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読み放題対象「降伏実現党は窓から投げ捨てよ」

今日も今日とてネットでは、不穏な言葉が産声をあげた。「降伏実現党」である。この誰が最初に言い出したかわからない詠み人知らずの言葉は、またたくうちに燎原の火のように広まり、哄笑をもって迎え入れられた。

降伏実現党!?

どうも

もちろん、あなたは、たちまちにして了解するだろう。


そう。武力で恫喝された挙げ句に、一方的に軍事侵攻されているウクライナにむかって、「国民の命を守るために早く降伏した方がいいよ」みたいなことをいって悦んでいる人たちである。ウクライナの戦争が発生して以来、毎日毎日、彼等は叫んでいる。

いってみれば、「降伏実現党」とは、「レイプされそうになったら、大人しく服を脱いで、股をひらいて『さあおいで!』と言ってやれば命までは取られないんだ。お前は本当に何もわかってない」とか説教している人達となる。「この現象になにか名前をつけたい」というような多くの人々の共有する思いが生み出した言葉がきっと「降伏実現党」なのだろう。


(ちなみに本家「幸福実現党」も「ウクライナは徹底抗戦をやめて世界平和のために中立化するべきだ」と主張しているので、100%の「降伏実現党」である)


降伏実現党 橋下徹

もちろん、その代表の一人が橋下徹氏である。「日本維新の会」は、橋下氏の存在と、現議員である鈴木宗男氏の存在で、すっかり「降伏実現党」と呼ばれだしているのだ。

衆目をあつめているのが、橋下氏の続けるアレな発言である。別に全部追う必要などはない。毎日毎日(今日も)続けている。

だいたい「確実に勝てないなら政治的妥結」と繰り返している。つまり「飛行機を無くせなんていってないですよ。ただ100%確実に墜落が防げないなら、飛ぶなといってるんですよ」的な詭弁と一緒で、「確実」なんてあるわけないから、実質的に「ウクライナは降伏しろ」といっているに等しい。

彼は269万フォロワーという、あのメガロポリス大阪市と奇妙にもほぼ同数の圧倒的なフォロワーを抱えている。だが、よくて100程度しかRTされていない。毎日毎日、意地になって、ひたすらこの話題ばかり蒸し返し続けているようにみえる。そうして、彼のツイートの詳細をクリックしてみれば、靴にこびりついたガムのように、RTに数倍する大量の批判リプが、こびりついている。むしろ「橋下徹という痛いやつを叩く娯楽コンテンツ」として消費されてしまっているわけで、心やさしく慈しみ深い私などは、あまりの彼の哀れさに、人知れず、そっと涙をぬぐったほどだ。

スキ


橋下氏のツイートは主張の内容以前に、「お前ら全然わかっとらんぞ」「俺だったらもっとうまくやれるぞ」という「自己承認願望」を多くの人々に感じさせるものだった。橋下徹氏には、私が書いた「なぜか妙にバズってしまうツイートの書き方」(英国式)を読んで人間の心理をハッキングしながら、するっと相手に共感のバズを生む方法を研究してもらいたいなと思う。


さて、「降伏実現党」の特徴とは、別にいわゆる「お花畑左翼」というわけでもない。政治的立場を超えて罹患してしまう謎の症状だ。

だから別に降伏至上主義というわけでもない。むしろ「逆張り」だ。とにかく、侵略する側を批判するよりも、侵略されている側の対応が面白くなくて、あれこれ口出ししたい。「俺だったらもっとうまくやれる。お前らはだめだ」と注文つけること自体が目的化したポジショニングといったほうがいいだろう。

いや「口出ししたい」だけならいいのだが、もっといえば、敵意だ。

戦争継続とともに、橋下徹氏の批判するゼレンスキー氏の声望は高まるばかりだ。そんな、ゼレンスキー氏へむかって「戦争指導の第一は一般国民の退避・安全の確保。ゼレンスキー大統領はそれができていたか。戦うことだけに熱くなってはいけない」とかいいだしてしまった。そんな彼の様は、「これゼレンスキーさんの人気への嫉妬じゃないの?」「自分がほんとうはゼレンスキーのように注目されたかったんじゃないの?」等々と囁かれだしている。

このように彼の論の是非を批判しても、ひたすら虚無しか残らない。だから「彼がどうしてこうなってしまったか」考えなくてはならない。

あれ?ここで貴方は気づくだろう。

どうしてこうなった、といえば政治的には全然ベクトルの違う「れいわ新選組」も忘れてはいけないだろう。こちらもまた同様に「れいわ降伏実現党」などとよばれている。

れいわ新撰組の山本太郎氏も、何もかも面白くないとばかりに反対する。本邦の国会では、「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案」が全会一致で採択されなかった。それは、れいわ新撰組のただ一党が「言葉だけのやってる感」などといいながら、反対したためである。なにかちゃんとした理由があるならともかく、「言葉だけのやってる感」とは……。民主主義は言論で世の中を動かすのではなかったのか? ニワカにはよくわからない世界である。

さらには山本太郎氏は、ゼレンスキーの日本の国会演説について、式の進行プログラムに「事前にスタンディングオベーション、起立、拍手みたいに書かれていた」と暴露し、「違和感がある」とか嘆いてみせた。その童貞少年のようなナイーブさに(または中二病的な謎の正義感に)、全日本が脱力した。とにかくそんな彼の姿も、やはり、「声望の高まるゼレンスキーに、敵意をつのらせてとにかく文句つけたい(ようにみえる)橋下徹氏」とそっくりではないか。

いや山本太郎氏だけではない、その支持者も似ているのだ。「国会でゼレンスキーに演説させるならプーチンにも同時に演説させるべきなんじゃないの?」みたいなことを言ってる人がいて、???とおもってみたら「れいわ新選組支持者」だった。

ここで、あなたは、なにか共通点にお気づきではなかろうか?

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「れいわ新選組」とか「日本維新の会」とか、ああいうちょっと司馬遼太郎好きというか、中二病的な恥ずかしい(痛い)政党名を名乗るところ(その創始者)が、そろいもそろって露宇戦争でバグって、「降伏実現党」になってしまったのは、なぜなのか。

「維新」やら「新撰組」とか、国家の有事に出現した英雄や英雄的事業に一種のミーハー的な憧憬から国政政党名にまでしてしまう人こそが、未曾有の国難に立ち向かうゼレンスキー氏や、国家存亡の危機に必死で抵抗する人々が「おもしろくなくなってしまう」。

ん???考えてみれば、これ変ですよね?

この奇妙なねじれは決して偶然ではない。これが分かれば実は、橋下徹氏がなぜこんなアレな発言をするか、ゼレンスキー氏に敵意をもやしてしまうのか。山本太郎氏は、なにが面白くないのか。これが、すっきり明らかになる。

――――この問題は私達も決して無縁ではない。「日本人」がひとつの「大きな物語の断絶」の克服できていないせいである。というわけで、モヤモヤした思いを感じている人は是非、以下をよんでスッキリしてもらいたい。

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