HELLO WORLD

まず一言。
映画公式サイトは見ないこと。予告編も観ないこと。

余計なノイズが無いほうが、この作品は楽しく見れると思います。

「え? でもそれで面白いの?」と思う方へ

・音楽はOKAMOTO’S、official髭男ism、Nulbarichなので劇伴がとてもよいです
・CGアニメですが大丈夫。サマーウォーズが観れた方ならついていけます
・ちょっとSFですが大丈夫。物語のペース自体は早くないのでついていけます
・監督はソードアートオンラインの人です。安心できます

なので安心して観ましょうね。



いや、作品として良いよ、これは。
もっと評価されるべき。
でも口コミしにくい。
なぜなら、なるべくノイズなしで観たほうがよいので、推す材料を言いにくいのである。

声優に松坂桃李や浜辺美波を使っているが、そういう層がターゲットの作品ではない。
SAOや伊藤計劃やアイザックアシモフやアイロボットやサマーウォーズや天気の子を観た人たちが、うんうん唸って観る作品なのだ。
みんな楽しめるとは思うが、映画でも小説でも漫画でも、創作物に触れてきた数が多い人ほど楽しめる作品だと思う。


さあ、アマプラにもあるし90分くらいの長くない作品なので、まずは観てきてください。
観ました?




本当に観ました?






では、ここから先は、観た方を対象にしたお話をしていきましょう。
ここから先、映画を観ていない方には、本当に本当に非推奨ですからね。
あしからず。よろしくお願いしますよ?






















いや~~~~~~~~~~
なんすか、あのラスト。やられましたよ。悔しい。
見た後のスタッフロールの間、ぼくはずっと発狂していました。
悔しい! 悔しい!


悔しい点はけっこうあって
①想像の及んでいない角度からやられたところ
②安心「させられた」状態になっていたこと
③ハッピーエンドで終わる結末をここから準備できるという事実を突きつけられたこと

かなと。

①想像の及んでいない角度からやられたところ

あらすじも大して読まず、予告編なんか当然見ずに観ていたので、ラストの情報なんて全くない状態で見てました。
※「ラスト1秒で~~~」とかって書く売り文句。ただのクソ文化でしかないから、本当に絶滅するべきだと思う。大どんでん返しだってわかっていたら、それはもう予定調和なのよ。カタルシスを味わわせるためには、売り文句として出すのは我慢しないといけないと心の底から思う。

構造的には仮想世界なんだなふ~ん、元も仮想だったってオチか、救いがないな。くらいの感覚でしたからね。
正直、観ている最中も、誰も幸せにならんな、一行さんの精神自体は複製できないっぽいしな・・・とか考えていましたよ、ええ。


いや、そこからのラストよ。ラスト。
「別の世界で幸せなんじゃない?」みたいな教授の言葉があって、ああ、並行宇宙でうまくいくといいね、SFだしね、そうね・・・・
とか思っていたら、最後の光景ですよ。

周りの声があるなかで目覚めそうな雰囲気。
女性のナレーション。
周りの歓声。
そして・・・大人になったヒロインと思っていた、ヒーロー。

ああ、もう、やられた!!!!!!

冒険活劇が好きなヒロインとか、カラスの正体とか、すべてが繋がって意味のあるものになった。
そして、混乱している中での感動と、ラストの引きの画から見える地球。
ああ、京都すらもアルタラの中だったのか・・・・・と思わせてのスタッフロール。

もうね、感動と混乱のまま終わる物語の流れは最高でしたよ。
もう発狂しながら「うわー! うわー!!!」って家で叫びながらスタッフロールを見ましたよ。
そこで出てくるシーンは、劇中になかった、月にいる一行さんの記憶・・・
ああ、美しや、美しや。

こんなラストがあると頭の隅にも描けなかった自分が悔しくなるとともに、作品への敗北、と言っていい経験ができました。
俺にはできないと思った。
さらに悔しいのは、SF作品など著作物の引用が多いことからも、何かしら、きっと原案となる作品は存在するのであろうこと。
自分の勉強不足、引き出しの少なさも悔しい要因の一つでした。

