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即興イメージSS作品集

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いちまいの画像をもとに、即興で書いたSS作品集です。
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眠れない夜。処方箋の袋を開ける。耳障りなシートの音が奥歯に響く。錠剤をぷちぷちと取り出す。同じ工程をいくつも行う。薬を並べる。この瞬間。自分が無能で社会から必要とされていないみじめな存在だと実感する。誰もが呆れる。自分も呆れる。唐突に死がよぎる。生ぬるい水を含む。今日をやり過ごす

夏日・午前8時頃。高層ビルフロア内。幾多の焼死体が放置された中、赤髪の美女はビールを飲み干す。 「うっめ!冷えてやがんな!」 黒髪おかっぱ少女は忠告する。 「もう飲むなって言ってますのに…格好もほぼ裸でだらしない」 「仕事終わりだろ、問題ねえよ」 「…終わってませんわね、まだ」

『SUN』 物語を書こう。もっと書こう。僕を慕ってくれる人の物語を。語り継いでいこう。語り継いでいきたい。一つ書き終えた。この充実感と高揚感が僕を幸せにしてくれる。またお招きがあった。今度はどんな物語になるんだろう。僕も知らない。貴方も知らない、きっと。 知らないワクワクがそこに

知人の元木さんへVRゴーグルを貸した。しばらくプレイしていると、唐突に彼女は笑った。彼女の笑った姿は初めて見る。何が彼女のツボに入ったのか。 彼女は決して教えてくれなかった。まあいい。 口角が上がった彼女の姿は、僕しか知らない思い出になったのだから。 嘘だ。 今では隣でよく見る。

深夜。夜景を前にした女は、ゴーグルを身に着けながら言った。 「うちの仕事も最近はハイテク化していて。こういうモノを使ってるの」 使い方はと問えば、白い指先で夜天を示し、くるりと手首をひねる。 瞬間、ドォンと轟音が響いて。 「ね。簡単でしょ?」 爆炎を背に、赤い唇がニマリと歪んだ。