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総す括どん

すっかりお昼頃の発表と思い込んでいたものだから、結果を見て喜びそのまま街に繰り出すも良し、打ちひしがれて公園でうなだれるも良しと思って一日まるっとあらゆる予定を外していたけれども、実際の発表は19時とのことだった。一日まるっと気もそぞろにうだうだすることになった。
発表が出るまでトータルで体感20000歩ぐらい歩いて、カフェからカフェへと飛び回り4杯くらいコーヒーを飲んだ。予選最終日のFANY配信を見終えた上でもいくらなんでも時間を持て余していたから、なかるてぃんから半ば借りパク状態になっていた小説をようやっと開くことに成功した。「重松清のエイジが好きならきっと気にいると思いますよ」というお墨付きがあっただけあってさらさらさらと読み進めることができたが、緊張のせいでさらさらしている割にちっとも言語中枢に染み入ってこなかった。ちっとも行間を踏みしめている感覚がなく、3行進んで2行(にぎょ)下がり、なんとかかんとか1章分を読み終えるのが限度だった。
めちゃめちゃインターネットを見た。

その瞬間はすっかり暗くなった公園で迎えて、「もうちょっと優しくしてあげてよ」と声が聞こえてきそうなくらい乱暴にスクロールを繰り返し、ついぞ結果を見た5秒後には落ちたことを認識し、落ちたことは早々に受け入れじっくりねっとり結果にかぶりついた。
めちゃめちゃすごい結果だった。純粋なお笑いフリークだったら(それでいて応援する人が敗退の憂き目にあっていなかったら)どれほどワクワクする結果であっただろう。そりゃ誰が出揃ったってワクワクするに決まっているだろうが、嗚呼やっぱりM-1ってすごいなァ、こんなすごいことが起きているんだから本当に盛り上がってほしいなァと思った。

肌寒さに風邪でも引いたらかなわんと思って最終的に思い出のサンマルクでその日を終えた。2017年、ストレッチーズが初めて挑む準々決勝前日に、なんとかアップセットを起こさんと意気込む貫ちゃんから相談を受けたサンマルク。今年の春頃、アプリで出会ったと思しき強烈な二人組に遭遇し、そのままあれよあれよとスマホのおもしろボックス行きになったサンマルク。M-1と言えばこのサンマルク。
隣に座った20代半ばとおぼしき女性二人組、働きウーメンとおぼしき二人組のうち片方が、恋人と別れたようでめちゃめちゃ号泣していた。もう一人が懸命に慰めていた。
悪趣味と思われたくないが否が応でも耳に単語が飛び込んできた。「あの人はさ…」「結婚…」「信じられ…」「仕事…」「タイミング…」みたいな、おおよそ関係ない僕でさえ否が応でもどこか自分の人生を案じてしまうような、耳と心臓がヒリヒリするような内容だった。
凹んでいたのは僕だけじゃない。そこかしこで失恋し、傷ついている。最終的に前を向いた様子で、すっきりした声色で二人は店を後にした。乙女たる僕もいつまでもダウンしていてはいけない。すぐにでも自分磨きを再開するのである。


個人的な総括をまとめておきたいと思う。「そんなん見せるな」みたいなことが結構ある気はするけど、こういう他人のフガフガした振り返りはだいたい1日経ったら脳みそから抜けていくからもうあんまり気にしていない。ほんとすみませんほんと、結果が出るまではこういうフガフガした部分って治らないんだろうなって、すみませんほんと。


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