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あの日の夕日と星空を忘れない

 「仕事終わったら、山登りに行かない?」とある人を誘った。相手は少し驚いた顔をしつつも、「行きましょー。」と返事をしてくれた。その人は、山登りが好きで、1人でどんどん山を登って行く人だった。もうすぐ仕事の期間が終了するので、最後に一緒に登ぼろうと思って誘ってみた。 
 山を登り始めたのは16時ごろ。普通なら、早朝に登り始めるのだけど、勤務時間の関係と夕日と星空が見たかったので、その時間に出発した。
 淡々と登り続ける。6合目ごろまではひたすら森林のような道が続いていく。途中で、バナナやお菓子を食べて休憩をとってゆるく楽しく話した。
 旅や自然の中を歩く時、基本俺は1人で行動している。誰にも邪魔されず、自分の好きなように行動できるから。あとは、話し相手がいないので、周囲からの気づきや考え事が全て自分に返ってくる。
 でも、今回は2人で登る。2人だと1番いいなと思ったのは、共有できること。休憩中のチョコが美味しい!この景色いい!と感想を言い合いながら気持ちが共有できる。 
 そして登り始めて、絶景ポイントに辿り着いた。
晴れてる時の昼間はこう見える。

今回は夕日が沈む時だったので、こう見えた。

 心が震えた。夕日に照らされた無数の雲海。まるで天国か別世界に来たかのような感覚。ニュージーランドでトレッキングした時、絶景を見た時に味わった感覚が蘇った。ずっとここにいたい。自然が作り出した、雄大な景色を見た時に湧き上がる感情。日本でこれだけの景色を俺は見たことがなかった。
 さらに日没後、頂上を目指して2人で登り始めた。真っ暗になると不安になる。でも2人で登っているので、安心して進んでいける。1人だとここまで来れなかっただろう。
 そして、頂上に辿り着いた。残念ながらiPhoneのカメラでは、その夜空の素晴らしさは伝えきれない。一切の建物がなく、360度周り全てが星空。宇宙にまで到達したかのような感覚だった。よく、あの星座がどうとかあるけれど、星が無数にあってどれもが燦々と輝いていた。流れ星もたくさん流れる。このまま残りたい。夜を明かしたい。また心が震えた。一緒に来た人も、圧倒されていた。ゆっくりと岩に腰をかけて、残っていた食べ物を食べる。誰も人がいないので、好きな音楽をかける。なんて贅沢な空間なんだろう。こんなにも素晴らしい星空を俺は今まで見たことがない。ガイドブックにも載っていない星空。天候にも恵まれて、自分たちで偶然見つけた星空。本当にありがとう。心が震えて、その場から動けなくなるような景色。そんな景色をこれからもたくさん見るために、俺は生き続けよう、歩き続けようと思った。
 そして、隣にいる一緒に登ってくれた人。夜空を一緒に見ている時、自分の中に芽生えたもどかしくてふわふわした感情はそっと心にしまって、下山の旅を始めた。

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