワーナーブラザーズはハリーポッター

映画館なくなる論はなくなったか

2021年あたりはこれからは配信が中心となり、映画館は生き残れないのではないかという議論が散々あったものの、映画館で映画を観るという習慣がなくなるまではいかなかった。今の時代、都市部に住んでいればターミナル駅か繁華街周辺のシネコン、郊外に住んでいればショッピングモールの中で快適な椅子、清潔な環境で映画を観ることができるから、映画館というのはまだまだ生き延びそうである。

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