ウシ胞状卵胞内のmiRNAは母体の加齢によって変化する(Nagata, Reproduciton 2022, 論文紹介 2022/11/21)

[他の研究者の論文紹介] Nishizono-Labでは
① 遺伝子改変動物を用いたヒト疾患原因遺伝子の機能解明
② 哺乳類初期発生機構の解明と生殖補助医療への応用

の2点に着目して研究を行っています

今回は②哺乳類初期発生機構の解明と生殖補助医療への応用に関する他の研究室の最新論文をご紹介します

"Age-associated changes in miRNA profile of bovine follicular fluid"

Society for Reproduction and Fertility(イギリスに本部を置く生殖受精学会)の学会誌であるReproductionに掲載された論文で、東京農業大学のNagataらの論文です

卵子の加齢による受精能・発生能の変化は生殖老化(あるいはもっと狭い範囲では卵子老化)と呼ばれ、日本のような晩婚化のすすむ社会では最も関心が高い研究領域の一つとされています。このような加齢による変化の影響は、他の哺乳類でも問題になることがあります
 彼らの研究では、ウシの初期胞状卵胞内のmiRNA(※)のプロフィールを、若い雌牛(20-40月齢)と高齢雌牛(120ヵ月齢以上)とで比較したところ、いくつかのmiRNAが異なっていたことを報告しています。また、若い雌牛の卵胞内で多くみられたmiR-19bを、体外培養・受精系に添加すると正の効果が得られること、miR-19bのシグナル伝達経路の解明なども明らかにしています

卵胞や卵管液に存在するmiRNAの効果については、近年、数多く報告されています。最近では卵管液にはたくさんのmiRNAが存在しており、それが卵管中の卵子や受精卵に到達、取り込まれ、機能すると推測されています

"An interactive analysis of the mouse oviductal miRNA profiles"

どちらの論文もとても示唆に富んでいると思います。生殖老化には様々な要因や機能低下が絡んでいますが、miRNAの変化による緩やかな制御の破綻は今後も注目される現象となると思います
 私たちの研究室でも、このような『母体と卵子・精子・受精卵がどのように相互作用しているか』について解明し、生殖補助医療への応用を研究しています

※ mRNAの転写後調節因子などとして働くsmall non-coding RNA

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