作品「8 影書店」


8 影書店


耳の人を誘って
影書店へ
行ったことがある

その店は
広くもなく
狭くもなく
新しくもなく
古くもなく
本屋であり
本屋ですらない
どこかしら定義を拒む
よるべのない
不思議な店なのだ

耳の人は
しばらく店内を
ウロウロしていたが
すみっこの
小さな
亀池の前で
動かなくなった

じっとしている
めをつむっている
その人は
亀と同じ
動作をしている

亀も
耳の人と同じ
動作をしている
おかげで
私は
ゆっくり
本や雑貨を
眺めることができた









『耳の人』(BOOKLORE)
『歩きながらはじまること』(七月堂)


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