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【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「くそったれの世界」The Birthday
「ホントは死んでない」酔うと亡くなったチバユウスケのことばかりをニイミは話す。「チバよりカッコいい男はいない」と公言している。そんな気持ちが強いから、美人なのに不思議と男が寄りつかなかった。40代独身、女、女、女。
ニイミの相手をするのはユウタで、ふたりは友だち。ニイミは男女の友情は成立すると考えている派。「お前よりきれいな女はいない」とユウタもふざけて言う。いつも通り、ふたりでカラオケ、狭い個
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「BRIAN DOWN」Thee Michelle Gun Elephant
「ザ・ローリング・ストーンズは結成当初はブライアン・ジョーンズっていうヤツがリーダーだったんだが、奇しくもストーンズによって葬り去られた男として有名」というような意味のことをベッドの中で裸の男に言われた。優梨はSixTONEにしか興味がないのでどうでも良かった。早く時間が来ないかとうんざりしていた。ただ天井の顔のようなシミを無で見つめている。それでも男は話すのをやめない。
「ザ・ビートルズは去年
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「ハイブリッド レインボウ」the pillows
29歳。人生を劇的に変えられるとしたら今しかないと。ユミオは新しくギターを買い、新しいエフェクターとギターアンプも買った。やめようと考えていたバンド活動は続けることに。過去最大の動員数を記録した日比谷野音以上のライブすることを目標に設定。メンバーに嫌われてもいいから、ナアナアではなく、してほしいことを言ったり、嫌な役割も引き受けて、小言も言うようになった。「お前、どうしたんだよ」って当然メンバーた
もっとみる【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「People of the Sun」レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン
「俺にとってのギターヒーローはジミヘンでもジョン・フルシアンテでもないんだよな。ましてやエリック・クラプトンなんて胸クソ悪いだけだ」
雨が降り始めたサブウェイの軒下で、店を出るなり殿宮は語り出した。「それよりも雨」と和史は思ったけれども、口には出さずに話に乗っかる。
「で、殿宮さんのギターヒーローって誰なんスか?」
「お前は?」
「え、僕ですか。ええと~、吉兼聡さんかな」
「誰それ?」
雨の
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Free Satpal Ram」Asian Dub Foundation
A「club snoozerってあったよね」
B「雑誌なくなっちゃったね、随分前に」
C「club snoozerはまだ続いてるんじゃね?」
A「ナニ情報?」
C「Twitter情報」
B「Xな」
C「いまだにTwitterって言っちゃうもんな」
A「ある種、抗いたいんですよ」
C「我々のTwitterを返せと」
朝5時のマクドナルドでだべってる。40歳にして音楽のオールナイト・イベントに参加し
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「The Rockafeller Skank」Fatboy Slim
馬車馬のように夜通しで踊ったあの夜のことを光一は明確には覚えていない。いつもなら酒を片手に女漁りをするのだったが、その夜だけは音楽に身を捧げた。ミラーボールがまわっていたのか覚えていない、でも踊りまくった記憶だけはある。女から肩を叩かれてナンパされても無視して踊っていたんだ。その理由を記すことほど野暮なことはない。光一は時計を見ることも忘れて、気持ちよく跳び跳ね、冗談半分でツイストし、両腕を突き上
もっとみる【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Wet Sand」Red Hot Chili Peppers
肌寒い海辺で砂の城を作るふたり、恋人の関係。同性同士だから男性でも女性でも関係ない。ただひとりはオワリで、もうひとりはエイエン。ズブズブに海水に浸ったスニーカーが変色。太陽は真上にあり、人生を照らす。
「多様性って何かな」
「ぼくたち、わたしたちには、知らないことだよ」
ディレイして海面で蒸発する言葉。波打つ海は永遠に思える。
「今、この瞬間も若さを失っている」
「永遠なんてないんだ」
関
【なかがわよしのの61曲カヴァー企画】「Trark1」Regurgitator
飲み会の乾杯挨拶を急にフラれて戸惑った。でも、そこは演劇の経験を生かして、平静を装う観音。「カート・コバーンが亡くなってから30年の時が経ちました。わたしはまだ生まれていませんでした」と言い始めても、誰も顔をしかめるような人はいなかった。観音は続ける。
「でも、カート・コバーンが生まれる前からこの会社はあります。それはどういうことかわかりますか?」
そこで「んん?」と顔を歪ます人たちが出だす。