作品「ボンヤリ」


ボンヤリ           
 
 
 
歳をとるのも悪くない
三十六になって
ようやく珈琲が飲めるようになった
喫茶店で独りボンヤリすることも覚えた
奈良、京都、大阪
そして東京に
それぞれいい店を見つけた
歩き疲れてちょっと休憩
一杯の珈琲で
質の高い
ボンヤリを得る
それは
店の雰囲気と
珈琲の風味に
支えられ
つくられている
店は少し狭いぐらいが良いし
珈琲は渋いめが好みだ
いちいちうるさい客だが
たいてい
黙ってボンヤリしている
 
 
 
 
 
 
 
 
 



『言の森』(BOOKLORE)
『歩きながらはじまること』(七月堂)

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