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ふるさと納税で貰った掛け時計を自慢したい

そもそも私は掛け時計が欲しかった。
以前使っていた時計は電池を入れ直しても徐々に遅れていくので、引っ越しに際して捨てた。スマート家具と一緒に購入したAmazon Echo dotには時計表示機能があったが、あまりにも表示が小さ過ぎて気にも留めなくなった。
私が時間を知る方法はスマートフォンを確認するか朝のニュース番組の右上隅を見るくらい。地味な不便が生活に漂ったまま半年が経つ。

私は理想の掛け時計を妄想する日々に耽った。

絶対に電波時計にしよう。時間がずれていくのは時計のアイデンティティが崩壊している。見るに耐えない。フレームには無垢の木が使われていて欲しい。本棚やローテーブルが木目調だから調和させたい。あんまり柄が入っているのもダメだ。モノクロの色味で、壁の一部に溶けるようなデザインが望ましい。そして静かなこと。やはり時計は自らを主張するべきではないのだ。決して自分の存在を知られてはならないと心に決めて、針の音ひとつ立てずただ息を潜めている。そういう時計がいい。

そもそもアナログにすべきかデジタルにすべきかが一番重要だ。デジタルはコチコチという針の音がしないところがいい。寝るとき眩しくないよう光度を調節できるものにしたい。その点、アナログが眩しいことはない。シームレスに動くものにすれば針の音は静かだ。

散々迷ったけれど、結局は私がどういう距離感で時間と向き合いたいかが大切なのだと考えることにした。果たして一分一秒を突き詰めて把握していたかったのだろうか。いや、違う。本当は曖昧さの中で暮らしていたいのだ。そろそろ夕飯を食べる時間だと知り、なんとなく寝る時間なのかもしれないなと思う。家はそういうぼんやりとした空間にしたかった。秒針もなくただ数字が並んでいる文字盤の掛け時計がそのためには必要だった。朝の忙しい時間はニュース番組の右上隅を見たらいい。

ふるさと納税を後回しにしていたら年末になった。欲しいものがないと言うより、金額の大きさに尻込みしていただけである。一時的とはいえ出ていく額が大きいと勇気がいる。少しでも値の張るものを貰ってやろうという貧乏人根性と相性の悪い制度だ。
そうだ、掛け時計を貰おう。急いで必要というわけでもないから気長に待てるし、値段もそこそこするからかなり得した気分になれる。とはいえピッタリ欲しい時計があるかは別の話なので望み薄……え、あったんですけど!

KATOMOKUの木無垢掛け時計。前述した機能・デザインの全てを満たしている。私の欲望が形を持って部屋に訪ねて来たのかと錯覚するところだった。最高。以上。

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