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出会えてよかったと伝えることから

人は何かを失ったときに大切なことに気づく。

BUMP OF CHICKENの『supernova』という曲は、そのことをすごく丁寧に描いている。

熱が出たりすると気付くんだ
僕には体あるって事
鼻が詰まったりすると
解るんだ
今まで呼吸していた事
君の存在だって何度も確かめはするけど
本当の大切さは
居なくなって知るんだ

BUMP OF CHICKEN『supernova』

居なくなったときに、いろんなことを思い返す。

すると悲しい気持ちが溢れてくる。

当たり前のように居る存在にも、私にもいつかは終わりがやってくるということはわかっていた。

それでも、どうしようもなくて、その悲しみをそのままの意識で受け止められずに、心のなかでたゆたっている。

宮沢賢治は、妹トシが亡くなる半年前に詩を残している。

もうけつしてさびしくはない
なんべんさびしくないと云つたとこで
またさびしくなるのはきまつてゐる
けれどもここはこれでいいのだ
すべてさびしさと悲傷とを焚いて
ひとは透明な軌道をすすむ

「小岩井農場」宮澤 賢治著

同じ寂しさなどないし、この寂しさというものを消し去るのではなく、これでいいのだと感情にひたって進む。

悲しい気持ちになるときに思い出すのは、何度かnoteでも紹介している若松英輔さんの言葉。

かつて日本人は、「かなし」を、「悲し」とだけでなく、「愛し」あるいは「美し」とすら書いて「かなし」と読んだ。悲しみにはいつも、愛しむ心が生きていて、そこには美としか呼ぶことができない何かが宿っているというのである。

『悲しみの秘義 (文春文庫)』若松 英輔著

あなたに出会えてよかったと伝えることから始めてみる。相手は目の前にいなくてもよい。ただ、心のなかでそう語りかけるだけで、何かが変わり始めるのを感じるだろう。

『悲しみの秘義 (文春文庫)』若松 英輔著

悲しさや寂しさ。

以前はネガティヴな感情で、できるだけ前向きな気持ちに切り替えなければと思っていた。

たげど、愛しく大切だったからこそ、悲しいし寂しいのであれば、時にはその気持ちに正直にありたい。

そして、ありがとうという言葉では足りないけれど、いろんなことを思い出しながら、いろんな人の言葉を借りながら、自分の内にある言葉を伝えよう。

出会ってくれて、どんなときでも変わらずに愛してくれて、居てくれただけで、ぼくは居ていいんだと思えた。

また思い出を話しながら、いろんなことを想い心のなかで伝えていきたいと思う。

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