見出し画像

【インタビュー】西本願寺で働く人たち/vol.2

お坊さんの秘書からSNSの情報発信まで。多岐にわたる内務室の仕事

お寺にお参りしたことはあったとしても、まだまだ知らないお寺の中のこと。ここでは西本願寺で働く人たちに焦点を当て、お寺にあるさまざまな仕事や行事など、働く人の視点からお寺の姿を紐解いていきましょう。

今回お話を伺ったのは、内務室に務める衣笠由芙子(きぬがさ ゆうこ)さんと安静浮葉(あんじょう ふよう)さん。初回は、お寺に生まれて得度する(僧侶になる)までのこと。そして西本願寺でどのように働いているかをお聞きしました。

ーーまずは僧侶になったきっかけから、教えてください。

衣笠:広島県で生まれ育ち、実家はお寺でした。でも住職である父は「やりたいことをやりなさい」という方針だったので、お坊さんになろうという気は全然なくて。学生時代は漫画家になりたくて、漫画を描いて雑誌に投稿していたんです。大学は本願寺派の女子大に進学したんですけれど、普通の大学生として過ごしていました。

でも就職を考えるときに、「このままだと私はお寺の世界から離れていくんだろうな」とふと思ったんです。お寺で生まれ育ったのに、胸を張って仏教のことをきちんと誰かに話せるのかなって。そのことを母に相談したら、西本願寺の職員の応募があることを教えてもらって、それで応募させてもらいました。

衣笠由芙子(きぬがさ ゆうこ)さん

ーーその時、まだ得度はされていなかったんですよね。

衣笠:そうなんです。西本願寺で女性の僧侶の先輩方にお会いして、得度をしようと思いました。もしかするとそれまで「女性である自分が僧侶になる」ということに明確なイメージを持てていなかったのかもしれません。実際に僧侶として活躍する先輩の姿を見て、「女性でもお坊さんになっていいんだな」って思えたんです。

それと、僧侶でないと出来ない仕事があるということにも気付きました。私が最初に配属になったのは大谷本廟というお墓所で、通常は専任の僧侶が墓地での読経(どっきょう)を行うのですが、参拝者が多い時期となると他の職員も読経をすることがあります。しかし得度をしていない私は、応援にも駆けつけることができない。ご門徒さんの役に立つ機会を増やしたいと思い、得度をすることにしました。

ーー改めて仏教と向き合ってみて、心境や考えの変化はありますか。

子ども時代からなんとなく聴いていた仏さまの話が、お寺に身を置いて日々過ごす中で、ふと腑に落ちる瞬間があることに気づきました。実は小さい頃、両親に「もし、お父さんやお母さんが死んだらどうなるの」と聞いたことがあるんです。そしたら「お浄土というまた会える世界があるから大丈夫だよ」って言ってくれて、安心したんですよね。

今、自分の子どもに同じ質問をされても、両親と同じように答えると思います。お浄土があると自信を持って答えられるようになったことは、私にとっては大きな変化だと思います。

ーー安静さんは、なぜ僧侶になられたのでしょうか?

安静:私は小さい頃から、お坊さんになるものだと思っていました。父は西本願寺の職員だったので、本願寺の幼稚園に通っていましたし、子どもたちで集ってお勤めをする行事などもあったので、仏教やお寺は身近なものだったんです。

安静浮葉(あんじょう ふよう)さん

祖父は大阪にある寺の住職で、私も小さい頃から法要にも参加していたのでご門徒(信者)さんにとても可愛がっていただきました。だから「ご門徒さんのご懇念によって育てていただいている」という意識や「お寺を守っていかなければ」という責任感は自然と持つようになったと思います。

龍谷大学に進学して得度をして…という流れで僧侶になったのですが、実は衣笠さんと同じ時期に得度をしたんです。得度をするために、参加者がいくつかの班に分かれて「得度習礼(しゅらい)」という研修を行ったのですが、衣笠さんと偶然同じ班になりました。そのとき、とても親切にしていただいて。

衣笠:研修中はスマホは持ち込み禁止なので、終わってから同じ班の人たちとグループラインをつくって連絡先を交換していたんです。連絡をとりあっていたので、安静さんが西本願寺に就職をすると聞いたときは嬉しかったですね。

安静:まさか数年後に同じ部署で働いているとは、夢にも思わなかったです!しかも私も最初に配属になったのが大谷本廟で、その次が内務室。衣笠さんの背中を追いかけています(笑)。

得度の際の衣笠さん(右)、安静さん(左)

ーー内務室のお仕事について、詳しく教えていただけますか。

衣笠:メインとなるのは、西本願寺の役員の秘書業務です。スケジュール管理や来客接待があり、この辺りは会社役員の秘書と同じような役割だと思うのですが、お寺ならではの業務は、役員の衣体(えたい)の準備ですね。

衣体とは、お坊さんが着ている着物全般のことです。黒い着物は「黒衣(こくえ)」色がついてる着物は「色衣(しきえ)」と呼びます。何を着るかは、職務や法要ごとに違います。役員の誰が、どの法要に何の衣体を着るのかを、「式務部(しきむぶ)」という法要儀式専門の部署に確認しながら準備するのが大切な仕事の一つです。お勤めによって経本も違いますので、その準備もします。

ーー秘書業務以外にも、広報業務も内務室の担当だとお聞きしました。

衣笠:広報業務として、まずはホームページの更新からスタートしました。それまで広報業務には携わったことがなかったので、手探りでした。同年にTwitter(現・X)もスタートしたのですが、親しみを持ってもらうために「お西さん(西本願寺)」としてアカウントを作り、「お西さん(西本願寺)」Instagramも2023(令和5)年2月から開設しました。法要やイベントなどだけでなく、境内のイチョウの見頃や日々の様子なども発信し、西本願寺をもっと身近に感じていただけるような情報をお届けしています。

イチョウの見頃を投稿<お西さん(西本願寺)公式X(旧Twitter)より>

ーーフォロワーが1万人達成しましたね!SNSは、幅広い方に情報を届けられるという利点もあると思いますが、その反面、難しさもありそうです。

安静:たくさんの方にフォローしていただき、とてもありがたいですが、SNSを通してコミュニケーションする難しさも感じています。何が知りたいのか、どんなことなら興味を持ってくださるかが見えづらい部分もあり、まだまだ手探りな部分も多いですね。今後はフォロワーさんが参加できる企画や実際に足を運んでいただけるようなイベントも考えて、接点を増やしていきたいです。

衣笠:SNSだけでなく広報全般に言えることですが、仏教の専門用語や行事ごとをどのように伝えるかが課題になっています。つい、仏教用語を当たり前のように使ってしまいますが、「これでは伝わっていないかも…」と後から気づくこともあります。外部の方の視点も交えながら、どんな方にも、わかりやすく、楽しく届けられるように頑張っています。

<インタビューの続きは、12月に配信予定です>

この記事が参加している募集

広報の仕事

仕事について話そう