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日本で生まれ育った幸せ

 コロンビアとブラジルの国境の町、タバチンガに到着した。目的はタバチンガからハンモック船に乗って、アマゾン川を下ってマナウスという都市に向かうこと。この辺りの地域は、船か飛行機が交通手段なので、地元の人はよく船を利用する。ハンモックや食器を自分で市場で買い出しして、船に乗り込んだ。3泊4日の船旅だ。ハンモックは好きなところに吊るして良いので、てきとうに場所を選んで吊るした。隣にはベネズエラ出身のカップルがいた。自分のスペイン語はカタコトだったけれど、ゆっくり話してくれて色々とスペイン語も教えてくれた。そしてベネズエラのことも。
 政治や経済の問題が深刻になり、今ベネズエラの移民や難民が多くの中南米に住んでいる。彼らもそういう背景をもっていた。数年はペルーに住んでいたそうだが、一部のベネズエラ人の振る舞いが良くなく、ペルーの人々がベネズエラ人に悪い印象をもってしまった。そのため、彼らは友人がいるブラジルに移住することを決意したそうだ。仕事も決まっておらず、ブラジルへと渡航する。生活や人生がかかった移住。かたや自分は旅行者で気ままなハンモック船旅。
 他にも移民に出会ったり、似たような話を中南米の旅中に人から聞いた。日本はオワコンだとか嘆いている人々もいるけれど、それなら嘆いている人たちは日本という国を捨てて、他の国に移住するのか。そんな体験談はほとんど聞いたことがない。日本で暮らしていれば、身の危険を感じることなく、最低限は衣食住が保障されて暮らしていける。ベネズエラ人のカップルのように、必要に迫られて国を去るということはない。
 旅をしていると、自分が生まれ育った環境がいかに恵まれているものかに気づく。やりたいことは何?人生の目的は?そういったことで悩めるのは贅沢だ。悩み過ぎて精神的な病気になるのは過剰すぎないか。なぜ日本で生まれ育ったことを嘆き悲しむのか。日本のように、安全で衣食住が整っている国は世界でもあまりない。だから、悲観し過ぎず、ただ安全で健康に生きていられることに感謝したい。悩めることも幸せだと思って悩みたい。中南米の旅に出て、たくさんの人と関わったことで、自分の環境が相対化されて、当たり前ではない幸せがたくさんあることに気づく。

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