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テレビでぼやくどんなタレントよりもぜったいおれの方が虚しい、あるいは架空のジョージ・ルーカス2024

「推し活とは、他人のつくったものを、金を払ってただ褒めたたえることである」
とは、私の名言である。

自分に物語をつくる才能がないとわかり、物語をつむぐことをほぼやめた。
そして、三十代の頃からひたすら、小説や映画やマンガなどのレビューを(だれに頼まれているわけでもないのに)(ごくたまに頼まれることもあったが)書き続けた。

しかし定期的に、どうしようもない虚しさが襲ってくる。
私だってただ感想を垂れ流しているわけではなく、TPOをわきまえて文章のクォリティは保つようにしてきたが、こういうことはものすごく大量に、完璧にやらないとダメなんである。

大量であること、正確であること。

この二点で初めてクリエイティビティを獲得する、と勝手に思っている。
たとえば、「ドカベン」を16巻くらいまで読んで、そこまでの感想を書いても、まずだれも読んでくれないだろう。やはり最後まで読まないと。
(似たようなことをやっている人たちが、自分のやっていることをどう思っているかはまったく別の話。他人のことにとやかく言うほど精神的な余裕はない)

まあたとえば、私が「スター・ウォーズ」を褒めたたえるとする。

するとジョージ・ルーカスが、
「だろ? 面白いだろ。すごいんだよねぇ、おれの才能」
などと言う。

お付きの者が、ルーカスお気に入りのクリームソーダをうやうやしくさしだすと、ルーカスはそれをうまそうにストローでちゅうちゅうと吸う。

(なお「スター・ウォーズ」EP4が公開された際、ルーカスは「しくじった」と一瞬、思っていたらしいが、そんなことは架空のルーカスには関係ない。
なんだ、「架空のルーカス」って。)

ルーカス「このさぁ、ロボットが凸凹コンビになっているあたり、『うまいっ!』って思うじゃん? 書いといてよ、そこんところも」

(ちなみに、私は同人誌に来日したルーカスインタビューを載せたいので、スタバで話を聴いているという設定。なぜルーカスが同人誌のインタビューに答えているかというと、いい人だから)

「なんだ、ジョージじゃないか」
「スティちゃんも日本に来てたの」

めがねにヒゲの男がスタバに入ってきた。
この男、「スティちゃん」とはスピルバーグのことである(架空の人物)。

スピルバーグ「いやあ、おれさまちゃん、才能があるからぜひ日本に来てくれって言われて、もちろんヒコーキ代はだれかがもってくれてさ」
ルーカス「おれだって交通費は払ってないよ!! でもおれらって最強だよな、地元最強」
スピルバーグ「地球という、地元の、な!!」

スピルバーグとルーカスはガッシと腕相撲みたいなタイプの握手をする。

私は突然、キレる。
「もういいじゃないですか!! あなたたちはじゅうぶん賞賛されたでしょ。私もほめてくださいよ!!」

スピルバーグとルーカスは顔を見合わせる。二人ともあきれた顔だ。

二人は声をそろえて言った。
「ま、まあ、おれら日本語が読めないから、きみのインタビュー記事も読めないんだよね。ただ質問は的確なんじゃないかな」

私「そんな、野球少年にうわっつらの『褒め』をするプロ野球選手みたいなこと言わないでくださいよ。もういいです、帰ります。あなたたちのDVDやブルーレイはぜんぶ捨てます」

私は立ち上がって、あきれる二人を残してスタバを立ち去ろうと、外へ出た。

ちょうどそこに、新幹線並みの速さでブルドーザーが走ってきて、私はそれに跳ね飛ばされ、十メートルほども宙をクルクルと舞い、地面に叩きつけられて爆散し、絶命した。

私の葬儀には、かたちばかりの、ルーカスとスピルバーグの代理人が旧式のワープロで打った追悼の手紙が送られてきた。

その中には「E.Tワッペン」と「丸大チューバッカ・ソーセージ」が同封されていたという。

おしまい

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