作品「2 あわい」

2 あわい


耳の人は
森の
はじまり

おわり
そのあわいに
暮らしている

聞こえてくるのは
鳥の歌

風のそよぎ

秋の夜
どんぐりの
屋根をたたく音が
ゴコンと
響く

真冬になると
たとえようのない
沈黙がやってくる

木々も
山々も
おし黙っている

鹿たちも
無口なままだ

ひと冬に数回
雪の
降り積もる音が
ほつほつと
きこえてくるだけだ






『耳の人』(BOOKLORE)
『歩きながらはじまること』(七月堂)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?