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クローバープライム(ショートストーリー)

「クローバープライム」

僕の財布の小銭入れには、四葉のクローバーが入っている。

折りたたみ財布の小銭入れには、2つ分の収納スペースがあって、1つは小銭が入っていて、

もう1つには、鮮やかな緑色の
綺麗に潰されて、アイロンをかけたように伸ばされた四葉のクローバーが1枚入っている。


ふとした瞬間に、それを取り出して眺める。
そんな時間が僕にはある。


その度に「色褪せてないな」と感心する。


例えば、夜が襲う
眠れない日。

電気の力をフル活用したような
明るすぎるコンビニのレジを抜けた出口の手前。

僕はまたクローバーを取り出した。


たまに思う事がある。
神社に行けば、皆んな何を願うんだろう。


「家族全員、健康に過ごせます様に。」


多分きっと、そんなところか。


でも、

いやいやいや、そんな事より、もっと
願いたい事があるだろう。


お前は何を隠してる。

神様がいるのなら、心なんて見透かされてるはずなのに

なんとなく、いけないような気がして
結局いつも、上辺だけのお願いをする。


「売れますように。」
「有名になれますように。」
「特別な存在になれますように。」
「モテますように。」
「お金持ちになれますように。」

いやいやいやいや、もっともっともっと、あるだろう。

もっと欲張れよ。

だから、隠すなよ、嘘つくなよ。

ほら、ほら


「四葉のクローバーをみつけたから、1枚あげるね。」


透き通るような、優しい笑顔で
それを手渡してくれた君は

自分の分の「クローバー」も見つけたのだろうか。

だって、何枚もそんな簡単に見つかるものでもないだろう。


「もう1枚、四葉のクローバーが見つかりますように。」


そんなお願いなんて、きっとしていないだろうな。


それなら、このクローバーは、見つかるように神に願ったのだろうか。


大量のクローバーの前に、腰を下ろす君。


いや、きっと

「ここにある」と信じたはずだ。


だったら、僕も信じてみようかな。


君のように、ただ、願うだけじゃなくて、少しは自分を信じてみようかな。


このクローバーは僕の為だけに、探してくれたのだろうか。

いやいやいや、

いや、でも、もしかして、そうなのかもな。



「あの子の笑顔が、また見たいな。」

自分でも気づかないくらい、こぼれ落ちる言葉、素直に

僕は願っていた。


君からもらったクローバーの前なら、なんだか素直になれるよ。


こんな暗闇の中にも、きっと必ず咲いている。

なければ、僕の財布の中にはいる。

今じゃなくて良い。

明けたら、探そう。

今日は眠ろう。

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