ああ、負けた。


②安心「させられた」状態になっていたこと

これはSFや創作論が好きな人ほど思ったかなという点で。
適度にちりばめられているんですよ。Sf隙が想像しそうなことが。
そして、それが中盤~後半くらいまでで、あらかたは予想通りに進んでるんですよ。
「ああ、きっと先生には別の目的があるな」
「カラスには意味があるんだろうな」
「鳥居とかオーロラってそうか、ファイアウォールやシステムのセキュリティだったんだな」などなど・・・

ああ、そうなのね、うんうん。

俺には、わかってるよ。

って、自分の思考回路で胡坐をかいて寝そべったような感覚で作品を観ていましたね。

はいはい、わかってるわかってる。
セカイ系の作品だね~新海誠好きだから好物だわ~
仮想世界の自分と現実の自分、と思いきや仮想世界だった。救いがないね~でも仕方ないね~。
自分ならどっちかな~もとの世界に返すべきかな~

とかね、考えてましたよ。

だから、やられたんですよね。
油断。慢心。
その間隙をうまく作るSF要素のちりばめ具合には感服しました。
よく作られている。


③ハッピーエンドで終わる結末をここから準備できるという事実を突きつけられたこと

・・・え? インセプションを観ろって?
うるさい! あれは名作すぎて観なくてもネタバレが目に入ってしまうだろ!
マイナー作品には、隠し球という良さがあるんだ!
マイナー作品には、本当にこれで終わることもあるから気が抜けないんだ!
というか、創作物なんて掛け算だろ! 部分的にこれがあったからって作品の良さが損なわれるわけじゃないだろ!!(映画.comのレビューに向けて言っています)もっと叩くべき作品はあるだろ!マイ・インターンみたいに!!!(俺はまだまだ許していない)
あとマイナー言うてますが、公開当時はランキング6位とかまで来ているので売れてます。インセプションとかの大名作と比べてって話ね。

見せ方として、適度なビターエンドとしても完成されそうな雰囲気があるんですよ。本当にビターエンドのまま終わっても、それはそれ、というか。
「折り合いがつかなかったけど、元々の世界の二人は新たな未来に進めたね」
「先生も禊ができてよかったね。一行さんの元へ行けるといいね」
といったストーリーも見えてくるんですよ。それでも作品が成立するような作りになっているんですね。

ラストを除いても、後を濁さずに完結する温度感を作っている。

ここに、この作品最大の個性が宿っていると思います。
映画経験値なんて人それぞれなのでわかりませんが、僕はきれいに安心して騙されたし、作りとしては、ちょっとしょげたままラストを迎えましたよ。
ああ、SFってこんな感じで終わるよな。
なんて思いながら、きれいにひっくり返してもらった感じでした。

ありがとうございます、って感じです。

さっきも言いましたが、これが脳内の一部にも全くない状態から喰らったのが本当に悔しい。
心が動くことを感動と言うならば、今年一番の「感動」でした。
だって映画を観て悔しくなって、発狂しながらエンドロールを眺めるなんて初めての経験でしたよ。



で、ここからは細部の話もしますが。
舞台設定が京都とか、アイテムとして古本が出てくるとかも結構好みでしたね。
古今の融合というか、古いものと新しいもの両方が出てくる世界だと安心します。未来全振りの作品ってうさんくさいし、怖いしと思うんですよね。
サマーウォーズも現実での日本家屋とか日本の暑い夏とか葬式とか・・・そういった和や古めかしい要素があってバランスが取れていると思うんです。

小説なら脳内でその濃度を調節できますが、映画だと与える情報が多いので加減が難しいのかなと。たとえば「ハーモニー」の映画版は気持ち悪さが勝ったまま終わったけれど、小説版を読むとSFのキリっとした読後感が味わえるんですよね。不思議と。


声優とか俳優とかはもう慣れたので大丈夫でした。
こんなものだろうなぁと。最後に持っていかれたので道中のことは忘れましたが、声優声優していない声にも慣れないと、もう最近のアニメ映画なんて観れないので。順応は大事です。


総じて、観て良かったな、と思った作品でした。
最近は離れていましたが、また暇をみて創作したいな、と思わせてくれる素敵なものに触れられて良かったです。




ああ~~~~~~~~~
でも、やっぱり悔しい!!!






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