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内容の無い話が好き

どうも西尾です。

4月も後半になり日中の気温もだいぶ高くなってきており、少し歩いたりするだけで汗をかいてしまいます。

気が付けば桜の木も花びらが散って若葉が生い茂り、綺麗な緑を呈しております。

樹木の生命力、美しい葉の色、大きく伸びる枝、小鳥の囀り、まるで私たちを包み込んでくれるかのような安心感があり、癒しを与えてくれます。


内容の無い話が好き

友人とのLINE通話

友人が東京で働いている。

彼は大学を卒業して、東京に本社がある会社に就職した。

もうかれこれ3年近く会っていないのでは無いかと思う。

ただし、声はよく聞く。

そう、LINE通話をする。

最近では週に1回くらいだったが、一時期毎日のようにかかってきたことがある。

それも就職したての時とかでは無く、就職して数年経った時であっても。

これが普通の電話だったら通話料がバカ高くなるが、LINE通話だから良かったと思う。

そう考えるとLINEとは便利なものだ。

ネット環境さえ有ればメッセージも送れる上に、通話も、ビデオ通話もできる。

その友人とのLINE通話。

これと言って内容は無い。

毎回、どうでもいい話ばかり。

どうでもいいと言うと失礼になるけど、本当にこれと言って新味のある内容は無い。

具体的に言うと、昔の思い出話が中心。

彼とは小・中学校と一緒で高校からは別々だった。

でも、何故かアルバイト先が一緒だった。

それも2箇所も一緒になった。

話の内容は小・中学校時代の話やアルバイトの時の話など。

おそらく、これらの話が9割を占めており、残り1割が最近の近況報告などである。

彼は記憶力が良いのか小・中学校時代のこともよく覚えている。

「〇〇さんは可愛かったな、俺中学時代に戻れるなら絶対告白してたわ。」と。

正直、私はあまり記憶にないので「何でしやんかったんや?元気!やる気!勇気!は、人一倍!とか言うて生徒会長には立候補してたのに」と少しからかいも混じえて聞いてみる。

「俺のことをおちょくってるんか!ああ、告白しとけば良かったわ!後悔してるわ!」と、結局、告白しなかった理由は教えてくれず。

そして、彼は急に話題も変える。

「もう一度組体操したいな!」

「ええわ!」

「ええわ!とは何や!組体操したく無いんか!」

彼は何があったのか知らないが、やたらと組体操をしたがる。

中学の時に体育大会で組体操をした。

いや、“させられた”と言った方が正しいと思う。

組体操なんて危ないし、あんあ面倒なことを誰が喜んでするんだと、私は思ってしまうが、どうも彼の中では組体操は記憶に残る良い思い出らしい。

組体操なんて背中を踏まれるし、裸足でグランドに行くから足の裏は痛いし、誰かに足を踏まれて爪の中で内出血するしで、正直、良い思い出が無かった。

あれは教員のエゴか何かじゃないかと今でも思ってしまう。

確か、組体操で大きな事故も発生したとかで、今は組体操をする学校もだいぶ減ってきているのではないかと思う。

あれは学校教育の悪しき慣習の一つだとは思う。

でも彼は既に卒業して十数年経った今でも組体操がしたいらしい。

そしてそれを通話時にほぼ毎回話してくる。

「今の子らも組体操してるんかな!組体操したいな!」

「ええわ!」

「何がええわ!や。お前は母校に対する愛着が無いんか!」

「分かった!そんなにやりたいのなら、今度、関西に戻ってきた時に一人で組体操してくれるか!俺がカメラマンになって映像撮影したるわ!思い出に残ってええな!」と私は笑いながら応える。

「バカにしてるんか!」と彼はお決まりの答えをする。

“おちょくってるんか!”と“バカにしてるんか!”は彼の決まり文句で、私からの質問などに答えたくない時はこのワードが飛び出す。

私も彼からはぐらかされても特に何も思わないし、毎回このパターンかと思ってしまう。

アルバイト時代の話もよくする。

彼とはバイト先が2箇所も一緒だった。

一つは売店、もう一つは繁忙期の期間限定の飲食店。

今でもそのバイト時代の話をよくする。

彼はシフトを干されたことがあった。

「俺はバイトのシフト干されたのに、何でお前は干されへんかったんや!」と。

私にそんなことを言われても分からない。

「知らんわ!お前はシフト入ってもずっと鏡見て自分の髪の毛触ってたからとちゃうんか!」と私が言う。

すると、痛いところをつかれたのか、自覚があるのか分からないが「俺のことをおちょくってるんか!」といつも通りの返事がくる。

私もまたかと、でも自覚あるんやな、とスマホ越しにニヤニヤしてしまう。

「でも、〇〇さんは缶コーヒー飲みながら週刊ジャンプ読んでたぞ!たまにポテチも食べてたわ!」とパートのおばちゃんの話を持ち出す。

〇〇さんとは、私たち以上に長いこと働いていたパートのおばちゃんのことで、その〇〇さんの息子さんと友人の彼が高校の同級生だったことが後になって分かった。

田舎だから、ということもあるかもしれないが、意外と世間は広いようで狭いなと思った記憶がある。

「〇〇さんはええねん!あの人は特別なんや!仲の良いお客さんもいてたやろう!」と私が言うと、「お前は〇〇さんの味方はするのに、俺の味方はしてくれへんのか!」と彼はまた面倒臭いこと言う。

こんなやりとりが最近では週に1回、平日の夜とかにLINE通話で会話する。

日付を跨ぎそうになっても話は終わらない。

気が付けば夜中の1時をまわることも。

ラジオからは「JET STREAM」のエンディングテーマ「ミスター・ロンリー」が聞こえてくる。

もう1時だな。

結局、今日も何の新味の無い会話、何の内容も無い会話だった。

「内容の無い会話したらあかんのか!」と彼は聞いてくる。

「いや、別にそんなことは無いけど。」と私は応える。

「お前は内容のある会話しか、しやんと言いたいんか!」とさらに聞いてくるので私も面倒になる。

「そんなこと言うて無い!内容の無い会話も大事やな。じゃあ、もう用無いんやったら切ってもええか?」と面倒な感じを出して聞いてみる。

既に夜中の1時近くになり、正直、私は眠りたい。

早く電話を終わらしたい。

「分かってくれるんやったら許したる!お前はもう寝るんか!?本題はこれからやぞ〜!」と彼は言う。

ああ、もう無理だ。

私は無言でスマホの画面に目を移す。

気が付けば通話時間も2時間以上経っていることも多い。

そのままLINE通話画面の❌印を押す。

通話終了。

一方的に終了してやった。

そして私は眠りにつく。

また数日後の夜、いつものようにLINE通話をする。

この前は未だ新味のある内容だった。

お酒の飲み過ぎでしんどい時は代々木公園で日向ぼっこをするのだとか。

でも、それだけ。

またいつもの会話が始まる。

内容の無い話、どうでもいい話が好きだ。

こういう会話が出来ることは幸せなことだと思う。

でも友人の彼よ、お前の話は長い上に毎回同じ話題で聞き飽きたぞ。

そろそろ新しい内容の話が聞きたい。

頼むよ。

まあ、最後はいつものようになるのだろうけど。




以上になります。

お読みいただきありがとうございました。



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