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フェリーに間に合わない!礼文での1日

利尻から船に揺られて1時間。隣の礼文島に到着。目的はトレッキング。いくつかトレッキングコースがあるなかで、岬めぐりコースという島の北端にある3つの岬めぐりをすることにした。

バスに乗り込み、いざ最北のスコトン岬へ。そこからゴロタ岬、澄海(すかい)岬を2時間ほどかけて周った。16:30発のフェリーに間に合うバスはないので、島の北から南にあるフェリーターミナルまで、23kmほど歩くことにその日は決めていた。まあ行けるっしょとある程度の余裕があった。16:30発のフェリーで、帰路を出発したのは14時前。

マップを時折確認しながら早歩きをした。だけど、歩いても歩いても到着時間が縮まらない。このままだと、フェリーの時間にとうてい間に合わない。明日は仕事があるし、泊まることになっても1泊する出費は避けたい。俺は走り始めた。走って疲れたら早歩きに切り替えて、呼吸が整うとまた走り始める。車が来たら、立ち止まり親指を立ててヒッチハイク。でも車は全然止まらない。車がつかまる予感が全くしないので、走って歩みを進めることに集中することにした。

俺ならできる。フェリーに間に合う。そう自分に言い聞かせて、覚悟を決めた。長距離のレースのような久しぶりの緊張感。日帰りでトレッキングに来たはずなのに、せかせかして時間との闘いが始まった。なんでこんなことしてるんだっけ?と無謀な決断をした数時間前の俺を責める。       

涼しい気温なのに汗が止まらない。走っては早歩きをする。そしてまた走り出す。本当にキツい。残り1時間ちょっとでまだ12キロほど残っていた。いや、無理だわ。心が折れかける。そう思って小屋の前を通り過ぎる。おじちゃんが1人で作業してた。ダメもとで聞いてみるか。恥なんか捨て、息があがりながら、「フェリーまで時間が間に合いそうにないので、車に乗せてもらえると助かります。」と尋ねた。そうするとおじちゃんは、作業の手を止め、ためらうことなく「おうよ。」と返事をしてくれた。感謝しかない。おじちゃんは釣り用のボートのエンジンを直している最中だった。岩手から30年以上前に礼文に移住してきたらしい。そんな話をしながら、車で走ること10分。無事フェリーターミナルに到着。俺をおろして颯爽と帰っていくおじちゃん。絶対間に合わない道のりだったのに、すぐフェリーターミナルに着いた。タイムスリップでもしたような感覚に陥った。やっと帰れる。利尻山に登った時より疲労困憊だった。

窮地に追い込まれても、自分から助けを求めれば助けてくれる人が現れる。少し自信がついた1日になった。そして、俺もあんなおじちゃんになりたい。人を気兼ねなく助けて、何もせびることなく颯爽と帰っていくおじちゃんに。

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